※2017年5月20日データ更新
ヘルスケアセクターは20世紀後半最もパフォーマンスが良かったセクターです。
製薬会社は多額の研究開発コストが必要にも関わらず、最後の臨床試験失敗ですべてが水の泡になってしまうリスクを抱えています。そういう意味で比較的ビジネスリスクは高い業種だと言えます。
特にFDA(Food and Drug Administration、米国食品医療品局)の審査は欧州や日本の厚労省よりもかなり厳しいです。
そのような厳しいビジネス環境ながら、世界の人々の健康を支え長寿化に貢献する医薬品、医療機器を開発し続けてきたことが高リターンの源泉だと言えます。
世界的な高齢化が進行する中、ヘルスケアセクターの企業が提供する製品・サービスの重要性ますます高まるばかりで、今後も成長の罠に嵌らない限りヘルスケアセクターは相応の株主リターンをもたらすはずです。
米国ヘルスケアセクターに投資できるETFとしてXLVを紹介しました。
今回はそのXLVとライバル関係?にあるバンガード・米国ヘルスケア・セクターETF(VHT)をご紹介します。
VHTはこんなETF
概要
米国のヘルスケアセクターで構成される指数であるMSCI USインベスタブル・マーケット・ヘルスケア25/50インデックスに連動して運用。
米国のヘルスケア・セクターの大型株、中型株、小型株に投資する。
経費率
0.09%
0.10%(2016年12月22日付で0.01%値上がりしました、残念。)
競合するXLVの経費率0.14%よりもさらに安いコストです。
長期ホールドでも全く問題ない経費水準。さすがバンガード。
組入銘柄数
350銘柄
中小型株までカバーしています。
XLVは大型株を中心に60銘柄ほどですので、VHTの方が分散が効いています。
上位構成銘柄
ティッカー | 銘柄名 | 比率 |
JNJ | ジョンソンエンドジョンソン | 9.9% |
PFE | ファイザー | 6.1% |
MRK | メルク | 5.1% |
UNH | ユナイテッド・ヘルス・グループ | 5.0% |
AMGN | アムジェン | 3.6% |
MDT | メドトロニック | 3.4% |
ABBV | アッヴィ | 3.2% |
CELG | セルジーン | 2.8% |
BMY | ブリストル・マイヤーズ・スクイブ | 2.8% |
AGN | アラガン | 2.7% |
GILD | ギリアド・サイエンシズ | 2.7% |
LLY | イーライリリー | 2.4% |
ABT | アボット・ラボラトリーズ | 2.2% |
TMO | サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック | 1.9% |
BIIB | バイオジェン | 1.7% |
DHR | ダナハー | 1.5% |
AET | エトナ | 1.4% |
ANTM | アンセム | 1.4% |
SYK | ストライカー | 1.4% |
CI | シグナ | 1.2% |
BDX | ベクトン・ディッキンソン | 1.2% |
ESRX | エクスプレス・スクリプツ・ホールディング | 1.1% |
BSX | ボストン・サイエンティフィック | 1.1% |
HUM | ヒューマナ | 1.0% |
ISRG | インテュイティブ・サージカル | 1.0% |
上位10社構成割合:44%
上位25社構成割合:68%
1位のジョンソンエンドジョンソンは誰もが知る優良銘柄です。
2位のファイザー、3位のメルクはともにシーゲル教授の調査で過去非常に高リターンだったことが判明している時に裏打ちされた老舗優良企業です。
4位のユナイテッドヘルス・グループは医療保険最大手です。
5位医療機器メーカのメドトロニックと6位バイオ医薬品のアムジェンは素晴らしいキャッシュフロー計算書だと感じた銘柄です。
VHTには350もの銘柄が含まれますが、ご覧の通り上位25社で69%を占めるのでこれら大型株の動きに結局VHTの株価は左右されます。
産業別構成比
売買回転率
7%
ヘルスケアセクターは参入障壁が極めて高く、特に大型銘柄が入れ替わることは今後30年を考えても余りないと考えられます。
低い回転率は維持されると思います。
分配金利回り
1.4%
XLVと同じ水準ですが、やはりちょっと物足りないと言えます。
JNJやPFE、MRKなど高配当な銘柄もありますが、無配の新興銘柄も多く含まれており上位陣の高利回りと相殺されてしまっています。
過去10年リターン(配当込み)
10.2%
優秀な成績です。
ヘルスケアは個別銘柄が持論
投資に対する考え、将来見通し、金融商品の評価は人それぞれで正解はないと思いますが、私は長期投資でのヘルスケアセクターETFに対する評価はネガティブです。
その考えはXLVもVHTも変わりません。
理由は、分配金利回りが低いからです。
これは以前記事で取り上げました。
参考記事
ヘルスケアセクターはETFではなく個別銘柄にすべし! おすすめの銘柄を紹介する
徒に高配当利回りばかり追うことが正しいとは考えていませんが、それでも分配金利回りがS&P500平均を大きく下回っているのを私は許容できないと判断しました。
ヘルスケアセクターはJNJやPFE、MRK、MDT等の老舗大型株を個別株でポートフォリオに組み込んだほうが長期リターンは良好だろうと考えています。
私は上記の内どれかを個別株で購入しようと最近検討しています。
→ファイザー(PFE)を購入しました。
先日の大統領選でトランプ大統領が当選し、ヘルスケアセクターはファイザー初め爆騰しました。このように、モメンタム資金がヘルスケアに流れると予想してヘルスケア全体に投資したい時にはVHTのようなETFは使えると思います。
VHTは人気商品で保有している人も多くいると思いますが、私は買いません。
あくまでも私の個人的な素人意見ですが。
私と考え方が正反対なので興味深いです。
記載されているとおり製薬会社は臨床試験リスクがあるので、
個別株よりもETFの方がほうがいいと考えています。
小型株とか製薬会社のような一発アウトの可能性が高めの銘柄群こそ、
ETFでリスクを分散させたいので。
VHTも購入を狙っているんですが、とりあえずFOMCまでは様子見ですね・・・。
確かにそういう考えもありますね!
私も製薬会社のビジネスリスクは高いほうだと思っており、だからこそより慎重に優良企業のみを選別したいと考えている次第です。
考え方は色々ありますよね。
コメントありがとうございました。
そうですね、ほぼ利上げが決まっているとは言え1年ぶりの利上げなので、意外に市場は動揺するかもなって内心思っています。
といいつつ、我慢できずに某ヘルスケア個別株を買ってしまいましたがw。
トランプ発言でヘルスケア下げていますね。
近いうちに記事上げます。
hiroさん
ひさしぶりです。
製薬会社は特許切れのリスクはあるものの、時に裏打ちされた製薬会社10銘柄以上の分散すればリスクは問題ないと思います。
まず、アメリカでは、PFE MRK BMY ABBVが伝統のある高配当銘柄としてコアになると思います。すでにhiroさんが紹介しているので詳細は記載しません。
製薬会社はアメリカ外の欧州ですばらしい銘柄があります。
ノバルティス(NVS)
スイスの製薬会社、2015年は売上世界一。フランス革命の30年前に薬品の問屋が発祥。
多数のバイオ企業を買収、後発品売上も世界第2位、眼科手術機器世界シェアトップのアルコンも有する。コンタクトレンズも世界第2位。JNJを彷彿とさせる要塞のような盤石のポートフォリオ。
ノボ・ノルディスク(NVO)
デンマークの製薬会社。糖尿病に強み。インスリン世界シェアが55%。長期負債なしでROEはなんと80%。糖尿病罹患後にインスリン適応になれば、永続的に投与が必要。2010年にファイザーが、医薬品特許の条約に加盟していないインドで、インドのバイオ企業とインスリンの提携を行い200億円以上を投資するも、ノボ・ノルディスクに対抗することは困難としてインスリン参入から撤退。世界最大の製薬会社が200億円をかけても参入できない鉄壁の参入障壁。
グラクソスミソクライン(GSK)
イギリス最大の製薬会社。世界のワクチン市場の30%を有する。ワクチンは各国政府が顧客であり発注先を変えることはほぼない。毎年安定して発注がある。呼吸器系や感染症に強い。
アストラゼネカ(AZN)
イギリス第2位の製薬会社。抗がん剤等の豊富な新薬のパイプラインを有する。その豊富なパイプラインのために、2014年にファーザーが買収を試みるも失敗。循環器系、脂質異常症、麻酔薬等の多岐にわたる医薬品を保有。
多くの医薬化学企業が合併して現在のアストラゼネカとなっているが、ダイナマイト発明のノーベル・インダストリーもその一つ。ノーベル・インダストリーは会社名よりもノーベル賞で有名。
アメリカ4社と、ヨーロッパ4社は、どれも楽天証券で購入可能であり、高配当銘柄。
あとは、AMGN、LLY、GILD、AGNのうち、気に入った2銘柄を加えれば10銘柄となり、リスクは少なくなります。
最近10年は、バイオバブルで、VHTは以上な上昇をしていたものの、今後、新興バイオ株は淘汰されていく可能性が高いです。長期では、時に裏打ちされた伝統性な製薬会社でポートフォリオを組むのが堅いと思います。
鎌倉見物さん、お久しぶりです。
>長期では、時に裏打ちされた伝統性な製薬会社でポートフォリオを組むのが堅いと思います。
鎌倉見物さんにそのように言って頂けると、大変自信になります。
ヘルスケアセクターへの投資スタンスとしては、私と鎌倉見物さんは同じですね。
安心しました。
VHTはコストが安い良質なETFとは思いつつ、やはり無配の新興成長株が多く含まれており長期ホールドには向かないと思っております。
米国のヘルスケア銘柄としては、ご紹介頂いた4銘柄に加えて、JNJ、MDT、ABTあたりも優良な銘柄だと認識しています。
記載頂いた欧州の4銘柄は楽天証券でも買えるのですね。
それは貴重な情報です、ありがとうございます。
ヘルスケアセクターは今はPFEしか持っていないので、もう1つ2つくらい銘柄を増やそうと考えているところです。
自分なりに分析してみて、納得できた銘柄に投資しようと思います。
なんかとても詳細にご紹介下さり、ありがとうございます。
鎌倉見物さんはあらゆるセクターの企業に詳しいのですね~、尊敬しますわ。
今後、これらの欧州製薬会社の銘柄分析記事も書きたいと思っているので、その時はこの鎌倉見物さんのコメントを活用させて下さい。
どの企業も名前は知っているのですが、正直言って各社の違い・事業内容とかまったく存じ上げませんので。
時間見つけて勉強したいと思います。
ところで、最近WSJに気になる記事がありました。
それは大手製薬会社が、治験を外部にアウトソースしているとのこと。
治験のリスクとリターンを完全に会社から切り離す手法みたいです。
これは一見するとリスクが減って投資家にプラスに見えるかもしれませんが、治験リスクが消えればその分投資リターンも減ると考えるべきだと思いました。
まだ治験のアウトソースはメジャーではないと思いますが、今後ニュースをウォッチしていこうと思います。
どちらにしてもヘルスケア企業の長期リターンには期待できると考えています。
hiroさん
返信ありがとうございました。
欧州の製薬会社の記事で私のコメントが参考になるな是非使っていただければと思います。
なお、ヘルスケアでも製薬会社はパテント切れのリスクがあり、分散が望ましいと思いますが、JNJ、ABT、MDTの医療機器メーカー(JNJは製薬部門もありますが)は、パテント切れのリスクは、製薬会社ほど高くはありません。製薬会社ほど分散を気にする必要はないと思います。
ABTとMDTは、心臓血管系の治療デバイスを製造しています。
心臓の血管の冠動脈は、3mm程度の太さですが、動脈硬化で75%以上の狭窄が起きると心筋梗塞を引き起こすリスクが出現します。そのために、風船付きのカテーテルを挿入して、その狭窄部位を風船で広げてステントを入れる治療が必要になります。循環器のカテーテル専門医は、何年もその治療経験を積み重ねて熟練していきます。細かい操作性で治療の成否がかわり、血管が破れれば死亡の確率が非常に高くなります。
心房細動の不整脈治療も、2mm程度の非常に薄い心房で不整脈の原因となる電気反応箇所を同定して、その箇所を焼いていって電気反応が起きないようにします。焼くことが弱いと不整脈の出現を除去できず、焼きすぎると心房が破れて死亡事故につながります。
熟練した医師が、使い慣れた道具をパテント切れで別の道具に変えることはありません。高くても使い慣れた道具を使います。
広島の黒田博樹投手は、グローブの発注は、グローブ職人の西岡将行氏に20年来以来していて、別の職人のグローブは一切使っていないそうです。その職人の西岡さんは、黒田投手の引退とともに、肩の荷がおりて、グラブ職人を廃業したとのことです。
イチロー選手にもお抱えのバット職人がいると聞いています。
プロの野球選手が使いなれた道具にこだわることと同じです。
そのために、医療機器メーカーは、パテント切れのリスクが少ないので、連続増配が可能であると思います。
私自身、今クリニックを開業しており、妻も医師で2人で経営しています。
クリニックでは、電子カルテを導入しているので、一度構築したシステムを変えることが非常に困難であることが実感として理解することができます。ただ、以前はサーバー機を使用していたのが、サーバーじゃクラウド保管となり、クライアント機でのカルテ閲覧はwindowのみであたったのが、iPadやアンドロイドタブレットでもカルテを閲覧できるようになり、OSへの依存が低下していることも実感として感じています。
ただし、シスコのところで、ITの専門家の方がコメントを書かれたいましたが、その方々ほどITの理解があるわけではありません。その方のコメントも非常に参考になります。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
鎌倉見物さん、こんばんは。
そうですか、鎌倉見物さんはお医者様でいらっしゃるのですか。。
通りで、コメントのクオリティがめちゃくちゃ高いわけですね。
納得しました。
どこかのヘッジファンドのファンドマネージャーの方かと最初は思っていました。
偏見で大変失礼かもしれませんが、お医者様で株式投資をされている方は珍しいと感じます。
普段の業務が激務なので、投資を知る機会が少ないという理由で。
それと高給なので、資産運用しなくても困らないという理由もあるのかな。
投資知識も豊富なドクターってすごく稀少価値が高いように思います。
鎌倉見物さんが投資ブログなんて作ったら、とても人気出そうですね。
まあそんな暇ないのは承知しております。
なるほど~、医療機器についてのお話大変参考になります。
心臓血管系の治療は、最近は低侵襲の流れからカテーテル治療が多いと理解しています。
脳血管治療でも、最近はカテーテル治療(コイル治療?)をされるお医者様が増えていると聞いたことがあります。
欧米の話だとは思いますが。
バルーンカテーテルの中でも、血管に留置するステントを溶かす生体吸収性ステントなるものが普及し出しているのでしょうか。
そんな話をニュースで見た記憶がございます。
また、カテーテルを誘導するガイドワイヤーも非常に高い粗利率でドル箱商品ではないかと思っております。
これは欧米の医療機器メーカーはあまり取り扱っていないかもしれませんが。
カテーテル治療は、米国だけでなく中国でも高い成長が期待できると考えています。
医療機器ってそのお医者様が使い慣れたものを使うので、あまりパテント切れの影響がないのですね。
それはちょっと意外なことでした。
私の先入観なのですが、カテーテルなんて正直どのメーカーの製品も一緒だろ?って思っておりました。
手術当日に在庫があるカテーテルを使っているだけでしょ、くらいに思っておりました。
そうではないのですね。
やはり、使い慣れたカテーテルがあるものなのですね~。
>クリニックでは、電子カルテを導入しているので、一度構築したシステムを変えることが非常に困難であることが実感として理解することができます。
なるほど、病院でもそういったシステム化は大きな経営課題ですよね。
システムは一度構築したら、金銭的にも精神的にも安易なスイッチングはできないですよね。
私も経理部として会計システムを扱っているので、そのお気持ちはわかります。
ましてや、開業されているわけですし、そのあたりのコスト面は大変神経質になれるだろうと思います。
大変勉強になるコメントをありがとうございます。
コメント欄まで読んで下さる読者さんがどれくらいいるかわからないのですが、是非読んで欲しいな~と思ってしまいます。
鎌倉見物さん初め、多くの読者様のお陰でコメント欄が本記事を超えるコンテンツになっていると思う時があります。
今後とも、宜しくお願い致します。