ヘルスケアセクターの企業が今後数十年、ハイテクセクターと並んで成長していくだろうと私は確信しています。2050年、製薬企業や医療機器メーカーの売上規模、利益規模はきっと今の数倍にまで拡大していることかと思います。
社会が豊かになり中間層が増え、世界的に寿命も延びる中、高水準な医療サービスに対する需要が尽きることはないでしょう。
ただし、企業自体が成長するからとって長期株主リターンもそれに連動するわけではありません。
確かに、今よーいドンでヘルスケアセクターETFと生活必需品セクターETFに100万円投資して30年間放置したとしたら、30年後の株価自体は恐らく前者の方が高いでしょう。
しかし30年間分の配当再投資、またサラリーマン給料追加投資まで考慮するとしたらトータルリターンは後者の方が高くなる可能性が高いと思います。
成長期待が高く株価がグングン上がっていく銘柄は配当利回りが低くなりがちで、配当再投資によって株数が増えにくいのです。配当再投資(+給料追加投資)をすることが現実的な多くのサラリーマン投資家にとって成長期待が高い注目銘柄ではなく、地味で目立たない注目されないでもキャッシュはしっかり稼ぐ優良企業への長期ホールドが正しい選択です。
私は成長期待が高いヘルスケアセクター全体への投資パフォーマンスには悲観的だと言いました。
参考記事
ヘルスケアセクターへの配当再投資戦略には正直悲観的です
ヘルスケアETFの低い分配金利回り
XLVなどのヘルスケアセクターETFは米国株投資家に人気だと思います。
ですが、私はこれらヘルスケアセクター全体に投資するETFへの長期投資はお勧めしません。
これはヘルスケアセクターETFのXLVを構成する上位25銘柄の配当利回りです。
ティッカー | 銘柄名 | 配当利回り |
JNJ | ジョンソンエンドジョンソン | 2.7% |
PFE | ファイザー | 3.6% |
MRK | メルク | 3.0% |
UNH | ユナイテッド・ヘルス・グループ | 1.6% |
AMGN | アムジェン | 2.4% |
MDT | メドトロニック | 1.9% |
ABBV | アッヴィ | 3.7% |
GILD | ギリアド・サイエンシズ | 2.4% |
AGN | アラガン | 無配 |
BMY | ブリストル・マイヤーズ・スクイブ | 3.0% |
LLY | イーライリリー | 2.6% |
CELG | セルジーン | 無配 |
BIIB | バイオジェン | 無配 |
TMO | サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック | 0.4% |
ABT | アボット・ラボラトリーズ | 2.6% |
ESRX | エクスプレス・スクリプツ・ホールディング | 無配 |
DHR | ダナハー | 0.7% |
AET | エトナ | 0.9% |
BDX | ベクトン・ディッキンソン | 1.5% |
MCK | マッケソン | 0.7% |
SYK | ストライカー | 1.3% |
ANTM | アンセム | 2.1% |
CI | シグナ | 無配 |
BSX | ボストン・サイエンティフィック | 無配 |
REGN | リジェネロン・ファーマシューティカルズ | 無配 |
上位にあるジョンソンエンドジョンソンやファイザー、アムジェン、ブリストルマイヤーズなどはS&P500平均の配当利回り(2.0%)を超えています。メドトロニックは市場平均並みの配当利回りですね。
でも、このXLVの分配金利回りは1.5%しかないのです。なぜ上位銘柄はここまで高い配当利回りがあるのに全体平均ではここまで低い数値になるのか?
それは、下位銘柄に配当利回りが低い、あるいは無配企業まで存在しているからです。
無配企業を黄色で色付けました。上位25社中7社が無配なのです!
25社のうち無配企業を集計すると12%にもなります。
配当利回りが0%台の企業も珍しくありません。
これら無配ないし低配当の成長企業の低い配当利回りが、ファイザー等の高配当利回りを相殺してXLV全体の分配金利回りを引き下げているのです。
徒に高配当利回りばかり追いかければいいわけではありません。シーゲル教授も高いリターンをもたらす企業の特徴として、配当利回りは概ね市場平均並みでいいと言っています。
ですが、無配や配当利回り0%台というのは長期配当再投資戦略には適しません。
分散されたETFという選択をする以上、自分が選好しない銘柄が含まれていることは仕方ないかもしれませんが、ヘルスケアセクターETFにはあまりに無配企業や低配当利回りの企業が多すぎます。
ヘルスケアセクターETFへの長期投資はお勧めできません。
ヘルスケアセクターは個別銘柄での投資を推奨します。
選ぶべき個別銘柄は?
バロンズの記事の中でゴールドマンサックスのアナリストは、薬価問題がヘルスケアセクターの最近のパフォーマンスを低迷させているとしながらも「ヘルスケア銘柄の中でも特に大手製薬会社には依然としてディフェンシブ性がある」と言っています。
ディフェンシブ性が高いヘルスケアセクター銘柄として以下をピックアップしています。
ティッカー | 企業名 | 配当利回り |
JNJ | ジョンソンエンドジョンソン | 2.7% |
AMGN | アムジェン | 2.4% |
MDT | メドトロニック | 1.9% |
AGN | アラガン | 無配 |
LLY | イーライリリー | 2.6% |
アラガン以外はすべて有配企業で配当利回りも市場平均以上あります。
ヘルスケアセクターに投資したい人は、これらのゴールドマン推奨の個別銘柄の中から自分が期待する銘柄を選んで配当再投資を続けたほうが、長期ではヘルスケアセクターETFよりも高いリターンを得られると思います。
やはり鉄板はジョンソンエンドジョンソンだと思います。
参考記事
【JNJ銘柄分析】ジョンソン・エンド・ジョンソン 鉄板の黄金銘柄
上記バロンズの推奨銘柄にはありませんが、ファイザーやメルクもいいかもしれません。
参考記事
【PFE銘柄分析】ファイザーはバイアグラ
またアボット・ラボラトリーズ(ABT)やブリストルマイヤーズ・スクイブ(BMY)はシーゲル教授の調査結果の中でヘルスケアセクター銘柄としてトップクラスのリターンでした。
参考記事
【ABT銘柄分析】アボット・ラボラトリーズはヘルスケアセクター過去トップパフォーマンスの配当貴族企業
【BMY銘柄分析】ブリストル・マイヤーズ・スクイブはバファリンで有名なバイオ製薬会社
これらはどれもワイドモートを持つ優良企業で配当利回りも高いです。
私は銘柄選択眼もマクロ経済予測能力も全くありませんので、これらの銘柄の中で30年後特に長期投資パフォーマンスがいいのはどれなんだ!?と聞かれれても皆目見当も付きません。
でも例えば以下のヘルスケアポートフォリオを30年保有して配当再投資を続ければ、そのトータルリターンはXLVのリターンを超える可能性が高いでしょう。