20世紀後半以降の米国は、製造業よりも金融業で経済を発展させてきました。基軸通貨であるドル紙幣を発行できるという特権があったことも、それを後押していると思います。
そんな金融大国である米国には、ウェルズ・ファーゴ(WFC)やJPモルガン(JPM)、バンカメ(BAC)など世界有数の金融機関が多くあります。
そんな米国金融銘柄にまとめて投資できるETFをご紹介します。
ステートストリートの金融セレクト・セクター SPDRファンド(XLF)です。
XLF詳細情報
概要
S&P500のうち金融セクター銘柄の指数(金融セレクト・セクター指数)に連動しています。
経費率
0.14%
低コストです。
100万円のXLFを保有していても、年間経費はたったの1400円です。
組入銘柄数
67銘柄
きちんと分散できています。
上位構成銘柄
ティッカー | 銘柄名 | 比率 |
BRK.B | バークシャー・ハサウェイ | 11.20% |
JPM | JPモルガン・チェース | 10.63% |
BAC | バンク・オブ・アメリカ | 7.97% |
WFC | ウェルズ・ファーゴ | 7.70% |
C | シティグループ | 6.42% |
GS | ゴールドマン・サックス | 2.75% |
USB | USバンコープ | 2.66% |
MS | モルガン・スタンレー | 2.18% |
CB | チャブ | 2.11% |
AXP | アメリカンエキスプレス | 2.08% |
PNC | PNCファイナンシャル・サービシズ・グループ | 2.02% |
BLK | ブラックロック | 1.79% |
BK | バンク・オブ・ニューヨーク・メロン | 1.75% |
AIG | AIG | 1.74% |
MET | メットライフ | 1.74% |
SCHW | チャールズ・シュワブ | 1.67% |
CME | CMEグループ | 1.46% |
PRU | プルデンシャル・ファイナンシャル | 1.45% |
MMC | マーシュ・アンド・マクレナン | 1.33% |
COF | キャピタル・ワン・ファイナンシャル | 1.31% |
ICE | インターコンチネンタル・エクスチェンジ | 1.30% |
SPGI | S&Pグローバル | 1.27% |
BBT | BB&T | 1.20% |
AON | エーオン | 1.16% |
STT | ステートストリート | 1.15% |
上位10銘柄構成割合:55%
上位25銘柄構成割合:78%
これは驚きました。なんとトップ銘柄はあのウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイです。バークシャーは金融セクター扱いなのですね。知りませんでした。バークシャーだけでXLFの1割超を占めます。
次にJPモルガン・チェース(JPM)です。JPMはNYダウにも選ばれる米国最大の銀行です。JPMの割合も10%を超えています。
XLFに投資した資金の2割は、バークシャー株とJPモルガン株に流れます。
以下、バンカメ、ウェルズ・ファーゴ、シティグループと名だたる名門銀行が名を連ねます。バフェット銘柄として有名なアメリカンエキスプレスも10位にいますね。このXLFを提供しているステートストリート社も25位にランクイン。
産業別構成割合
ゴールドマンなどの投資銀行は「資本市場」に含まれます。
バークシャーは「各種金融サービス」に含まれます。
というか、各種金融サービス≒バークシャーです。
売買回転率
6%
健全な範囲です。
分配金利回り(2017年10月時点)
1.5%
JPモルガンやバンカメ、ウェルズ・ファーゴの配当利回りは2%超ありますが、トップ銘柄であるバークシャー・ハサウェイが無配なのがXLFの分配金利回りを押し下げています。
過去10年リターン(2017年10月時点)
年率1.0%
過去10年にリーマンショックが起こった2008年を含むので、どうしても過去10年リターンは低くなります。直近5年で見れば年率17%とハイリターンです。
ちなみに、2008年は年率▲55%です。リーマンショック恐ろしや・・。
感想
2017年10月現在、米国も欧州も揃って金融引き締め方向に動いています。
FRBは2017年に3回(2回は実施済み)、2018年にも3回利上げを実施する見込みです。2019年以降もゆっくりですが利上げを続けるようです。
FRBの見込み通りに利上げが進むとすれば、米国の政策金利は以下のように上昇してきます。
さらにFRBは10月からバランスシート縮小を進める予定です。これも金融引締め政策の一環です。国債利回りが上昇する可能性があります。
このように金利が上昇する局面では、一般的に金融銘柄の株価が上昇しがちです。というのも、銀行は金利が上がった方がより高い利息収入が見込めるからです。
今後さらなる金利上昇を予想するならば金融銘柄への投資は合理的です。マーケットの流れに乗る取引をしたいのであれば、下手に自分で銘柄選別するよりもXLFでまとめて金融銘柄に投資するのも一案だと思います。
ただし、バークシャーの割合が10%もある点は留意する必要があります。バークシャー株は金利上昇にポジティブに反応するわけではないでしょうから。
こんにちは.
いつも楽しく読ませて頂いております.有難うございます.
以前に一度ダイレクトメールで質問をさせて頂いた,医師をしている者です.
質問のまとめを先に書きますと,今からバークシャーへ投資するのは得策かどうか,という点です.
記事にも挙げて頂いているように,近年の金利上昇局面における恩恵を金融セクターが受けやすいため,改めて金融セクターへの投資を考えております.
前回の主要金融機関における収益比較の記事も,参考にさせて頂きました.
今のところ個別銘柄での投資ではなく,ETFを考えており,XLFは以前から注目しておりました.
しかし,ご指摘にあるように,バークシャーが主要銘柄に入っているため,純粋な銀行業務(投資銀行含む)を行っている銘柄のパフォーマンスとは外れる可能性があります.私自身も投資歴が浅いながら配当重視の投資戦略を組んできておりますので,キャピタルゲインのみでここまで上がりきったバークシャーは投資対象には入れておりません.また,バフェット氏,マンガー氏共に高齢であり,バフェット氏は自身の死後もバークシャーの株価は上昇すると答えてはいますが(https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-05-08/OPLYYX6KLVR401),今から投資を始めるに適しているかどうか,自分はやや否定的な印象を持っております(配当開始や自社株買いを行うとも言われておりますが,不確定要素ですよね).
以前にもコングロマリットとして分析していただいておられますように,事業収益としても投資・デリバティブによる配分が大きいと考えており,両氏の死後に一時的にパフォーマンスが悪化するであろう以降,中長期的に積極的な投資対象とすべきかどうか,やや懐疑的な印象です.
Hiro様はいかがお考えでしょうか?
長文失礼致しました.
こんにちは。
ご無沙汰しております。
同い年で医師の方ということで、以前いただいたメールよく覚えております。
XLFのトップ構成銘柄がJPモルガンではなくバークシャーで驚きました。
バークシャーはコングロマリットなので、どのセクターに属するべきか議論があったのでしょう。
バークシャーは製造や鉄道もありますが、投資・デリバティブの収益の割合が高いのは事実ですからね。
あと保険も多いです。
そう考えると金融セクターなのも納得です。
私自身は投資していませんが、バークシャーへの長期投資は良い選択肢だと思いますよ。
上場株投資はIBMなど失敗もありますが、基本的にKHCやAXP、WFCなど鉄板銘柄で構成されているので配当収入は安定しています。
また、保険事業のガイコや鉄道のバーリントン・ノーザン・サンタフェなど、保有しているビジネスも高収益です。
バークシャーのビジネスポートフォリオというか、キャッシュの流れは確かに見えにくいのは事実ですが、バークシャーのCF計算書を見れば同社の経営が順調なのは一目瞭然です。
営業CFは順調に増加しており、営業CFマージンは15%以上もあります。
しかもこの営業CFには、保有する上場株のキャピタルゲイン(いやルックスルー利益と言いたい)は反映されていません。
実質的な営業CFマージンはもっと高いと考えています。
21世紀のトータルリターンもS&P500を超えています。
個別株への長期投資でS&P500を超えようと思えば、ごく一部の優良株のみに投資することが望ましいです。
バークシャーはそのごく一部の優良株に入ります。
私は自分の価値観から有配株にしか投資しない方針ですが、一般的に言ってバークシャーは有望な投資対象だと思います。
今のところ無配ですから税務的にもメリットあります。
バフェットやマンガーの年齢に関しては株価にどう影響するかわからないですが、私は今からバークシャーに投資するのもありだと思います。
中長期ならXLFよりもバークシャーですかね。
XLFは一時的に金融セクターのポジションを持ちたいときに向いていると思います。
XLFはバークシャーの影響で完全には金融環境の変化の影響を受けないですが、それでもバークシャーの割合は10%ですので。
全体的には金融環境の変化に従って株価が動く傾向にはあると思います。
利上げ、バランスシート縮小影響、ドットフランク法の改正、税制改正あたりに株価は左右されそうですね。
早急なお返事を有難うございます.
明確な回答を頂き,胸の支えが取れた気がします.
バークシャーへの投資,もう一度前向きに考えたいと思います.
偶然にも,バフェット太郎氏も本日の記事の最後でバークシャーについて触れておられますね.
ルックスルー利益と持株法会計,勉強になります.
最近,やっと決算書を見ようという意欲が湧いてきました.
少なくとも自分の投資している会社(個別株)の決算書は読んで,大まかな収益モデルや過去の実績の推移は頭に入れておくべきだと感じました.当たり前のことかもしれませんが,出来ていない人が多いのではないでしょうか.
いつも会計の素人にもわかる非常にわかりやすい説明,有難うございます.
今後とも宜しくお願い致します.
PS. マネーショート,私も大好きです.最後のシーンは涙無しには語れません.このようなメディアをきっかけに,株式や金融市場にもっと興味を持ってもらえる人が増えればなぁ,とひとり呟いている今日この頃です.
ご返信ありがとうございます。
はい、バークシャーへの投資は十分検討に値すると思います。
バフェット太郎さんの記事のご紹介ありがとうございます。
先ほど拝読しましたが、今の我々の議論にぴったりの記事ですね笑。
バフェット太郎さんがおっしゃる通り、長期投資ならば一部の優良株をホールドするだけでいいのでしょうね。
その「ホールドし続ける」という点が意外に難しいことなのでしょうけど。
色んな投資法があってどれも否定されるものではないですが、長期ホールドで安定したリターンを狙うなら優良株が一番だと思います。
もちろんS&P500などのETFでも十分です。
ルックスルー利益や持分法など最近はやや専門的な記事が多くて不安でしたが、そう言って頂けて良かったです。
そうですね、個別株に投資するのであれば、是非決算書をご覧になることをお勧めします。
実際の10Kレポートでなくとも、モーニングスターの情報でも十分だと思います。
名が知れた優良企業って財務諸表を見なくても、鼻っから高収益だとわかっている面はあります。
でも、実際にそれを数字で確かめた方が自信と安心感を持って投資できます。
せっかく会計士なので、会計絡みの記事は今後も作っていこうかなと思います。
出来るだけわかりやすく書きたいですが、なかなか難しいな~と思うところです。
PS
マネーショートいいですよね。もう一度くらい観てもいいかなと思います。
世の中に株式投資や金融の知識を広めるのは本当に難しいことだなと思います。
ネット証券各社が、口座開設に大変な苦労をしていることからもわかります。
マネーショートもすでに金融知識がある人向けなところがありますよね。
若者に人気のアイドルグループが米国株を紹介してくれたら、少しは普及するのかもなと思います。
初めまして。本当に投資初心者です。s&p500のETFであれば、国内株式になっている1655でも十分なのですか?
すみません、全然分からず…
s&p500の検索でここにたどり着きました。
はじめまして、こんばんは。
海外ETFではなく国内ETFでも期待リターンは同じですのでご安心ください。
国内ETFの方がやや信託報酬(保有するだけで毎年発生する維持管理コスト)が割高です。
ですが、国内ETFの方が手軽に取引できるメリットもあります。
1655は最近発売されたS&P500ETFですね。
もし国内ETFに投資されるなら1557の方がお勧めですよ。
信託報酬は1655よりも安いですし、カブドットコム証券のフリーETFというサービスを利用すれば買付手数料まで無料です。
私は以前はカブドットコムで1557に投資しておりました。
私のブログは検索流入では「S&P500」というキーワードは多いですね。
投資初心者とのことですが、S&P500ETFという存在を知ることができたのは喜ばしいことだと思います。
S&P500への長期投資は大変有効ですので、もし納得できれば是非投資にチャレンジしてみて下さい。
何かわからないことがあれば、遠慮なくご連絡下さい。