シスコシステムズ(CSCO)の株価が急落しています。

CSCOの年初来の株価チャート。

2017年1月半ばあたりから株価は大きく上昇し、ここ3カ月間は34ドル付近をうろちょろしていました。

それが、5月17日の決算発表をきっかけにガクッと大きく下げて、現在(5月20日時点)の株価は31ドルほど。

下落のきっかけは、翌四半期(5月-7月)の売上見通しが前年同期比6%減になるというガイダンスを発表したこと。
6%減と仮定すると予想四半期売上高は120億ドルほどになり、アナリスト予想の125億ドルを下回ります。また、CSCOは人員削減を実施することも合わせて公表しました。

これを受けて、17日には一時8%を超える下げとなりました。

株価が下がったのは、売上下落に伴って将来もらえる配当が減るだろうというマーケットの合理的な反応によるものです。

株価が下がったからCSCOが割安だと言うつもりはありません。

しかしながら、CSCOはハイテクセクターの中でもトップクラスに優良な銘柄だと私は考えており、今回の下落は良い投資の機会になるかもしれません。

 

 

 

シスコシステムズは、ネット接続用のルーターとスイッチといった通信機器メーカーの世界大手です。
1984年創業と比較的新しい企業に見えますが、ハイテクセクターの中では老舗企業と言えるでしょう。

最近は、通信機器の販売だけでなく、データセンター運営やセキュリティ関連事業にも力を入れているそうです。
先日世界150か国をサイバー攻撃が襲いましたが、この不幸な事件はCSCO株主にとっては幸運な事件になる可能性があります。

とは言え、シスコシステムズはとても成長企業とは言えません。
ここ5年間の売上高は480億ドル程度で横ばいであり、今後もオーガニックな成長はそれほど期待できないと思います。

ですが、たとえ低成長であっても、それが株価に織り込まれていれば長期的な株主リターンに悪影響はありません。
むしろ、悲観的なムードが株価を押し下げて配当再投資の効率を上げて、長期的な投資リターンを向上させる可能性があるくらいです。つまり、低成長が過剰に株価に織り込まれてしまいがちということ。

ただ、本当に業態として衰退して最悪株券が紙切れになってしまっては本末転倒です。

シスコシステムズはどうなのでしょうか?

正直言って、私はシスコシステムズが属する業界のビジネス環境について無知です。
CSCOの未来のビジネスについて、あーだこーだ物申す資格はありません。

ただ、あなたに見て欲しいのはこのグラフだけです。

(単位:百万ドル)

CSCOの過去10年間のキャッシュフローです。

毎年安定した莫大なフリーCFがあることがわかります。
また注目すべきは、グレーの線が示している営業CFマージン。

営業CFマージンは恒常的に25%ほどもあります。
これは、かなり高収益です。
アップルに肩を並べようかという水準です。

このキャッシュフロー計算書がCSCOのワイドモート(深い堀)を明確に物語っていると思います。

一度、営業CFマージンをチェックをすれば、後はそれを神経質に調べる必要はありません。
なぜなら営業CFマージンの構造は、毎年ガラガラ変わったりしないからです。

既に「儲かる構造」になっている会社は、よほどのことがない限り、その儲けの構造は崩れないということです。

『Market Hack流 米国式投資の技法』 より抜粋

 

 

CSCOが配当を出し始めたのは結構最近で2011年度からです。
なので、どうしても連続増配年数は短いです。

ただ、配当は毎年グングン伸びているし、自社株買いにも積極的です。

 

 

 

株式投資の利益を高めるうえで、投資家のリスク認識、マーケットの感情を理解することは大切なことだと思います。
投資家の悲観的な将来見通しによるリスク回避志向、恐怖感が長期株式投資の利益をグッと押し上げます。

常に逆張り、天邪鬼が良いわけではないと思います。
ですが、株式投資の世界では、少数派の意見が多数派に変わる時に大きな利益を手にできるのもまた事実です。

CSCOの株価が大きく下落しているということは、CSCOの配当成長見通しを下方修正するというのがマーケットの多数派意見ということです。
その多数派意見が正しいか否か、それは未来にならないとわかりません。

株式投資はどれだけ保守的な姿勢で臨んでも、ある程度の「賭け」は必要になります。
だから分散投資は大切です。

CSCOの未来に賭ける価値は、、あると思います。
その根拠は、上で示したキャッシュフローと株主還元です。

シスコシステムズのように、売上成長が期待できない地味銘柄は、どうしてもグーグルやアマゾンのような今を時めく成長銘柄の陰に置かれがちです。

陰に置かれて然るべきな低収益ダメ銘柄を長期ホールドすべきではありません。
ですが、実力があるにも関わらず陰に置かれている高収益優良銘柄には投資妙味があると思います。

株価下落によってシスコシステムズの配当利回りは3.7%にまで上昇しています。
(まあ、CSCOは常に3%超の利回りがあったので、今が特別高配当なわけではありませんが。)

 

 

最近IBMを一部売却したウォーレン・バフェット氏は、グーグルやアマゾンに投資していなかったことを後悔しているそうです。
確かに、両者の株価の伸びは素晴らしくしっかり株主に報いています。

グーグルやアマゾンが超優良企業であることには完全同意です。

ですが、長期投資の銘柄としてはシスコシステムズ(CSCO)の方が優良だと私は思っています。
マーケットは大体合理的なので、最近の株価下落で調子に乗ってCSCO株を買いまくるのは止めた方がいいと思います。
ですが、長期的にコツコツ買い増す企業の一つとして候補にしても良い銘柄だと思います。

ハイテクセクターはセクターETF(XLKなど)を使うとどうしても配当利回りが低くなるので、ハイテクセクターで長期投資するなら個別銘柄を推奨します。
(敢えてハイテクセクターをポートフォリオに組み込む必要も別にないと思いますが。)

ハイテクセクターと言えば、アップルマイクロソフトグーグルIBMなどがぱっと思いつくと思いますが、シスコシステムズもきらりと光る優良銘柄です。