「デフォルト懸念スコア」という指標によって、GISとKが[HDV]から除外されていた

ブラックロックの高配当ETF[HDV]は年4回(3月、6月、9月、12月)構成銘柄の見直しを実施します。この頻繁な銘柄入替がパフォーマンスにどう影響するのは判断が難しいところですが、とりあえずHDVホルダーとして毎四半期ウォッチはしています。

直近2017年12月の銘柄入替では、ウォルマート(WMT)とアッヴィ(ABBV)が除外されました。つい先日モーニングスターのレポートが配信されたので拝見していると、個人的に気になる除外銘柄がありました。食品メーカーのゼネラル・ミルズ(GIS)ケロッグ(K)です。GISは個別銘柄で投資しています。

モーニングスターのレポートによると、両社は”Distance to Default”の判定に引っかかって除外となっていました。”Distance to Default”とは「モーニングスター・デフォルト懸念スコア」なる独自指標に基づく判定です。企業の将来のデフォルト懸念を指標化したものです。詳細を調べようとググったのですが少なくとも日本語では詳しい情報を得られず。

GISとKは将来のデフォルト懸念が高まったという理由でHDVから除外されました。一方で、新たにHDVに加わったクライト・ハインツ(KHC)は配当利回り上昇ではなく、「モーニングスター・デフォルト懸念スコア」をクリアしたことによるものでした。

これはどういう基準なのか、今一わからんな~というのが正直な感想です。

 

GISもKも財務安全性に問題は見られない

確かにGISやKの事業環境は良好とは言えません。新興のプライベート・ブランド商品が幅を利かせて、既存のナショナル・ブランド製品のシェアを奪っています。また、米国民の健康志向高まりを受けて、加工食品そのものの需要も減っています。GISやKの株価は2016年夏頃から下がり続けています(最近少し戻しているけど)。

ですが!!

GISやKの財務諸表を見る限り、とてもじゃないですがデフォルト懸念があるようには見えません。GISもKも自己資本比率は20%弱とやや低いですが、食品という生活必需品を供給しており収益が安定しているのでレバレッジを掛けているだけです。両社の自己資本比率は過去5年を見る限りそんなに変わっていません。

デフォルト懸念(財務安全性)を判定する上で自己資本比率は参考程度にしかなりません。大事なのはキャッシュフローです。特に格付機関や銀行が重視している指標にインタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)というものがあります。

インタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)の定義は複数あるのですが、キャッシュフローベースの式は以下です。

ICR=(営業CF+金融収益) / 支払利息

インタレスト(利息)を営業CFでどれくらいカバーできているか(カバレッジ)を示す指標です。数値が高ければ高いほど財務安全性は高いです。企業の安全性を見る時は自己資本比率よりもICRを重視した方がいいです。

GISとKとKHC、3社の自己資本比率とICRを並べてみました。ICRについては、金融収益のデータが取れなかったので、簡便的に「ICR=営業CF / 支払利息」という式で算出しました。

指標 GIS K KHC
自己資本比率 20% 13% 47%
インタレスト・カバレッジ・レシオ 7.7倍 4.0倍 4.6倍

自己資本比率はややKHCが高いです。ここ2年くらいで長期債務を圧縮しているためです。確かに自己資本比率ではKHCが優位ですが、先にも述べましたが安全性を測る上で自己資本比率は参考程度です。より大事なのはインタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)です。ICRを見るとGISがもっとも優秀で7.7倍となっています。KとKHCは4~5倍で同じくらいですね。

ICRは10倍以上が優良などとよく言われますが、別に絶対的な目安はないですね。ただ1倍以下はかなり危険です。ICRが1倍以下ってことは自転車操業状態ですから。(HDVを構成する優良銘柄にICRが1倍以下の銘柄はないはずです。)

ICRで見る限り、3社とも危険な水準にはありません。

う~ん、なんでGISとKが「モーニングスター・デフォルト懸念スコア」をクリアできず、KHCは大丈夫だったのかよくわかりません。

まあこの「デフォルト懸念スコア」は今じゃなくて、将来のデフォルト懸念を判定したものです。将来の営業CFが減少すればICRも悪化します。モーニングスター社はGISやKの本業の収益性が将来悪化すると予見しているのでしょう。そこは謙虚に受け止めたいと思います。

 

「デフォルト懸念スコア」は謎・・→VYMなどと分散投資した方が安心かな

モーニングスターのレポートを見る限り、HDVの銘柄入替の多さは「モーニングスター・デフォルト懸念スコア」によるスクリーニングの影響が大きいように感じます。

2017年12月で言えば、追加9銘柄のうち8銘柄が「デフォルト懸念スコア」をクリアしたことが理由でした。同じく除外9銘柄のうち8銘柄は「デフォルト懸念スコア」をクリアできなかったことが理由でした。

配当利回りの高低による銘柄入替は結構納得感があります。最近だと、マクドナルドやジョンソン&ジョンソン、ボーイング、ウォルマートなどが配当利回り下落によって除外されました。いずれも2017年大きく株価が上昇した銘柄です。

しかし、「デフォルト懸念スコア」による銘柄入替は個人的にはあまり納得していません。ちょっと謎です。。

HDVは優良企業がパッケージされた上に低コストな優良ETFだと思います。しかし、銘柄入替はかなり多いです。しかも3か月くらいですぐに除外したりします。最近だとアッヴィが2017年9月に追加されましたが、12月には除外となりました。このアッヴィの除外理由も「デフォルト懸念スコア」でした。たった3か月でデフォルト懸念が上がるとは思えませんが・・。

まあ、機械的に銘柄入替してくれるのがHDVの良いところですから文句は言えません。以前ゼネラル・エレクトリック(GE)を「デフォルト懸念スコア」を理由に除外しましたが、結果的には除外して良かったです。GEはその後減配しましたから。

HDVの銘柄入替がパフォーマンス向上に寄与するのか、それともむしろ悪化させるのかは分かりません。高配当ETFに投資をされている投資家さんも多くいらっしゃると思いますが、HDV一本ではなくバンガードVYMなどと分散投資した方が安全かもしれません。またIVVなどS&P500ETFと分散投資するのもいいですね。

ETFはそれ一本で銘柄分散できるので、別にETFを複数保有する意味はそんなにないかもしれません。ですが、スマートベータ系のETFは商品毎にパフォーマンスの差が結構出るかもしれません。事前にパフォーマンスの差を予測するのは難しいので、複数のETFに分散投資した方がいいかもしれませんね。

もし私がETFだけでポートフォリオを組むなら、HDVにもVYMにも両方投資するかな~。