会社の研修を通じて、開発センターで働いている同い年のエンジニア(男・既婚・子供あり)の方と知り合いました。私は経理財務セクターですから、製品開発をしている人と話す機会なんて普段はなかなかありません。

この前、そのエンジニアの方と一緒に飲みに行って少し投資の話になりました。

「休日は何やってんの?」

「ああ、まあスタバでブログ書いてることが多いかなー。」

「へ~、ブログとかやってんの? 何のブログ?」

「株とか投資について」

「ああ、株やってんの」

みたいな会話をきっかけにちょっと株式投資の話題になったんですが、思いのほか興味を持ってくれたようで、後日「楽天証券で口座開設したから、何を買うべきか教えて!」ってメールがきました。

珍しい!!

投資の話をしても「へ~」って思うだけで実際に行動する人はほとんどいませんが、このエンジニアの友人はソッコーで口座開設までしてました。口座開設も意外と面倒ですよね。ちょっと驚きました。

求めるリターン、リスク許容度、投資知識、資金力など人それぞれですし、投資法に絶対の答えはありません。

が、せっかく質問を受けたのに「投資法なんて人それぞれだよ~」なんて答えるのは野暮なので、最大公約数的な意味も込めて以下の回答をしました。

・NISAか、つみたてNISA、どちらかを利用して非課税を最大限利用した方がよい
・低コストのインデックス投資(ETFか投資信託)がよい
・債券は控え目にして株式中心にした方がよい
・投資国は先進国に限定した方がよい
・日本株を含めるか否かは人それぞれだけど、個人的には日本株は不要だと思う
・新興国への長期投資は止めた方がよい

ややざっくりしたアドバイスですが、こんな感じでメールを返信しました。

これに対していくつか質問を頂いたので、回答と合わせて紹介します。

 

質問①
ETFって何!? 投資信託なら知ってるけど・・。

投資対象として投資信託ないしETFがよいとアドバイスしました。

エンジニアの彼は自分でそれなりにググって調べていたそうですが、ETFは知らず投資信託(インデックス型)を買うつもりだったとのこと。投資信託でインデックス投資という方法に行き着いている時点でも、十分だとは思いますが、ETFも選択肢の一つとして知っておいて損はないですね。

別にどちらが良い悪いではありません。それぞれ一長一短あります。


メリデメをまとめると、こんな感じです。

私は配当大好きなので、分配金が自分の証券口座に入金されないと気が済まないです。なので投資信託は嫌でETFの方が好きです。

ただ一般的には投資信託の方がオススメです。特に初めて投資をやるなら、なおさら投資信託の方がいいです。

私はETFも投資信託も経験ありますが、投資信託の方が買付もその後の管理も楽ちんです。ETFは買値を指定して取引を約定させる必要がありますが(成行注文はしない主義)、投資信託なら金額を入力すればそれだけで取引成立です。

あとETFは分配金が証券口座に入金されるので、再投資に回すなら自分で再投資しなくてはいけません。でも、投資信託なら自動で再投資してくれます。しかも、その時分配金には課税されずに自動で再投資されます。この課税繰り延べ効果は馬鹿にできません。税金は長期投資最大の敵です。

平たく言うと、投資信託の方が「ほったらかし度合い」が高いです。楽です。

(関連記事)
【低コスト】投資信託で米国株投資という選択肢

投資信託のメリット・デメリット

 

質問②
え、日本株は外すの!?
日本に投資した方が為替リスクないから安全じゃないの?

これもあるあるですね~。

日本株だからって為替リスクがないわけじゃありません。日本円で投資するだけであって、投資先企業が海外で米ドルやユーロで取引していれば、株主は間接的にドル円やユーロ円の為替リスクを負っていることになります。

トヨタ自動車は生産こそ半分が日本ですが、販売は75%が海外です。日本より米国での販売台数の方が多いです。欧州やアジアでも販売しています。つまり円で製造して外貨が販売しているということです。

トヨタ株には円で投資しますが、だからってトヨタ株への投資に為替リスクがないわけじゃありません。むしろ、トヨタ株なんて為替リスク満載です。

トヨタのように、生産と販売の通貨が大きく異なる企業はとりわけ為替リスクが大きいです。資産と負債(収益と費用)で為替ポジションがネットされない割合が大きいからです。円で製造してドルで販売している場合、円安ドル高になれば大儲けですが、逆に円高ドル安に振れれば大打撃です。

大事なことは、どの通貨で投資するかではありません。投資先企業がどの通貨で取引しているかが、株主にとっての真の為替リスクです。

日本企業であれ米国企業であれ、現代の大企業はグローバルで取引していることが大半なので、為替リスクから逃れることはほぼ不可能です。本当に為替リスクをゼロしたければ、日本国内だけで取引している中小株に投資する必要がありますが、長期投資には不向きなケースが多いです。

為替リスクを回避したいから日本株に投資するっていう発想は誤りです。

日本株(特に大型株)にも米国株、欧州株と同様に為替リスクはあります。

為替は長期では実質投資リターンに中立ですから、あまり神経質にならずに上手に付き合っていく方がいいです。

(関連記事)
米国株投資家にとっての為替リスクはドル円だけじゃない

 

質問③
え、新興国を外すの!?
アジア新興国はこれから成長して有望じゃないの?

新興国を投資対象から外すのが絶対に正しいとは思いませんが、私は外した方がいいかな~と思っています。かつてはMSCIエマージング・マーケット・インデックスなどに投資していましたが、今ではすべてのポジションを解消しています。

私が新興国を長期投資対象として除外しているのは、「株主の利益=企業の利益」という式が長期的には成立するからです。新興国は長期的に経済成長するでしょうが、結局伸びる市場で利益を取ってくのはハイブランドの欧米企業だと思います。

先日、インドに行きましたが、コカ・コーラやペプシコ、ユニリーバ、グーグルなどの欧米ブランドを頻繁に目にしました。

あと株式市場の整備、会計監査制度、当局の監視、政治汚職など、これらのガバナンス体制が新興国は脆弱です。米国の方がはるか先を行っています(てか先頭)。長期投資ではガバナンス体制が整備されているか否かは、超重要な判断ポイントになります。

株主のお金を企業がどう使うか日常的な監視は不可能です。企業がちょこっと不正会計をしても、最初は誰も気づきません。高収益を出していても、それがうまく株主に還元される仕組みがなければ結局株主は儲かりません。

「企業の利益=株主の利益」とさっき書いたばかりですが、実は「企業の利益≠株主の利益」とも言えます。企業の利益は株主に配当として還元されないと、真に株主の利益になったとは言えません。

イメージですが、米国企業は企業の利益100のうち95は株主のものになりますが、ガバナンス体制が脆弱な新興国企業の場合、利益100のうち株主に渡るのは60くらいな感じです。(数字はあくまで適当なイメージです)。

新興国のGDPはこれから伸びていくでしょうが、そのパイの大部分は欧米大企業が取っていく気がします。現地企業の利益も伸びるでしょうが、その利益のすべてが株主の手元にきちんと戻ってくるという信頼がおけません。さらに言えば、新興国はみなが伸びると思っているので期待値が高く、高値を掴んでしまうリスクが高いです。

というわけで、私は長期投資対象として新興国は外すことにしました。