長期投資では頻繁な売買は控えて、根気強くマーケットに居続けることが大切です。銀行に信用創造の権利を与えている以上、一定のスパンで信用収縮が起こり株式市場が暴落することは今後も不可避でしょう。長期投資失敗の一番のリスクは、暴落時に溶けていく資産に絶望して投げ売りしてしまうことです。
暴落時の評価損を最小限に抑えるためには、分散投資が欠かせません。個別銘柄で投資するなら、最低でも10銘柄には分散したいところです。また、個別銘柄で分散しなくても、ETFや投資信託を活用すれば低コストで高い分散効果を得ることができます。S&P500指数連動の投資信託を買えば、実質的に500銘柄に投資していることになります。
ETFと投資信託は個人投資家にとって最良の選択肢になり得ると思いますが、それぞれメリット・デメリットがあります。
今回、投資信託のメリット・デメリットをまとめてみました。
投資信託のメリット
金額指定で投資できる
個別株やETFと買う時は、金額指定はできません。購入する株数(口数)を指定する必要があります。株価が@1万円なら1万円単位でしか投資できません。1株なら1万円、2株なら2万円、5株なら5万円といった具合です。「24,000円分買いたい!」という希望は残念ながら通りません。
しかし、投資信託なら24,000円分買うことは可能です。投資信託は、購入株数という概念はなく、金額指定で投資することになります。毎月5万円など月次の投資目標額を設定している人も多いかと思いますが、金額目標通りに投資するのは投資信託でないと難しいです。
積立設定ができる
ほとんどのネット証券では、投資信託の積立設定が可能です。自らの意思で購入手続きをしなくても、毎月決まった日(たとえば月末)に、指定した額を自動で買付けてくれます。
長期投資最大の敵はマーケットではなく自分自身です。「もう少し下がるはずだ」「もっと買いたい」「今は割高に違いない」、色んな考えが巡り巡って投資を控えてしまうことはよくあることです。米国株式市場は、右肩上がりが続いていますので、どうしても最高値付近で投資することになるケースが多いです。
NYダウが史上最高値を更新しているタイミングで追加買い増しをすることが正しいのか、疑問に感じて積立投資をストップしてしまうことは往々にしてあることです。その判断が正しいこともあるでしょうが、後から振り返れば、最高値付近でも追加投資しておけばよかったと思うことが多いもんです。特に米国株は。
暴落時に買い増すことは精神的に難しい勇気がいることですが、経済が好調で株価が市場最高値を更新している時に淡々と買い増すことも同じくらい難しいものです。
株価がグングン伸びている時も淡々と感情を排して積立を継続するためには、自分で投資するよりもネット証券の積立投資登録して自動化した方がいいです。積立設定ができるのは、投資信託だけです。
買付手数料が無料
ETFや個別株は一定の買付手数料が発生しますが、主要ネット証券を使えば、大体の投資信託は買付手数料が無料(ノーロード)です。サラリーマン投資家は、一括投資というよりは、毎月の給与の中から一定額をコツコツ投資していくことが多いはずです。買付手数料が無料だと、手数料負けを気にすることなく少額からでも気楽に投資できます。
分配金を非課税で再投資できる
これが投資信託の最大のメリットだと思います。
分配金を自動で、しかも(国内税)非課税で再投資できます。
これはめっちゃくちゃ大きなメリットですよ。
分配金に対する課税が免除されるわけではなく、あくまで売却時まで繰り延べることができるだけです。いつかは必ず税金を払わなくてはならないです。しかし、繰延効果を甘く見てはいけません。今払うか、後で払うの違いでしかないと軽く思うべきではないです。キャッシュインはなるべく早めに、キャッシュアウトはなるべく遅めにというのがファイナンスの常識です。税金というキャッシュアウトはなるべく後ろ倒しにした方が得です。
非課税(将来に繰延べ)で分配金を得ておいて、しかもそれを自動で再投資までしてくれます。長期投資では配当金(分配金)を再投資することで、保有株数が増えてトータル・リターンがグッと高まります。
個人的に強く思っていることですが配当(分配金)再投資って意外に難しいです。仮に1000万円という個人としては大きな金額を運用していたとしても、年間配当金(分配金)は多くても30万円~40万円ほどです。税引き後ではもっと少ないです。米国株は四半期毎に配当をもらえるケースが多いですが、投資額1000万円程度だと毎四半期の手取り配当は10万円にも満たないのが普通です。
10万円弱をわざわざ都度再投資するのは面倒だし、手数料も掛かります。どの銘柄に投資するか悩んで結局投資を先送りすることも、個人的にはありますね。あと、給与収入と配当収入が混ざってしまい、配当再投資が出来ているのか否かわからなくなる時もあります。お金に色はありませんからね。
配当再投資を続けるって結構ハードルが高いです。
これを自動化してくれる、しかも非課税で!
投資信託の一番のメリットだと思います。
投資信託のメリット まとめ
・金額指定で投資できる
・積立設定ができる
・買付手数料が無料
・自動かつ非課税で分配金を再投資できる
投資信託のデメリット
信託報酬が割高(でも最近は安い)
投資信託はETFに比べて信託報酬が高いです。
ですが、、最近は投資信託もかなり低コストになってきており、このデメリットは小さくなってきました。
商品によりますが、投資信託の信託報酬は「ETF+0.1~0.2%」といった感じです。例えば、バンガードVTIの経費率は0.04%で、その投資信託版である楽天・全米株式インデックスファンドの信託報酬は0.17%です。+0.13%です。
投資信託の低コスト化はかなり進んでいますが、一応ETFよりコスト高なのは事実なのでデメリットとして挙げておきます。
分配金の資金使途に柔軟性がない
分配金の自動再投資(しかも非課税!)は投資信託の大きなメリットだと言いました。しかし、見方によってはこれはデメリットでもあります。
Aという投資信託の分配金は自動でAに再投資されます。Aの分配金をBという別の投資信託に再投資することはできません。投資信託の分配金自動再投資は選択制ではなく強制です。
同じ商品にずっと再投資し続けて良いなら問題ないのですが、別の商品に再投資したい場合は投資信託では出来ません。「Bの方が割安に見えるからAじゃなくってBに再投資したいのに!」と思っても、投資信託では無理です。
Bに再投資したければ、Aを一部解約して資金化してBに投資することになります。しかし、そうすれば課税されます。投資信託の分配金の課税繰延べのメリットが消えてしまいます。
投資信託のデメリット まとめ
・信託報酬が割高(しかし、最近は安い)
・分配金の資金使途に柔軟性がない
全体的に見てメリットの方が大きいです。
投資信託のメリット・デメリットをまとめてみましたが、全体的に見てメリットの方が大きいです。特に信託報酬が改善されたことで、投資信託の使い勝手はかなり上がっています。
数年前は、投資信託は使い易いけどコストがちょっと高いから、長期投資ではETFが良いかなという印象を持っていました。しかし、最近の投資信託のコストはETFと比較しても遜色ないレベルです。ETFではなく投資信託を選ぶのも良い選択だと思います。
分配金が非課税で自動再投資されることで、資産形成のスピードは上がります。最近は良質な投資信託が多く生まれています。個人投資家にとっての投資環境は数年前と比べても大きく改善しました。
(参考記事)
【低コスト】投資信託で米国株投資という選択肢
hiro さん、いつも楽しみに読ませて頂いてます。
投資信託の件で1つ教えてください。(国内税)非課税との表記がありましたが、再投資の際に投資信託の国外の税金はどうなるのでしょうか?勉強不足ですみません。よろしくお願いします。
たーぼうさん、こんばんは。
いつもありがとうございます。
はい、投資信託の分配金で課税繰り延べとなるのは国内税約20%のみのはずです。
海外源泉税については分配の都度納税しています。
海外源泉税だけは控除された上で分配金は再投資されています。
自分で申告納税しないので払っている実感はないかもしれませんが、勝手に投資信託の純資産から差し引かれています。
ところで、ご質問を受けて思い出したのですが、投資信託の外国源泉税は外国税額控除で取り戻すことができないと聞いた覚えがあります。
もしそうだとしたら、その点は投資信託の税務デメリットですね。
はじめまして
投資信託のもう1つのデメリットとしてはトラッキングエラーを起こしやすいというのも挙げられると思います。
人気投資信託の1つであるニッセイ外国株式インデックスファンドも去年トラッキングエラーを起こしてました。
はじめまして。
投資信託にもトラッキングエラーがあるとは知りませんでした。
トラッキングエラーと言えば国内ETFのデメリットだという認識でおりましたが、投資信託でもあるのですね。
理論価格より高値で買ってしまったら、せっかく安い信託報酬も台無しですね。
情報ありがとうございます、Noteしておきます。
Hiroさん、ありがとうございます。海外源泉税は控除されてるんですね。1つ勉強になりました。また分からないことがありましたら教えてください。
いいえ、どういたしまして!
国内税だけとしても、解約時まで課税を繰り延べることができる投資信託のメリットは大きいと思います。