配当利回りの高低を見て株価の割安度を判定するというのは、全く無意味とは思いませんが、あまり賢い方法ではありません。そもそも、これだと無配株が検討対象から漏れちゃいます。有配株であっても、将来への投資のために意図的に配当性向を抑えている結果、配当利回りが低くなっているケースもあり得ます。

短期的な配当の多寡は経営者の株主還元方針でいかようにも操作可能です。バリュエーションを判断する時は、配当よりも利益を見た方がいいです。利回りで言えば、配当利回りよりも益回りを見る方が有益です。

益回りとは、配当利回りの利益版です。配当利回りとは株価に対するDPS(一株当たり配当)の割合を示していますが、益回りとは株価に対するEPS(一株当たり利益)の割合を示しています。

配当利回り=DPS / 株価
益回り=EPS / 株価

株価100円、DPS3円、EPS10円としたら、
配当利回り:3%
益回り:10%
となります。
ちなみに、逆算で配当性向は30%と計算できます。

益回りで選出した「裏ダウの犬10種」を紹介します!

配当利回りで機械的に銘柄を選別する投資法の一つに、ダウの犬投資戦略というものがあります。ダウ工業株30種の中で年末時点で配当利回りが高い10銘柄に毎年ローテーションで投資するというもの。

ダウの犬10種は、少なくとも今世紀はNYダウよりも優秀なパフォーマンスを残しています。しかし、やはり配当利回りで銘柄を選別するという方法は腑に落ちません。使うなら配当利回りじゃなくって益回りだろって私は思います。

もちろん、益回りが高けりゃ割安と言えるわけでもないですよ。将来の利益成長力とのバランスを見る必要があります。たとえば、益回りが10%と高くても、予想EPS成長率が1%ほどしかなければ割安とは言い難いです。

そうだとしても、配当利回りより益回りを使った方が、より正確に割安銘柄をスクリーニングできるはずです。益回りを使うことで、配当性向という企業が操作可能な要素を排除できます。

ということで、NYダウ30銘柄を益回りが高い順に並べてみようと思いました。この益回り上位10銘柄を裏ダウの犬10種と勝手に呼ぶことにします。2019年以降、裏ダウの犬10種のパフォーマンスもウォッチすることで、低PER戦略の妥当性を検証できればな~と考えています。

あ、益回りが高いってことはPERが低いってことと同義ですね。益回りはPERの逆数です。PER15倍なら益回りは6.7%(1/15倍×100)となります。せっかくなので、予想PERも一緒に並べてみます。

では、2018年12月31日終値をベースにした益回りが高い順(=PERが低い順)にダウ30銘柄を並べた結果をお見せします。黄色にしたのが上位10銘柄(裏ダウの犬10種)です。

ティッカー 銘柄名称 益回り 予想PER
GS ゴールドマン・サックス 15.2% 6.6
IBM IBM 12.2% 8.2
JPM JPモルガン・チェース 10.3% 9.7
WBA ウォルグリーンズ・ブーツ・アライアンス 10.3% 9.7
CAT キャタピラー 10.0% 10.0
INTC インテル 9.7% 10.3
TRV トラベラーズ 9.4% 10.6
AAPL アップル 9.3% 10.8
DWDP ダウ・デュポン 8.8% 11.3
AXP アメリカ・エキスプレス 8.5% 11.7
VZ ベライゾン・コミュニケーションズ 8.4% 11.9
CVX シェブロン 7.6% 13.1
CSCO シスコシステムズ 7.6% 13.1
XOM エクソン・モービル 7.6% 13.2
MRK メルク 7.4% 13.6
UTX ユナイテッドテクノロジーズ 7.3% 13.7
PFE ファイザー 7.0% 14.2
DIS ウォルトディズニー 6.8% 14.6
JNJ ジョンソン&ジョンソン 6.7% 15.0
HD ホームデポ 6.0% 16.7
UNH ユナイテッド・ヘルス・グループ 5.9% 17.0
MMM スリー・エム 5.6% 17.7
BA ボーイング 5.6% 17.7
WMT ウォルマート 5.1% 19.8
MSFT マイクロソフト 5.0% 20.2
PG プロクター&ギャンブル 4.8% 20.7
V ビザ 4.7% 21.2
KO コカ・コーラ 4.7% 21.3
MCD マクドナルド 4.6% 21.6
NKE ナイキ 4.2% 23.6

配当利回りで算出した通常のダウの犬10種とは全く異なる結果になりました。重複しているのはIBMとJPモルガン・チェースの2つだけ。後は、ダウの犬にはいない銘柄ばかりです。

益回りトップ(PER最低)は、名門投資銀行でバフェット銘柄でもあるゴールドマンサックス(GS)。マレーシアの政府系ファンド「1MDB」からの不正横領事件でGSパートナーが罪を認めました。これがGS自体にどれくらいの損害を与えるか不透明ですが、マーケットは不確実性を嫌います。GSの株価は大統領選直前の水準にまで下落し、益回りは15%まで跳ね上がっています。IBMを差し置いて断トツの1位選出。

あと目に付くはアップル(AAPL)ですかね。2018年10月に一時230ドルを超えていた株価は、年末にかけて150ドルを割るまで売られました。12月末終値は157ドルで、2019年EPSに基づく益回りは9.3%まで上昇しています(PERは下がっている)。

ウォルグリーンズ・ブーツ・アライアンス(WBA)は、GEに変わって新しくNYダウに選ばれた銘柄です。

通常のダウの犬に選ばれているコカ・コーラ(KO)やプロクター&ギャンブル(PG)は、裏ダウの犬からは漏れました。配当利回りは高いけど益回りは低い、つまり配当性向が高いことを意味しています。高い配当性向による高利回りでダウの犬に選出されている銘柄は、裏ダウの犬からは漏れるのです。

ダウの犬投資法(=高配当投資戦略)と裏ダウの犬投資法(=低PER投資戦略)、どちらが良いパフォーマンスになるのか今後ウォッチしていきたいと思います。

理論的に考えたら益回りで選出した低PER戦略の方が有望そうですが、意外と高配当戦略の方が結果は良いかもしれません。直感ですけど。まあ、これから10年、20年、30年とウォッチして結果を公開していきます(そこまでブログが続いていればですが・・)。

最後に、今年のダウの犬10種と裏ダウの犬10種を掲載しておきます。

ダウの犬10種(2019年)=高配当銘柄

ティッカー 銘柄名称
IBM IBM
XOM エクソン・モービル
VZ ベライゾン・コミュニケーションズ
CVX シェブロン
PFE ファイザー
KO コカ・コーラ
JPM JPモルガン・チェース
PG プロクター&ギャンブル
CSCO シスコシステムズ
MRK メルク

裏ダウの犬10種(2019年)=高益回り銘柄(低PER銘柄)

ティッカー 銘柄名称
GS ゴールドマン・サックス
IBM IBM
JPM JPモルガン・チェース
WBA ウォルグリーンズ・ブーツ・アライアンス
CAT キャタピラー
INTC インテル
TRV トラベラーズ
AAPL アップル
DWDP ダウ・デュポン
AXP アメリカ・エキスプレス

(合わせて読んでもらえると嬉しい記事)
【2019年】ダウの犬10種のご紹介

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【配当利回りを2つに分解】配当利回り=株式益回り×配当性向