アメリカの中央銀行FRBは2つの使命を課されています。
・物価の安定(stable prices)
・雇用の最大化(maximum employment)

の2つです。

これはアメリカ特有です。日銀は物価の安定を通じて国民経済の健全な発展を促すことを使命としています。要は日銀は物価だけ見ればいいのに対して、FRBは物価だけでなく雇用まで見なアカンっちゅうことです。FRBの方が大変ですね。

という前知識を前提に、一つグラフを紹介します。最近WSJに掲載されていたものです。

(ウォールストリートジャーナルより)

1980年代半ばから現在までの政策金利、インフレ率、失業率の推移です。3つ並んでいて見やすいなあと思い紹介しました。

こう見るとインフレ率って比較的安定していますよね。80年代~90年代半ばまで3%~4%とやや高めだったものの、それ以降は2%前後で安定しています。「物価の安定」という面では、FRBは最高の仕事をしていると言えそうです。

にもかかわらず、FF金利は激しく上下しています。1990年の金利は10%近くあったんですね。そこから下げ上げを繰り返しながら徐々に低下。リーマンショック後の2009年にはほぼゼロ金利に。そして2015年末からようやく利上げを始め、現在のFF金利は2.25%。ちなみに、パウエル議長は当面は利上げをストップする意向みたいです。債券マーケットは利下げすら織り込んでいるようです。

インフレ率が安定しているにもかかわらず、FRBがこれほど大きく金利を操作しているのは失業率管理のためです。つまり「雇用の最大化」という使命を果たすためです。グラフを見れば明らかですが、失業率が上がったら利下げをしています。経済が悪化して景気が悪くなって失業者が増えたから、金利を下げてマネーの流れを円滑にしようと試みています。逆に失業率が下がると、景気過熱を防ぐために金利を上げています。

FRBが景気循環に振り回されている様子がよくわかる面白いグラフだな~と思いながら眺めていました。

果たしてこれから景気(失業率)はどうなるのか。インフレ率はどうなるのか。そして、FRBはどんな金融政策を取るのか。投資家として気になるところ。まあ考えてもわかるもんじゃないから、流れに身を任せるしかないと思ってますけどね。

にしても2010年代は実質金利(FF金利-インフレ率)がマイナスだった、異例の10年と語り継がれることになりそうです。それだけ2008年の金融危機のショックが大きかったかということか。

昨年末にFRBが利上げして市場はややパニックになりましたが、それでも実質金利は0.5%と僅かにプラスに転じたに過ぎません。これでも金融引き締め過ぎと主張する人も大勢います(トランプ大統領を筆頭に)。何が正解なのか僕には全くわかりません。

現在の失業率はかなり下がっています。この30年で最低のレベルです。でもインフレ率は相変わらず安定推移。ある意味最高の環境です。「物価の安定」、「雇用の最大化」2つの使命が果たせている状態。米国株のバリュエーションが高いのもむべなるかな。

米国経済って好調だなってグラフを見て率直に思います。素人的な単純発想ですが。最近の雇用統計で発表された賃金統計を見るに物価が高騰する兆しはなし。2019年第1四半期の銀行決算も好調でしたし、すぐにリセッション入りするとも思えない。

というわけで、引き続き米国優良企業の株へ資金をbetし続けます。ただし、バリュエーションには常に留意します。