シーゲル教授は『株式投資の未来』の中で、配当こそ長期株式投資の主たるリターンの源泉だと言いました。

配当利回りが高い企業というのは成熟企業が多く大きな株価上昇が見込めず、一見低リターンに思えるけどそれは間違いだと。

配当利回りが高い企業は後から振り返ると概して割安に放置されがちであり、そのような地味な企業に配当再投資を重ねることで長期投資パフォーマンスは高まります。

配当が長期投資の主たる源泉というのはある意味当然です。

だって、金融資産の時価というのもは将来CFの割引現在価値であって、株式にとって将来CFとは配当に他ならないからです。

株式評価にとっての将来CFとは、配当ではなく企業の利益だという主張を見かけますがそれは勘違いです。

株主にとっては企業が利益を獲得しただけでは自分の懐にはキャッシュは入っていません。配当金として株主に還元されて初めて株主の利益となります。

キャピタルゲインとは、増益期待によって生じるのではなく、増益期待によって将来の予想配当金が大きくなることで生じるのです。キャピタルゲインの源泉だって配当金なんです。

自社株買いをすると株価上昇しますが、それは自社株買いによって予想EPS(一株利益)が上昇することで結果として予想DPS(一株配当)が上昇するから生じるのです。

シーゲル教授に言われなくたって、株式投資のリターンの源泉が配当であることは当然なんです。

配当に着目することは株式投資法の王道です。私は個別株を購入する時はPERよりも配当利回りに注目しています。

単に高配当利回りな銘柄だけを買い集めればいいという単純な話ではありませんが、高い株主還元意識と高い利益水準に基づく高配当利回りというのは魅力的です。例えばフィリップモリスです。

米国には優良な高配当企業が数多くありますが、それらにまとめて投資できる便利ツールが高配当ETFです。

多くの投資家に人気だと思われる高配当ETFがバンガードVYMとブラックロックHDVです。

私は両方保有していますが、特に後者のHDVはポートフォリオの2割超保有しているくらいです。

VYMとHDV、どちらがシーゲル流の配当再投資戦略に適しているのか?

私は以前からHDVの方が優位だと考えていますが、今回のトランプ相場でそれをより実感しました。

  トランプ相場 HDV,VYMの動き

トランプ大統領のサプライズ当選にマーケットは動揺しました。

トランプ候補優勢だとわかると、NYダウ先物は5%以上下落してサーキットブレーカーが発動しましたが、いざ取引が始まると株価は逆にグングン伸びていきました。

トランプ大統領のインフラ投資政策や、薬価抑制に消極的な姿勢、企業や富裕層への減税策が好感されたようです。

そして、株価よりも注目すべきが債券でした。債券はメチャクチャ売られました。債券利回りは1.7%ほどから一気に2%を超えました。

その結果、債券の代替として買われてきたフィリップモリスなどの高配当ディフェンシブ株が売られました。

つまり、シーゲル流の大型ディフェンシブ株への配当再投資を実施している投資家にとっては買い場が到来していると言えます。

保有しているフィリップモリス株の10%を超える暴落!?なんて気にすることなく、ガンガン買い下がることができる投資家が最後に高いパフォーマンスを叩き出すのです。

こういった金利上昇局面で株価が下がることこそ、ディフェンシブな優良企業の証です。だって元本確保の債券の競合するくらいですからね。

トランプ大統領当選後のHDVとVYMの株価の動きは注目に値すると思いました。

これは大統領選挙後から、11月18日(金)までの両者の株価推移です。

HDV  VYM 
日付 株価 前日比 株価 前日比
2016/11/8 79.64 71.74
2016/11/9 80.05 0.5% 72.67 1.3%
2016/11/10 79.42 -0.8% 72.92 0.3%
2016/11/11 79.1 -0.4% 72.85 -0.1%
2016/11/14 78.78 -0.4% 73 0.2%
2016/11/15 79.61 1.1% 73.54 0.7%
2016/11/16 79.51 -0.1% 73.28 -0.4%
2016/11/17 79.45 -0.1% 73.49 0.3%
2016/11/18 79.39 -0.1% 73.44 -0.1%

同期間のチャートも見ておきましょう。
青:HDV、緑:VYM

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どうでしょうか?

HDVは株価が下落しているのに、VYMは株価は上昇しています。

このチャートからあなたは何を感じ取りますか?

「おお、VYMは金利上昇局面にも強くてHDVをアウトパフォームしているじゃん!!、やっぱりHDVよりVYMの方がいいETFだな!」って思いますか?

私は、そうは思いません。株価が下落しているHDVこそ長期投資に相応しいと思いました。

HDVの株価が下落しているのは、HDVの構成銘柄が超大型ディフェンシブ株ばかりなので金利上昇に反応して多くの構成銘柄が売られたからです。

つまり、今回の金利急上昇局面で売られたHDVは相対的にディフェンシブ性が高いと言えます。

長期投資では高配当なディフェンシブ株が優位なことは歴史が証明していますが、そうならばVYMよりHDVの方が長期投資に相応しいと言えそうです。少なくとも今回のトランプ相場で私はそう感じました。

VYMはNYダウと一緒に史上最高値を更新しましたが、こんな金利上昇局面でダウと仲良く最高値更新するって高配当ETFとしてどうなん!って思います(笑)。

   どちらも素敵なETF

VYMの商品価値を否定する気は全くありません。

VYMは信託報酬0.09%と超低コストですし、400以上の優良企業に分散投資できる便利なツールです。

VYMはどちらかというとS&P500などのインデックスに近いということだと思います。まあVYMの保有銘柄数を鑑みればそれは当然なのかもしれません。

私が抱いているHDVとVYMの商品イメージはこんな感じです。

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実際、HDVの方が配当利回りは高いです。HDVの配当利回りは3.5%でVYMのそれは3.0%です。

よりシーゲル流の高配当戦略を信じて、かつそれを個別株ではなくETFで実現したい人はHDVの方がおすすめです。

「シーゲル教授の言っていることはわかる!でも、やっぱりインデックス投資寄りの方が安心だな」って思う人にはVYMがおすすめです。

生活必需品セクターETFのXLPとVDCは、違いはほとんどなく別にVDCがなくなっても「あっそう、じゃあXLP買えばいいや!」って思います。

でも、HDVが消えたら「じゃあVYM買えばいいや!」とはなりません。

色んなETFが存在することはいいことです!
信託報酬が2%以上もするアクティブファンドは消えて欲しいですが、様々な投資ニーズを満たすセクターETFやスマートベータETFの開発は大歓迎です。

私はシーゲル教授の配当再投資戦略を強く信じているので、高配当ETFはHDVを買います。

どちらのETFも長期で保有すれば高いリターンを期待できます。短中期ではVYMの方が高いリターンを期待できる可能性があることは今回のトランプ相場でも明らかです。でも30年超の長期配当再投資を考えれば、私はHDVの方が優位だろうと思っています。

以上、私の考えです。

いつも言っていますが、自分の考えが絶対に正しいとは思って記事を書いているわけではなく、自分が感じたこと考えていることを淡々と正直に書いているだけです。

VYMかHDVか悩んでいる人も多くいることでしょう。この記事があなたの投資判断の一助になれれば幸いです。

安心して欲しいのは、どちらのETFでも長期で卓越したリターンを達成できることは固いということです。