人的資本と金融資本は分散した方がいい。だから、自社株は買わない方がいい。こう言われることがあります。

確かに、一理あります。かつて山一證券が破たんした時、同社株を保有していた従業員が大勢いたそうです。職を失って労働所得が途絶え、会社が倒産して株券も紙切れになる。踏んだり蹴ったり。稀なケースかもしれませんが、労働も金融も一つの組織に集中投資するのは確かにリスキーかもしれません。

ただ、仕事を通じて馴染みが深い業界に積極的に投資するのは、むしろ有益だと思います。たとえば、もしあなたが製薬業界にお勤めなら、ヘルスケアセクターに積極的に投資するのは良い案だと思います。自分の強みを活かせます。「サラリーマンとして製薬業界にいるから、分散のため投資先としてヘルスケアは避けよう」と、ここまで考える必要はないかなって個人的には思います。

これまでの勉強、仕事を通して得た知識、経験って人それぞれ千差万別です。あなたにとっての常識は私にとっては非常識。あなたにとって当然の知識でも、私にとっては想像もできないこと。こんなことは普通にあります。逆も然り。

特許が本当に継続的な優位性をもたらしてくれるのは、さまざまな特許製品に関して企業が改良を重ね、その実績が継続する場合に限られる。

例えば、スリーエムは文字どおり何千もの特許を使って何百もの製品を生産しているし、メルクやイーライ・リリーなどの大手製薬会社も同じだ。これらの企業は、長年数多くの特許を取っていて、しかも現在の特許製品がいずれ新しい特許製品に入れ替わっていくであろうことを、われわれは過去の体験からある程度確信することができる

『千年投資の公理』より


この文章を読んで「ふむふむ、そうだよな」って思える人が、私は羨ましいです。

特に最後の一文。
「 現在の特許製品がいずれ新しい特許製品に入れ替わっていくであろうことを、われわれは過去の体験からある程度確信することができる


全然確信できねーよ!(笑)
って僕は思いました。

私はファイザーやアッヴィに投資しています。アッヴィは「ヒュミラ」という一つの製品に売上高の半分以上を頼っています。一見すると危険な製品ポートフォリオです。でも、きっとアッヴィのような実績ある大手製薬会社は、『千年投資の公理』が言うように、これからも既存特許を活かして新しい製品を生み出し続けるはず、、そう信じてます。

信じてますけど、確信は持てない。「過去の体験からある程度確信することができる 」って『千年投資の公理』 は言ってますけど、製薬業界での経験がない私にその感覚はありません。

でも、もしあなたが製薬会社にお勤めなら、この『千年投資の公理』 の文章の意味が何となくわかるのではないでしょうか。「ああ、確かにそうだな」って思えるのでは。その感覚は私にはないものです。あなたの投資家としての強みです。

リスク対リターンが最適なポートフォリオは人それぞれです。あなたが得意とする分野、明るい業界に積極的に投資するのは合理的だと思います。もちろん、ほどほどのセクター分散は大切だとは思いますが。

知識と知恵は違うなって思います。本を読んだだけだと知識にしかならない。過去の経験に基づいて、本の内容を自分なりに解釈できると知識が知恵に変わります。知恵を付けたいな。知恵があるほど投資家として強くなれそう。でも知恵は読書だけじゃダメなんだよな~。

(参考図書) 『千年投資の公理』


以前、読者さんから紹介頂いた書籍。素晴らしい良書なので、紹介しておきます。