昨年末、日銀がYCC(Yield Curve Control)を修正して長期金利が上昇しました。現在10年債利回りは0.5%ほどで日銀が示す上限に一致しています。

これに伴ってフラット35などの住宅ローン固定金利は上昇しています。

一方で、ネット銀行などが提供する変動金利は連れ高になるどころか更に下がっています。

固定金利が上がれば、財務リスクを背負ってでも変動金利でお金を借りたいと考える人が増えるはずです。経済は需要と供給で動いていますから、変動金利ローンの需要が増えれば普通に考えればその金利は上がるはずです。

それなのに、今のところ住宅ローンの変動金利に上昇の兆しがないのはなぜなのか?(日銀が政策金利を上げていないことは前提として)。

それはお金という商品が完全コモディティだからです。経済学で言う「コモディティ」とは、誰がそれを生産しても価値が等しく代替性があるものを指します。

米や砂糖、原油は一般的にはコモディティと言われますが、全く差別化できないわけではありません。「あきたこまち」などのブランド米は高値で取引されます。原油もすべて同質ではありません。WTI、ブレント原油、ドバイ原油と3つも価格指標があるくらいです。

100%コモディティと言えるのがお金、資本です。

三井住友銀行が貸し出すお金、みずほ銀行が貸し出すお金、auじぶん銀行が貸し出すお金、どれも同じお金で違いは何らありません。保険などローンに付属するサービスに違いはあれど、お金それ自体の機能に違いはありません。

「あきたこまち」みたいにお金をブランド化することはできません。目に見えるものでもないですし。お金に色はないということです。

お金を借りたい消費者からすれば、どこの銀行を利用しようと借りるお金の機能が変わるわけではないので、なるべく安い金利で提供してくれる金融機関を探そうとするのは当然です。

だから、お金という商品は安く買い叩かれるのです。

金融機関側から見ても、多少金利を低くしてでもお金を貸したいビジネスニーズがあります。

お金は原価ゼロと言えますから、たとえ低金利でも融資手数料と利息で相応の収益になります。また、高額な住宅ローンを借りれるのはそれなりに安定所得がある属性の良い人なので、そういう人を顧客として囲っておくことで、保険など別のビジネスに繋げることができます。

そんな事情があるため、日銀がYCCを修正して長期金利が上がっても、住宅ローンの変動金利は簡単には上がらないのです。

今後もずっと金利が上がらないと楽観していいわけではありませんが、今回のYCC修正ですぐに変動金利が上がるとは思いません。