金利低下がもたらした株高

大統領選があった11月3日を境にS&P500は大きく上げていますね。最初はトランプ当選期待で先物が上がっていました。次第にバイデン逆転の可能性が高まっていきましたが、それでも株高は止まらず。

変わったのは当初はNYダウが強かったのに対して、途中からNYダウの上昇が緩慢になってナスダックの上げ幅が高まった点。

なぜ、株価とりわけハイテク企業の株価が上がったのか?

一つの要因に絞ることはできませんが、一番の理由は金利だと言えます。以下は11月2日~7日までの米10年債利回りの推移。

3日夕刻まで利回りは上昇していましたが、夜以降一転して急落しています。

金利が下がったから株が上がった。特に資産価値が遠い将来のキャッシュフローに依存するハイテク企業の株価が上がった。教科書通りの値動きです。

では、なぜ突然金利が下がったのか?

上院を民主党が取れる見込みが薄くなったからです。いわゆるブルーウェーブ(大統領、上院、下院すべて民主党)の実現が難しくなったことをマーケットが織り込んだと思われます。

もしブルーウェーブが実現していたら、3兆ドル規模の追加財政出動もあり得たと言われています。それだけ大量のマネーを直接経済に投入すれば、貨幣価値が落ちてインフレ期待も高まります。つまり長期金利が上がります。

どうやら上院は共和党が過半数を維持しそうだ。大きな財政刺激は期待できなさそうだな。そんな思惑が金利を押し下げたと思われます。

面白いですね。私は短期的なトレーディングはやってないですが、エンタメかつ勉強としてマーケットの様子を眺めていました。

ニュースサイトを見るよりマーケットを見る方が大統領選、議員選の行方を予想できます。身銭を切ってマーケットに参加している人は真剣ですからね。

ブルーウェーブが望ましかった。「ねじれ」による株高はあまり喜べない

低金利が株価を押し上げています。ガチホした人、特にハイテク株に張っていた人はホクホクで笑いが止まらない感じでしょうか!

私もじっとマーケットに居座っていたので、おかげさまでそこそこ資産は増えました。が、正直ってこういう金利低下だけがもたらす株高はあまり喜べないなと思っています。

金利が下がるとは債券価格の上昇であり、債券投資の収益性が落ちることを意味します。株と債券は競合します。債券利回りが下がれば、株式の益回りも歩調を合わせて下がります。つまり株高です。

これは債券と株式という金融商品の相対的魅力度のバランスを調整しているだけであって、株式の実質リターンは特に変化しないと考えています。

私たち長期投資家の利益は債券との比較云々ではなく、企業収益がすべてです。投資先企業が儲かれば株主も儲かる。短期的には企業収益と株主利益は必ずしも連動しませんが、長期的には連動します。これは客観的事実で私個人の意見ではありません。

つまり、いくら金利が下がろうともそれが企業収益の成長に繋がらないと意味はないのです。

では、どうやれば低金利が企業収益成長に繋がるのか?

低金利を利用して個人や企業がたくさん借金して経済を回せばいい。

でも、どうやらそれは難しいということがここ10年の日米の状況から明らかになってきました。

そこで財政政策という選択肢が出てきます。政府が借金して経済を回すということ。今やFRBトップのパウエル議長ですら金融政策のみで経済を支えるのは不可能で、議会の協力が不可欠と言っているくらいです。

金利が低いということは紙幣を刷る余力があるということ。「余力」というのはそう簡単にインフレは起きないという意味。現にコロナ禍での財政支援はインフレをもたらしていません。

ブルーウェーブが実現していれば目先は株安になった可能性もあります。なぜなら金利上昇は株式の資産価値に即影響を与えるからです。増税という懸念もあります。

ただ、長期的には大規模な財政刺激による企業収益成長が、金利上昇と増税を相殺できただろうと思います。

というか、これは根拠なき推測で恐縮ですが、3兆ドル規模の追加刺激策を以ってしても、さほど金利もインフレ率も上がらないのではなと思います。私たちはテクノロジーの進化がもたらした莫大な資本ストックを過小評価していると思います。

ブルーウェーブによってインフレなき経済成長が実現され、株主は今後5年10年ウハウハという明るい未来を勝手に妄想していました。

が、どうやらそれは実現しそうにないです(まだわかりませんが)。「ねじれ」によって大規模な増税は阻止されるでしょうが、同じく大規模な財政刺激も阻止される可能性が濃厚です。

何も決まらない政治停滞。これは一般的にはマーケットにはポジティブと言われます。しかし、経済のために大きな政府が求められ始めている近年、必ずしもそうとは言い切れないと私は考えています。

(長期志向の)株主にとってのベストシナリオはブルーウェーブだったと思います。

「ねじれ」でも株高シナリオは不変

が、大統領がどうなれ、議会がどうであれ、全体として低金利を生かして政府によるマネー創造を積極化していこうという流れであることは変わらないと思います。

また、すでに実施した刺激策によるマネーストック増加は必ず経済にプラスに効いてくるはずです。ワクチンの目途が立ってからが本番でしょう。

「ねじれ」は株主にとって必ずしも望ましいとは言えないというのが私の見解。ブルーウェーブがベストだった。

が、規模が縮小するとは言え財政刺激が株高をもたらすというシナリオは同じだと思います。ハイテク株はもう数年はバリュー株をアウトパフォームする可能性が高そうです。