米国銘柄分析記事というカテゴリーを設けて、主要米国企業の財務分析を公開しています。今年2018年からは、簡単ではありますがバランスシート情報も掲載しています。

ブログに限らず仕事でも、企業の財務データを見る時は、事前に「こんな感じになっているはずだろうな~」という仮説を持つように心がけています。難しいことは考えません。シンプルにたとえば「法人減税あったから、今年は純利益上がっているはずだ。」くらいです。そういう仮定を持っていれば、もし純利益が下落していることがあればピンっと網に引っかかります。「ん、なんでだろう?」と疑問に思います。その疑問を大切にしています。監査法人で働いている時は、特にこの発想を大切に仕事をしていました。

バランスシートも、事前にBS像をイメージしてから見るようにしています。「自己資本比率30%くらいかな~」とか「無形資産が多いかな~」とか。

 

アルファベットのBSは意外だった! 現金持ち過ぎ。

さて、今日アルファベット(グーグル)の銘柄分析記事を更新しました。初めてアルファベットのBSを見ました。ちょっと驚きました。想定していたBSからだいぶ乖離してたからです。

2017年12月末のアルファベットのBSイメージを描いてみます。


このBSはちょっと想定外で驚きました。

現金持ち過ぎじゃね!!って率直に思いました。超金持ち企業です。キャッシュリッチです。アルファベットはAIとかクラウドとか自動運転とか、色んな先端技術に積極投資している印象を持っていて、資産の大半は無形資産だと思い込んでいました。実際は現金が半分以上とはサプライズです・・。

で、もう一つ驚いたのがBSの右側です。事業が安定している企業ほど負債を活用して、ビジネスにレバレッジを掛けて利益率を上げようとするものです。グーグルが広告ビジネスで荒稼ぎしているのは知っていたので、負債比率は高めかな~と想定していました。たとえば、アップルの負債比率は65%ですが、アルファベットもそれくらいはあるかなと思っていました。そしたら蓋を開けてみれば、アルファベットの負債比率は僅か23%しかなく、借金はほとんどしていませんでした。

ネットデット(純有利子負債)という言葉があります。借金があっても、それに対応する現預金があればそれは実質的には無借金と言えるだろうという考えです。100万円の借金があっても、同額100万円の現金が手元にあるなら実質借金ゼロだよねってことです。ネットデットは「有利子負債-現預金」で算出できます。

アルファベットのネットデットはいくらでしょうか?

リース債務と長期借入金と合わせても134億ドルほどです。対して保有している現預金(正確には短期投資も含む現金同等物)は1,000億ドル超(10兆円超!)です。借金全部返済しても900億ドル近くもの金が余る計算です。

つまり、アルファベットは実質無借金経営です。無借金どころか、溢れそうなくらいのキャッシュがあって困っているくらいです。めっちゃくちゃ金持ちです。

金持ちならいいじゃんって、思われるかもしれませんが、株式会社が使わない現預金を滞留させ過ぎるのは褒められたことではありません。日本風に言えば内部留保を貯め込み過ぎている状態です。

アルファベットは成長投資をしっかり行っているのでしょうが、本業の広告収入があまりにも莫大過ぎるためお金が余っていると思われます。2017年12月末に限った話ではありません。過去5年で見ても常に現預金が多いです。

アルファベットに投資しているあなた、株主としてどう思いますか?
「こんなに金あるなら、そろそろ配当出して欲しいな」って思いませんか?

アルファベットのビジネスについて詳しくないのであまり強気には言えませんが、このBSを素直に見たら「そろそろ配当だしてよ~」って思います。私が株主ならそう訴えたいです。もちろん、この莫大な現金の使い道があるのかもしれませんが。もしかして、アップルと同じで課税が嫌で米国外の留保していた現金なのかな。わからんけど。仮にそうだとしても、昨年の税制改革でその障壁は取り払われました。

アルファベットの無配期間が終わるのも近いかもなと思いました。