『株式投資の未来』のデータは古い
私はジェレミー・シーゲル氏の『株式投資の未来』という書籍に感化されて、インデックス投資から米国株投資に移行した口です。昔はインデックス投資最強!と疑っていませんでしたが、一部の優良株に限定することでインデックスを超えるリターンを目指せるかもと思いました。
一冊の本にこれほど行動を変えられたのは後にも先にもこれだけかなと思います。インデックスに負け続けているのは残念ですが、いつか超えたいです(自信はない)。
ただ、よく指摘されることではありますが、シーゲル氏が『株式投資の未来』で調査した各銘柄のリターン測定期間は2003年までと結構古いです。もう20年近く経ちます。だからって、そのデータが無意味だとは思いません。高いレコードを残した銘柄はどのような性質を持っているのか、その特徴を抽出して現代の投資環境に当てはめればよいです。何事も表面的な事実のみを捉えるのではなく、抽象的本質的なことを理解することが大切だと思います。
と、なんか偉そうなこと言いましたがデータが古いのは事実。そこで、主要銘柄の最新のリターン実績を調べました。現代はテクノロジーのおかげで各銘柄の配当込みの長期リターンを簡単に調べることができます。
具体的にはPortfolio Visualizerの”Backtest Portfolio”を利用しました。米国株銘柄分析でも使わせてもらっている便利なツールです。有料でもいいくらいです。
S&P100構成銘柄の長期リターン(1986年~2019年)
簡単とは言え、S&P500銘柄すべてを検索するのはさすがに骨が折れるので、S&P100銘柄に絞りました。あと、そこに私が投資しているゼネラルミルズ(GIS)を加え、実績がほぼないダウ・ケミカル(DOW)を除外しました。結果として全部で100銘柄です。
リターン測定期間はPortfolio Visualizerで調べれる限界の1986年から直近2019年までの33年間。配当込みのトータルリターン(年率)です。なお、上場が1986年以降の銘柄は上場年から2019年までのリターンとなります。たとえば、アマゾン(AMZN)のリターンは1998年~2019年となります。そこはご留意お願いします。
では、結果発表!
リターンが高い順に並べます。
順位 | ティッカー | 会社名 | リターン |
1 | NFLX | ネットフリックス | 42.5% |
2 | FB | フェイスブック | 33.9% |
3 | CHTR | チャーターコミュニケーションズ | 32.4% |
4 | PYPL | ペイパル | 31.5% |
5 | AMZN | アマゾンドットコム | 30.8% |
6 | MA | マスターカード | 30.6% |
7 | V | ビザ | 28.3% |
8 | MSFT | マイクロソフト | 24.7% |
9 | UNH | ユナイテッドヘルス | 23.7% |
10 | HD | ホームデポ | 23.3% |
11 | NVDA | エヌビディア | 23.2% |
12 | ORCL | オラクル | 23.1% |
13 | CSCO | シスコシステムズ | 22.9% |
14 | ADBE | アドビシステムズ | 22.8% |
15 | AMGN | アムジェン | 22.7% |
16 | AAPL | アップル | 22.3% |
17 | SBUX | スターバックス | 21.2% |
18 | NKE | ナイキ | 20.8% |
19 | DHR | ダナハー | 20.7% |
20 | BLK | ブラックロック | 20.6% |
21 | QCOM | クアルコム | 20.0% |
22 | GILD | ギリアドサイエンシズ | 19.5% |
23 | BIIB | バイオジェン | 19.2% |
24 | GOOGL | アルファベット | 19.2% |
25 | MO | アルトリアグループ | 18.2% |
26 | MDT | メドトロニック | 17.7% |
27 | LOW | ロウズカンパニーズ | 17.3% |
28 | INTC | インテル | 16.0% |
29 | BRKB | バークシャーハサウェイ | 15.6% |
30 | TMO | サーモフィッシャーサイエンティフィック | 15.4% |
31 | WFC | ウェルズファーゴ | 15.0% |
32 | ABT | アボットラボラトリーズ | 14.4% |
33 | TXN | テキサスインスツルメンツ | 14.4% |
34 | JNJ | J&J | 14.4% |
35 | WMT | ウォルマート | 14.3% |
36 | DIS | ウォルトディズニー | 14.0% |
37 | UNP | ユニオンパシフィック | 14.0% |
38 | MCD | マクドナルド | 13.8% |
39 | ACN | アクセンチュア | 13.8% |
40 | COF | キャピタルワンF | 13.7% |
41 | NEE | ネクステラエナジー | 13.6% |
42 | PEP | ペプシコ | 13.5% |
43 | USB | U.S. バンコープ | 13.5% |
44 | CL | コルゲートパルモリーブ | 13.4% |
45 | SPG | サイモンプロパティG | 13.4% |
46 | ABBV | アッヴィ | 13.3% |
47 | CMCSA | コムキャスト | 13.3% |
48 | MRK | メルク | 13.3% |
49 | PG | P&G | 13.2% |
50 | KO | コカコーラ | 13.2% |
51 | LMT | ロッキードマーチン | 13.1% |
52 | SO | サザン | 13.0% |
53 | TGT | ターゲット | 13.0% |
54 | CAT | キャタピラー | 12.9% |
55 | UTX | ユナイテッドテクノロジーズ | 12.8% |
56 | GD | ゼネラルダイナミクス | 12.8% |
57 | BA | ボーイング | 12.6% |
58 | COST | コストコ | 12.5% |
59 | WBA | ウォルグリーンブーツA | 12.5% |
60 | LLY | イーライリリー&カンパニー | 12.3% |
61 | PFE | ファイザー | 12.2% |
62 | GIS | ゼネラルミルズ | 12.0% |
63 | CVX | シェブロン | 11.9% |
64 | COP | コノコフィリップス | 11.9% |
65 | MMM | 3M | 11.6% |
66 | HON | ハネウェルI | 11.3% |
67 | RTN | レイセオン | 11.3% |
68 | AGN | アラガン | 11.2% |
69 | PM | フィリップモリスI | 11.2% |
70 | AXP | アメリカンエキスプレス | 11.0% |
71 | XOM | エクソンモービル | 10.7% |
72 | DUK | デュークエナジー | 10.7% |
73 | ALL | オールステート | 10.6% |
74 | EXC | エクセロン | 10.5% |
75 | EMR | エマソンエレクトリック | 10.4% |
76 | BKNG | ブッキングホールディング | 10.4% |
77 | BK | バンクオブニューヨークメロン | 10.2% |
78 | BMY | ブリストルマイヤーズスクイブ | 10.2% |
79 | JPM | JPモルガンチェース | 10.1% |
80 | CVS | CVSヘルス | 9.9% |
81 | VZ | ベライゾン | 9.8% |
82 | MS | モルガンスタンレー | 9.6% |
83 | DD | デュポン | 8.7% |
84 | BAC | バンクオブアメリカ | 8.5% |
85 | T | AT&T | 7.9% |
86 | MDLZ | モンデリーズI | 7.8% |
87 | OXY | オクシデンタルペトロリウム | 7.6% |
88 | FDX | フェデックス | 7.4% |
89 | GE | ゼネラルエレクトリック | 7.0% |
90 | SLB | シュルンベルジェ | 6.9% |
91 | F | フォードモーター | 6.8% |
92 | IBM | IBM | 6.1% |
93 | GS | ゴールドマンサックス | 5.7% |
94 | C | シティグループ | 5.5% |
95 | UPS | ユナイテッドパーセル | 5.2% |
96 | MET | メットライフ | 4.8% |
97 | GM | ゼネラルモーターズ | 2.7% |
98 | AIG | アメリカンI | -0.4% |
99 | KMI | キンダーモルガン | -1.2% |
100 | KHC | クラフトハインツ | -15.3% |
ランキングを作ってみての感想をつらつらと
堂々の1位はネットフリックス。2003年~2019年までの16年間で年率42.5%という素晴らしいリターンを残しました。100万円が4億円になる計算です。すげえ・・。
以下、上位銘柄にはフェイスブックやペイパル、アマゾン、ビザ・マスター、マイクロソフト、シスコシステムズなどのハイテクが多いです。アップルも年率22%と大健闘。これらの企業は創業年数がそれほど長くなく、創業時からのリターンとなるので、今後の期待リターンをという点ではちょっと参考にならないです。年率30%が今後30年も続くことはさすがに考えられません。ただ、株主を裕福にした実績は確かなものだし、今後も市場平均を超える高いリターンが期待できそうだなとは思います。
注目したいのは創業年数が長い企業で高リターンを残している企業です。
たとえばナイキ。上場こそ1990年と比較的最近ですが、創業は1964年です。年率20.8%とは凄いです。後はアルトリアグループ、メドトロニック、ロウズカンパニーズ、アボットラボラトリーズ、ジョンソンエンドジョンソン、ウォルマート、ウォルト・ディズニー、マクドナルド辺りも成熟したブランドながら高いリターンを残しています。
中央値(50位)はコカ・コーラで年率13.2%。インフレ無視とは言え、中央値で年率13%とはS&P100は強いです。今のコカ・コーラもそれくらいのリターンを残してくれると嬉しいのですが、昨今のバリュエーションを考えるとちょっと厳しい要求ですかね。
逆に、結果を残せていない銘柄としてはゼネラルモーターズやフォード・モータ等の自動車会社、エクソンモービルやシェブロン、シュルンベルジェといったエネルギー企業があげられます。そしてIBMですね。
私はエクソン、シュルンベルジェ、IBMに投資しています。過去のリターンが悪いからと言って、これからも悪いとは断定できませんが、敢えて実績のない銘柄を買う意味があるのか。21世紀は逆転すると言える確信があるのか。そう問われれば答えはNOです。これらの銘柄は割安に見えますが、「安物買いの銭失い」にならないか不安があります。エクソンはそれなりに頑張ってくれる気がしますが、IBMの不安は大きいです。
安心したのは米国市場を代表するS&P100クラスになると、どの銘柄もそれなりの結果を残しているという点です。33年間変わらずビジネスを続けられること自体凄いことです。こういう優良株を複数買ってしっかりホールドし地道に配当を再投資していれば、大外れはしないだろうと思えます。
できれば、平均以上のリターンを残せる銘柄をチョイスしたいですけどね。この表の上位銘柄を買えばいいのか。いや、未来は過去の延長とは限りません。でも、過去株主の富を増やしてきたという実績は心強いものがあります。リターン下位の銘柄を長期投資目的で買う時は、自分なりの相当な納得感がないと厳しそうです。IBMホルダーの私が言うのも何ですが・・。
GE元CEOのジャック・ウェルチが亡くなりましたね。
1981年から2001年にかけてGEのCEOを勤めて、株価を30倍にしたそうです。
しかし、1986年~2019年のトータルリターンでは89位…。
時代の潮流から取り残された感じがしますね…。
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO56302140S0A300C2MM8000?s=1
時価総額を4000億ドルも引き上げた名経営者ですね。
経営者の手腕に依存する企業への長期投資はリスキーだなと思わされます。