株式市場は未来の為替相場を予見していたのか!?

 

いきなり大文字ですみません。。
実は、最近めっちゃ驚いていることがありまして。

何に驚いているかって、「マーケット」という存在の偉大さにです。
マーケットの合理性に大変驚いています。

マーケットは賢いとよく言われます。マーケットとはすべての投資家の意思決定が結集したものです。時に「ミスターマーケット」などと揶揄されることもありますが、やはりマーケットの意思というものは凄いと感じずにはいられません。

マーケットが凄いと最近感じているわけ、、
それは2017年初からのフィリップモリス(PM)の株価急騰です。

これはPMの直近1年間の株価チャートです。

昨年2016年11月、トランプ大統領の当選が決まった直後、財政投資・税制改革(減税)への期待感から米国債は売られて金利は急上昇しました。その反動で、債券の代替的性格がある高配当なフィリップモリスの株価は急落しました。

95ドル付近だったPMの株価は、大統領選直後に80ドル台半ばまで急落しました。

それは上述の通り金利が上昇したこと、またドルが上昇した影響が大きいです。フィリップモリスは100%米国外ビジネスなので、ドル高になると外貨収入のドル換算値が小さくなるので、ドル高は不利です。

2016年末にはやや株価は戻しましたが、それでも年末時点の株価は90ドル付近で、大統領選前の水準までは戻りませんでした。

で、ですね。

ご存知かもしれませんが、PMの株価は2017年1月半ばからグングン上昇して6月には一時120ドルを超えました。よかったら上のPM株価チャートを再度見てみて下さい。

年初から急上昇していますよね。

別に、PMの株価が急激に上昇したことそれ自体に驚いているわけではありません。

株価なんて良くも悪くも読めません。
『敗者のゲーム』の著者チャールズ・エリス氏は「稲妻が走る瞬間」と表現していましたが、低迷していた株価が理論価値に近づく瞬間は突然訪れるものです。だから、変にマーケットを読もうとせずに、市場に居続けることが大切です。

 

 

ここからが本題です。

私は、このPMの株価急上昇の後に起こったとある事象にビビっております。

「え!、あ、、もしかしてそういうこと!、フィリップモリスの株価が上昇した理由ってこれ!?」
と驚いていることがあります。ブログ記事にしてしまうくらい驚いています。

それは、ドル安ユーロ高の進行です。

2017年5月から、ユーロは急激に買われ始めました。2017年初には1ユーロ1.04ドル付近だったのが、8月には1.18ドルを超えました。2017年、ユーロはドルに対して11%以上も上昇しています。

このユーロ高はユーロ圏の堅調な経済成長を反映してのことだと言われています。

フランスの選挙では親EU中道派のエマニュエル・マクロン大統領が勝利し、マーケットは一安心しました。欧州中央銀行のドラギ総裁は債券購入ペースを緩める意思を表明していますが、これはユーロ経済が順調であることの証です。債券購入ペースを緩めて金融引き締めに動けば、ユーロ圏内の国債利回りは上昇するので、ユーロ高要因となります。

こういった諸々の理由によって、ユーロは2017年大きく上昇しています。

これは2017年初来のユーロドル相場です。

4月の半ば辺りから、ユーロがドルに対して上昇を続けていることがわかりますよね。

 

2016年末時点で、2017年にユーロがここまで上昇すると予測できた人が果たしてどれだけいたでしょうか?

為替の予想なんて、株価予想よりも難しいと思います。為替は投機取引の規模が大きいですし(ましてやドル・ユーロ取引は)、インサイダーな実需の取引もあります。そんなブラックボックスな将来の為替予想を正確に行うなんて絶対に無理ゲーなんです。

ちなみに、為替予想が無理ってことはこちらの書籍を読むとよくわかります。
これ良書でおススメです。
なぜ専門家の為替予想は外れるのか

 

そう、、為替予想なんて普通は無理なんです。
専門家でも難しいんです。

普通は。。

でも、その為替予想をやってのけたのが株式市場です。
フィリップモリス(PM)の株価推移です。

フィリップモリスの2017年初からの株価急上昇は、来たるユーロの急上昇を予期していたかのようです。PMの株価が上昇し始めたのが2017年1月半ば。ユーロがドルに対して上昇し始めたのが2017年4月半ばです。

フィリップモリスは100%米国外でビジネスをしています。米国内を対象とするアルトリア・グループと分離してできた企業です。

やや古くて申し訳ないですが、2015年版米国会社四季報から取ったPMの地域別売上高です。

フィリップモリスはユーロ圏での取引が3割以上もあります。

つまり、フィリップモリスはユーロ高になると大変有利なわけです。
売上収入がユーロ建てなので、そのユーロの価値が上がれば当然利益は向上しますよね。

私たち日本人米国株投資家にとって、ボーナス時期の円高が嬉しいのと同じ理屈です。自分がもらう収入の通貨は強くなった方が好ましいです。円高の時にボーナスをもらって、強い円で米国株を仕込めると嬉しいですよね。

そんなわけで、フィリップモリス株はドル安ユーロ高にポジティブに反応する銘柄だと言えます。

ドル安ユーロ高が本格的に始まる3ヶ月以上も前から、PM株価は上昇し始めました。まるで新興グロース株かと言わんばかりに急浮上しました。

当時は、「あれれ、なんか知らんけどPM株価上がっていくな~、株価の動きは理解できんな~」って思いながらPMの株価チャートをスマホアプリで眺めていました。

しかし、私はその後ブルブルと震える経験をすることになります。

それが先ほどから言っている、急激なドル安ユーロ高の進行です。
なお、ドルはユーロ以外の通貨に対しても全般的に売られており、それもPMにとってポジティブに効いています。

フィリップモリスの株価急上昇は、未来のドル安ユーロ高を予見していたんじゃないでしょうか?

マーケットは、将来のドル安ユーロ高を見越していたのか!?

そんなことできるのか?

2017年ここまでユーロが買われたのは意外なことだと思っている人の方が多いんじゃないでしょうか。少なくとも私にとっては予想外の為替変動です。

私の会社では、ユーロの想定為替レートは1ユーロ120円です。現在は1ユーロ130円付近ですよね。ユーロは円に対しても上がっています。昨日8月17日の日経新聞に、ユーロの想定為替レートを見直す企業が出てきていると報道されていました。

そう、企業にとっても2017年の急激なユーロ高は想定外だったんです。
(ま、企業の想定為替レートの決定方法なんて適当ですけどね~w。)

2016年末時点では、誰も予測していなかったユーロ高。

そんなユーロ高を唯一?予見していたのが、株式マーケットだったのかもしれません。

私の勝手な思い込みかもしれませんが、2017年初からのフィリップモリス株価の上昇は、将来のドル安ユーロ高を織り込みにいっていたように見えます。

 

 

マーケットは合理的だとよく言われますが、それは概ね正しいと感じています。
フィリップモリスのような時価総額18兆円もある大企業であればなおさらです。

長期投資では投資タイミングの巧拙は、それほど投資パフォーマンスに影響しないと言われます。
確かにその通りでしょう。

ただ人間の心理として、なるべく安く仕入れて短期的な含み益の緑色の数字を見たいという感情は理解できます。私もそうですから。

ただ、やはりマーケットを出し抜こうなどと思わない方が賢明でしょう。

2009年6月から始まった米国景気回復は、100ヶ月目に近づいています。過去、これ以上に長期間景気拡大が続いたのは、1854年以降で2回しかありません。異例の長期株価上昇期間となっています。

そろそろ株価調整かと言われ続けながらも、NYダウは2万2千ドルを超えるまでに伸びてきました。

もうすぐ株価調整が起こるのかどうか、それはわかりません。ただ、今現在、リセッション入りを示す経済統計は見当たりません。欧州テロや北朝鮮ミサイル問題といった地政学的なリスクにも、株式市場は過剰には反応しません。

マーケットは賢いです。

フィリップモリスの株価上昇と、その後のユーロの上昇を見て痛感しています。

米株価がしぶとく伸び続けてるのには、それなりの理由があると思います。

株価は基本右肩上がりなので、投資する時はいつも割高に見えるものです。

自分がマーケットより賢いんだ、もうすぐ株価は調整期に入るはずだと自信過剰にならずに、コツコツ資金をマーケットに投入していくことをお勧めします。