先日News Picksで半導体特集が組まれていたのですが、それがめちゃくちゃ分かりやすくて感動しました。全くの門外漢の私でも、半導体業界の概観がスッと頭に入りました。
半導体は産業のコメなんて言われることもありますが、そのサプライチェーンの複雑さは食料の米とは大違いです。
設計、原材料、製造装置、製造とそれぞれの工程に多くのプレーヤーがいます。設計と製造を両方行っている企業もあれば、設計に特化している企業もあります。地味な裏方ですが、原料や製造装置の供給も欠かせません(ここは日本が強い)。
専門技術的なことは依然として無知ですが、半導体業界の全体像はぼんやりと理解できたつもりです。主要企業の財務データも一通り確認済み。
これまでの調査を踏まえて、半導体業界で投資先として有望だなと感じた銘柄を3つ紹介します。
①台湾セミコンダクター(TSMC)
②アプライド・マテリアルズ(AMAT)
③テキサス・インスツルメンツ(TXN)
①台湾セミコンダクター(TSMC)
各社が最先端の半導体設計にしのぎを削る中、敢えて製造に特化した稀有な企業。GPUなどのロジック半導体は競争が激しく、社内のリソースを製造ではなく設計に全振りした方が効率的です。
しかし、最終的にはもちろん製造する必要があります。そこに目を付けたのがTSMC。台湾の国策企業。日の丸半導体の凋落とは対照的です。
テスラやアップルがチップの内製を進めています。アップルはCPUをインテル製から自社製「M1」に切り替えた新Macを発売しました。評判は上々。アップルが他社にライセンスすることもあり得ると言われているくらいです。
チップ内製化はアップルが世界トップクラスの優秀なエンジニアを雇っているから可能なわけですが、そもそもTSMCの存在がなければ内製という発想すら出てこなかったはずです。いくらアップルと言えども、チップ製造に資源を投じる経営判断は難しいでしょうから。
TSMCはファウンドリ(半導体製造)で50%超のシェアを誇っています。サムスンやグローバル・ファウンドリーズが後に続きますが、アップル等から高単価の受注を受けることができるのはTSMCです。
半導体業界の中でも非常にオリジナルな立ち位置で、圧倒的なワイドモート企業だと感じます。営業利益率は35%~40%、純利益率も30%台と財務数値にもその収益性の高さが表れています。
製造下請けなどと侮ってはいけません。世界経済に不可欠な優良企業です。
②アプライド・マテリアルズ(AMAT)
「ゴールド・ラッシュの時に儲けたのは、金を掘っていた人ではなく、ショベルやテントを売っていた人だった。」とピーター・リンチは言っています。
これは非常に示唆に富んだ発言で、あらゆる業界に当てはまると思います。ビットコインバブルの時に一番儲けたのは、ビットコインの投資家(投機家?)ではなく、アフィリエイターだったのではないでしょうか。
AI、IoTなどの需要もあってデータ通信量は増える一方です。以前は半導体と言えば非常に浮き沈みが激しい業界の象徴でしたが、今後10年は右肩上がりに成長を続ける可能性が高いと思います。
そこで投資家として目を向けたいのは、半導体を設計するハイテク企業ではなく、その製造装置を提供するメーカーです。ゴールドラッシュでショベルを売る人になる感じです。
日本の東京エレクトロンも気になるところですが、先ずは世界最大の半導体製造装置メーカーである米アプライド・マテリアルズ(AMAT)をチョイスします。5年前に両社の統合話が上がりました。破談になりましたが。
AMATのPLを見るとFY13を底に売上高は年率10%程度で成長を続けており、キャッシュフローも潤沢。利益率も高い。資金力を活かした自社株買いの規模も大きいです。
業界2位のラムリサーチ(LRCX)もいいなあと思いました。
③テキサス・インスツルメンツ(TXN)
CPUやGPUなどのロジック半導体は、非常に競争が激しい印象です。インテルの凋落が最近話題に上がりますが、製造をTSMCに委託して設計に特化したAMDの猛追を受けていることがその一因です。
一方でアナログ半導体は相対的に市場成長は緩慢なものの、あまりイノベーティブな感じがしません(良い意味で)。需要は安定しています。
詳しいことは専門外でわかりませんが、恐らく設計や製造がロジック半導体ほど複雑ではないということでしょうか。
じゃあ、その分儲けも少ないのかと言えばそんなことは全くありません。アナログ半導体でトップ(世界シェアの20%弱)のテキサス・インスツルメンツ(TI)の財務諸表を見ると、その利幅がいかに大きいかがよくわかります。
TIの営業利益率は40%~45%ほどあります。恐らく半導体関連企業の中で最も高い利益率なのではと思います。
イノベーションの利益は最終的には消費者に移転しがちです。半導体の中でも相対的に技術革新が少なく、でも需要は増え続け、利益もしっかり取れるアナログ半導体。その業界トップを走るテキサス・インスツルメンツは長期投資先として有望だと感じました。
Hiroさん、こんばんは。
いつもブログを拝読しています。今日何気なくGPIFのサイトを見ていたら、「世界的な低金利環境を発生・定着させているメカニズムに関する情報提供依頼」(12/3付のNEWS)というトピックスが出ていました。https://www.gpif.go.jp/
株価と金利環境についてHiroさんは詳しいので、斬新なアイディアが提供できそうと思い、余計なお世話ですがお知らせしたいと思いました(ただ、アイディア提供に対する謝礼などは無いそうです)。
カズヒロさん、こんばんは。
情報提供ありがとうございます。
さすがにGPIFに意見を申し上げられる立場ではないですかね(汗
ただ、今後の金利には非常に興味があります。
色んな意見がありますが、私はしばらく長期金利は上がらないと踏んでいます。
製造機販売銘柄ですがニコンやキャノンを葬ったASMLが、もしかしたら半導体関係で現在最強なのかも。現在世界シェア100%でサムスンのCEOが限定的に海外出張が認められた貴重な枠を使ってオランダまで出向いて販売確保をお願いしに行ったとか。TSMCへの依存が高いと言われてますがTSMCの方が依存してると私は見てます。
オランダASMLもNewsPickで勉強しました。
確かにTSMCも最先端の製造装置がないと事業になりませんからね。
製造装置、原料メーカーといった上流部分に投資妙味があると感じました。
コロナ後に半導体関連はかなり上げちゃいましたが、長期的に見れば今でもバリューはあると思っています。
いつもブログ楽しく拝読しております。
半導体材料業界に携わる身として、hiroさんの門外漢とは思えない3銘柄のチョイスに驚きました。
私個人的には半導体製造(メモリー除く)の分野はTSMC一強の色合いがどんどん濃くなっていく気がしています。
これまでは「設計と製造のすり合わせが重要なんだ」と息巻いていたIntelも10nm品の製造では後手を踏み、その間に競合のAMDはTSMCにせっせと製造委託し、シェアを奪われ、挙句の果てにIntelは「今後は先端品の製造外注も視野に入れる」とFabless化もほのめかしています。
唯一、競合となりえるのはSamsungくらいですが、Samsungは自社でスマホや自社製APも作っていることから一部ユーザー(AppeleとかQualcomm)とは競合してしまうのであくまで保険的な位置づけに留まり、先端品オーダーはどんどんTSMCに集まり、一強ぶりがより際立っていくと見ています。「製造下請け」などではなく、「どうか作ってください」とお願いされる存在になっていくと思っていますw
半導体、アップダウンも激しいですがとても面白い業界ですので是非今後も注目されてみてください。
いつもお世話になります。
先日マイクロソフトのチップ内製の報道は、マイクロソフトというよりTSMCに強気になるべきニュースだと解釈しました。
インテルの衰退、TSMCの覇権という流れがますます高まっているように思いました。
一方で、10nm(インテル)、7um(サムスン)、5nm(TSMC)と言われる半導体の微細化競争は、詳しいことは知りませんが、バロンズはこの微細化競争を過度に気にするべきではないと言っていました。
なんでも今後は3D方向?に進むとか。ちょっとよく意味は分かりませんでしたが、インテルにもまだまだチャンスはあるとのこと。
資金力もありますし、インテルが巻き返す可能性もあるみたいです。
ちょっとこの辺はもうちょっと勉強しないとなんのことやらさっぱりです。。
半導体業界、色々動きが合って面白いですね。
入門的な知識を付けただけで普段のちょっとしたニュースの理解度が高まりました。
今後も継続ウォッチしていきます。ちょっと投資したい気持ちもあります。考え中です。コメントありがとうございます。
こんにちは。
いつも素敵なエントリをありがとうございます。楽しく読ませて頂いています。
半導体製造装置業界で働いています。
TSMCの強みは徹底的な技術・IPの保護主義と堅牢性、そして製造装置や材料メーカに対する交渉力の大きさだと思います。
彼らは自前の半導体製品を販売していませんが、ファウンドリーとして製造技術を切磋琢磨しており、絶対に外部に流出させないよう徹底的な管理を行っています。Fab(工場)には承認された携帯電話以外の電子機器はもちろんメモ書きさえも自由に持ち込み・持ち出しできません。過失であっても見つかったら即アウト、該当のエンジニアは以降入場禁止、会社も罰則を受ける可能性があります。
一方、設備納入後はその立ち上げ、生産が安定稼働するためにメーカへの納期厳守・フルサポートを強く要求します。装置メーカは死に物狂いで対応し次回の投資でも設備納入できるよう奴隷のように日々奉仕しています(笑)。日経新聞などが書き立てる超優秀な利益率も我々サプライヤから搾り取られている部分が大きいように思います。もう少し分配してほしいものですが、余りに圧倒的な存在になりすぎて誰も文句が言えなくなってしまっている感じでしょうか。(対等に意見できるのはそれこそASMLくらいなのかな?知りませんが。)
INTELもCopy Exactly(検索してみてください)という鉄の掟がありますが、きちんと対価は払ってくれているのでビジネス上の納得感はあります。今後INTELのシェアをTSMCが食っていくと憂鬱なサプライヤは多いと思います。
愚痴のようになってしまいましたが、半導体業界への投資は有望だと思います。
昔のように大きなシリコンサイクルは目立たなくなりましたが、在庫が積みあがると半導体関連株は値下がりしますのでその時が狙い目でしょう。人類が必要とするICの数はまだまだ指数関数的に増えますので中・長期的にはマーケットは拡大し、資金力のあるプレイヤーの寡占が進んでいくと思われます。
こんにちは
専門的なコメント大変参考になります。
ありがとうございます。
情報管理の徹底っぷりは財務情報を扱う我々経理部門よりかなり厳格だと感じました。
それだけ、インサイダー情報がビジネスの強みと直結するということですね。
TSMCは微細化でインテルなどの先を行っていると言われますが、そういう技術がなぜ1社独占になるのか気になってましたが、納得しました。
製造装置とメーカーの力関係というのも微妙なところがありそうですね。
半導体の製造装置はプロセス毎にメーカーの棲み分けがあると聞きました。
メーカーとして安易にサプライヤを切り替えることは難しく、そういう意味ではサプライヤの方が交渉力があるのかなと個人的には感じていました。
アフターメンテなどを考えれば余計に切り替えは難しそうですし。
ただTSMCはあまりに巨大な存在になってしまったが故に、ASMLくらいしか対等な意見が言えないというのは確かにありそうです。
TSMCの財務諸表を見るに同社の価格交渉力はかなり強そうです。メーカーとは思えないPLです。
バリュエーションは上がってしまいましたが、半導体はこれからさらに上げそうですね。