現在NY株式市場で時価総額最大の企業はアップルです。
アップルの時価総額は約80兆円あります。
なんですが、アップルはもうじきNY市場の2位に転落することになるでしょう。
アップルを追い抜いて時価総額トップに君臨する見込みの企業がサウジアラムコです。
サウジアラムコの時価総額は200兆円以上と言われています。
サウジアラムコは遅くとも2019年、早ければ今年2017年に最大で発行済株式の5%を上場させる予定です。上場先はニューヨークが濃厚です。
エクソンモービルやロイヤル・ダッチ・シェルの規模を遥かに超える世界最大の石油メジャーの上場です。
シーゲル教授によれば、長期で高い株式リターンをもたらした銘柄は大型株でした。
強固な財務基盤とブランド力を持つ大型企業が長期で継続した収益を上げ続けることができたからです。
迷ったら業界No.1企業に投資しておくという発想は悪くないと思います。
長期投資では割安割高どうこうよりも、結局マーケットで圧倒的なシェアを誇る強い企業の株を保有し続けて配当再投資を繰り返すことが高いリターンにつながるからです。
プロクター&ギャンブル(PG)とコルゲートパルモリーブ(CL)で迷ったらとりあえずPGにしておけばいんじゃないの!って思います。
エクソン・モービル(XOM)とシェブロン(CVX)で迷うならとりあえずXOMにしておけばいいんじゃないの!って思います。
コカ・コーラ(KO)とクラフト・ハインツ(KHC)で迷うならとりあえずKOにしておけばいいんじゃないの!って思います。
大きけりゃいいってもんでもないでしょうけど、過去の実績がある優良企業であれば業界トップを選んでおいたら安心っていう発想はあると思います。規模が大きいことはコストアドバンテージとなり、その強みも一つのエコミックモートですから。
で、今後のエネルギーセクターの話。
サウジアラムコが上場すれば、エネルギーセクター最大の企業はサウジアラムコになります。
エクソン・モービルやロイヤル・ダッチ・シェルに投資しているあなたは、サウジアラムコに乗り換えるべきなのか?
業界最大のサウジアラムコが長期投資で安心か?
私はNOだと思います。
エクソン・モービル株への投資を続けた方がいい結果になるんだろうなって思っています。
ウォールストリートジャーナルはこんな報道をしています。
サウジアラムコのガバナンス、企業構造、財務情報の開示といった基本的な問題はまだ解決されていない。(以下省略)
このニュースを読んで、やっぱりサウジアラムコへの投資は控えるべきだと思いました。
少なくとも最初の数年は長期保有名柄としては安易に手を出さない方がいいと思います。
短期売買を狙うならOKだと思いますが。
企業構造 めっちゃ大事
株式会社の経営とは極端に抽象化して言えば、会社の経営資源をCEOがいかに株主利益を最大化するように配分するかということに尽きます。経営者の仕事とは株主利益最大化のための資源配分です。
バフェットは、企業経営者とは株主資本の管理者だと表現しています。
株主資本の管理って簡単に言いますが、そんな簡単なことではありません。
資本配分という仕事のスキルを持った人はそう多くはいないです。経験できる機会が普通は少ないから仕方ありません。
WSJはサウジアラムコの企業構造がまだまだ未熟だと言っています。(もちろん米国市場に上場するからには最低限は整備されているはずですが)
これは投資家として大問題です。特に長期投資家は気を付けるべきです。
企業構造がぜい弱ってことはCEOが暴走するリスクがあるということです。
CEOは会社のお金をほぼ自由に使える権限を持っていますが、必ずしも株主利益のためだけに使ってくれるとは限りません。
CEOは確かに高い報酬を貰って株主に雇われているから、金銭的に考えて株主に忠誠を誓っていて欲しいものです。
ですがね、、所詮人間です。自分のことが一番可愛いと思うのが人間です。
尊敬を集めたい、周りからチヤホヤされたい、快楽を味わいたいと思うのが人間ってもんです。
そんな自分の欲望を満たすために無駄なお金をガンガン使ってしまうことがあるかもしれません。
株主利益に適うのかどうか曖昧なお金の使い方もあるな~って思います。
例えば、出張でファーストクラスに乗る経営幹部。
幹部たちはこう言うでしょう「ファーストクラスに乗ることで渡航中も仕事に集中できて、それは究極的には会社の利益に貢献しているんだ」
う~ん、そう言われればそうかもしれない。
でも、ファーストクラスにわざわざ乗る必要はなくビジネスクラスでも十分生産的に仕事はできるとも思いますけど。ビジネスクラスにすら乗ったことがない私が言っても説得力ありませんけれど。。
最良の経営者は、ビジネス上の意思決定において株主の立場で考え、また株主の利益を常に心がけている経営者である。しかし一流と言われる経営者ですら、時として株主の損害の上に成り立つような利益を享受することもある。
(『バフェットからの手紙』より引用)
投資家として認識すべきことは、優秀な経営者であっても同じ人間だということです。一見住んでいる世界が異なる偉人のように思えても同じ人間なんです。
大体、人間なんて生まれ持った能力なんてぶっちゃけそんなに差はないと思っています。ましてや、生理的なというか感情レベルでは誰も変わらないと思います。
価値観や人生観は人それぞれでも、生理的な欲求は皆等しく持っていると思います。男は誰だってエロいです。ぱっと見クソ真面目な経営者も綺麗な女性を見たらムラムラすることだって当然あるでしょう。
だからこそ企業構造が大切なんです。だからこそ企業構造が脆弱なのは大問題なんです。
きちんと経営者を監視する取締役会や監査役が機能しなければ、株主利益が危険に晒されてしまいます。取締役と聞くと会社経営に知識があるCEOの補佐役とうイメージがあるかもしれませんが、もちろんそういう役割もあるでしょうがそれは本業ではありません。
取締役とはそのままですが取り締まるのです。誰をかって経営者をです。
経営者が暴走して株主に大損させるような取引をしてしまわないか、取り締まってチェックするのが取締役会の役割です。そういう牽制の効いた組織構造はメチャクチャ大切です。
私たち株式投資家って、基本的に自分の大切なお金を経営者に預けて後はその経営者の手腕を信じて待つしかありません。まあ他力本願ですよ、株式投資なんて。
経営者を信じることも確かに大切です。バフェットは「信頼の置ける経営陣がいる二、三の企業に投資資金を集中すべきである」と言っています。
なんですが。
人を信じることは大事なんですが、30年超もお金を預けるつもりなら経営者も途中で変わるし、あまり経営者個人の属性に頼らない方が良い面もあります。運悪く強欲な経営者が就任しても、その暴走を未然にストップすることができる仕組みを構築していることも大事なんです。
あなたのお金を10年以上も預けるのですよ?預けた先に強固な金庫がなくて札束が野ざらしになっていたら、不安でたまらなくなるでしょう?
組織構造が整備されていない企業に長期投資するっていうのは、公園のベンチの上に財布を置きっぱなしするようなものです。いつか盗まれますよ。運よく交番に届いているかもしれませんが、盗まれる可能性が高いでしょう。
株式投資とは、投資先企業に自分の財産を預託する行為です。
きちんと信用できる先に預けることが大切です。収益性や成長性は二の次です。
財務情報の開示 これもめっちゃ大事
財務情報の開示というのは上場企業にとって最も基本であり、重要なガバナンスです。
投資家であるあなたは、投資先企業の評価を数字で行うしかありません。それは企業が自身で作成した財務情報を見て判断するしかありません。
まあ上場するってことは、必ず会計監査をパスしているので最低限の品質は担保されてはいます。
財務情報という意味では、株主への報告数字(財務会計と呼ぶ)よりも経営者が使用する経営指標や数字の報告(管理会計と呼ぶ)の方がむしろ大切かもしれません。別にどちらが大事とか優劣があるわけではありませんが。
京セラの稲盛氏は、会計の数字とは飛行機のコクピットにある計器盤だと言っています。
計器盤が正しく表示されて、飛行機が今高度何万フィートをどの方角へ、どのくらいのスピードで進んでいるのかを、パイロットが適切に把握できて初めて安全な飛行ができるわけです。
いくらハーバードを卒業している優秀なCEOとはいえ、正しく作動する計器盤なくして経営はできません。正しい財務情報が迅速に作成・報告されることは強い経営の基本です。
財務情報の開示に不安が残る企業に長期投資するのは不安に思います。
長期投資=結婚 だから中身が大事
サウジアラムコのIPOは必ず実現すると思います。未だかつてない規模の手数料収入が投資銀行に舞い込むので彼らは必死です。サウジアラビア政府も原油に頼らない国家運営の資金としてIPOは必須です。サウジアラビアも欧米の投資銀行も何としてでも成功させたいと思っています。
IPOはもちろん上場規則をきちんと満たさないとダメです。
時価総額や利益規模の達成よりも、株式を上場して不特定多数の投資家に株を買わせるに足る組織構造が出来上がっているかという点の方が厳しいハードルです。
サウジアラムコは別に近年成長してきた中小企業というわけではありません。
だから、WSJがこんな報道をしているけれど組織構造や財務情報の開示が全くのダメダメってことはさすがにないと思います。
思いますが、詳しくはわかりません。
投資とは不確実な未来に賭けることです。どれだけ安定ディフェンシブ株だって将来のビジネスは不確実です。コカ・コーラやプロクター&ギャンブルだって将来のビジネスが100%安泰だとは言えません。
将来の不確実なビジネスに賭けるのはやむを得ないことです。しかし、不確実な組織構造にお金を賭けるのは止めたほうがいいです。コーポレートガバナンスは長期投資では最重要です。
組織構造の良し悪しは見た目ではなかなかわかりません。それは結局数字で判断するしかないんです。連続増配年数、自社株買い、もちろん利益指標も。
そういう判断指標がしっかり出揃ってから、サウジアラムコ株を買っても全く遅くはないと思います。
長期投資は税金面を考えても、基本は一度買ったら保有し続けて配当を再投資し続けることでリターンが高まります。
長期投資=結婚だと考えたら、やっぱり大事なのは見た目ではなく中身です。
確かに急に社内の誰よりも美人な女性が入社してきたら、男として手を出したくなる我慢できなくなる気持ちはわかりますが、結婚まで考えているなら大事なのは中身です。見た目ばっかり追いかけていては幸せにはなれないと思います。
サウジアラムコというビッグネームが上場すると、ついつい手を出したくなる気持ちが出てくるかもしれませんが、先ずはしっかりと相手の中身を知ることが先決です。
サウジアラムコは収益の大半をサウジアラビア政府に納めています。今回上場して一般に株を売り出すのは全体の5%に過ぎません。依然として大株主はサウジアラビア政府なわけです。
そのような状態で、どれだけガバナンスを整備して5%の一般株主の利益を考えた経営を行えるのか。
やはり不安は残ります。
エクソンモービルやシェブロン、ロイヤル・ダッチ・シェルに投資している人は、そのまま継続したほうがいいと思います。サウジアラムコへ浮気をするメリットはなさそうです。
見た目(利益規模や時価総額)も大事ですが、長期投資でより大切にすべきは中身(ガバナンス)です。
以前、企業価値評価を勉強していた時に、理論株価を算出するのに、まずは過去のキャシュフローの推移や株主還元の姿勢などを確認した上で、将来のキャシュフローを見積り、現在価値に割り引いていました。
サウジアラムコは政府の後ろだてがあり、上場するからにはそれなりの信用のある企業で安定したキャシュフローを生み出していくイメージはありますが、過去の株主還元の姿勢の裏付けがないのは長期投資の対象にはできないのですね。
以前は長期投資といえば安定した利益、キャシュフローばかりに注目していましたが、米国株投資をするようになって株主への姿勢にも注目するようになりました。
株主利益を意識した経営をしていれば、必然的に利益指標やキャッシュフロー指標も良くなるので、結局両者は密接に関連しているなと最近思います。
サウジアラムコは大株主(というか100%)が政府だというのがやはり心配だなと思うんですね。中国の大企業みたいなところがあるかもなと。
やはりサウジアラビア政府が100%株主ということは、財務報告もそんな法律に則って律儀にやっていないでしょうからね。
サウジアラムコのIPOは政治マターでもあるし多くの利害関係者がいるので、多少荒っぽい内部統制のままでも上場させるんだろうなって思います。
だから、我々個人投資家は相当慎重になった方がいいと思っていました。
という思いもあって記事にした次第です!
やっぱりエネルギーセクターなら過去の実績がしっかりあるXOMなどを買い続けるのがよいと思っています。
なるほど、サウジアラムコの大株主が政府というのはむしろ不安要素なのですね。
確かに中国つまり新興国でも政治絡みで無理やり上場させる的なことがありますね。
株主を意識した経営→キャシュフロー等の指標がよくなるのですね。
私は切り離して考えていたかもしれません。
「バフェットからの手紙」はうろ覚えですが、確かに株主の利益を強調している文面が多かった記憶があります。
そうですね100%政府が株主っていうのは、実家で暮らしいる大学生みたいなものです。
(別に実家暮らしの人を批判しているわけではありません。)
やはり、なんでも親がやってくれて楽な面は多いと思います。
それが株式を一般に公開するとは、社会に出て一人暮らしをするみたいなもんですよ。
やはり最初は大変だと思います。。色々と苦労があるものです。
「バフェットからの手紙」は細かい計算テクニックよりも確かに投資家としてあるべき姿勢みたいなことが書いてありますね。
「バフェットの銘柄選択術」とは対照的な本だと思っています。
どちらも勉強になる良い本です!
「バフェットからの手紙」の引用ありがとうございます。
私の頭のレベルでは「バフェットからの手紙」はどうも抽象的な表現でいまいち理解しづらいのですが、サウジアラムコを一例にして説明をして頂き、とてもわかりやすかったです。
先日チェルシーさんが『バフェットからの手紙』の話を上げて下さったので、久しぶり少し読んでいました。
そしたら、「お、ここのフレーズ今書こうとしている記事に使えんじゃん!」って思って引用しましたw。
なので、こちらそありがとうです。(^-^)
バフェットからの手紙、って難解ですよね。。
多分全部は理解できていないと思います。
また読んで勉強してみようと思います。
そう言えば、最近バフェットさんがいつものお手紙で相変わらずインデックス投資を称賛しておりました!
米国へのインデックス投資、間違いないと思います。
バフェットの最近の手紙で米国へのインデックス投資をすすめていましたね。
よくインデックス投資で世界への分散投資ということで新興国のインデックスにも投資する例がありますが、新興国はHiroさんが上記のコメントで述べているように信用できない部分があり長期投資にはふさわしくないですよね。
先進国(MSCIコクサイ)への投資も米国企業がそれらの先進国への売上があるので、結局は米国株の投資で十分ですね。
(確か以前、Hiroさんがこのことを述べていた記事があったと思うので探してみます)
私の場合は会社で確定拠出年金が強制で、米国株インデックスがなく消去法で先進国インデックスに毎月拠出しておりますが。
以前の100%定期預金よりはいいと思っております。
私も昔は新興国株式インデックスに投資していましたね。
懐かしい。
アジアの新興国こそ長期で儲かる投資先だと信じて疑っていませんでしたから。
私はインデックス投資から米国株投資へ切り替えたことより、新興国株式投資を止めれたことの方が意味あることだと思っています。
やはり、新興諸国の企業のガバナンスは米国企業のそれと比較にならないくらい劣っています。
成長性という見た目に騙されることなく、ガバナンスという中身を重視すべきことを知れたことは本当によかったです。
確かに昔、米国株投資だけいい!!みたいなこと言った記事ありましたね!
懐かしいわw。
それを覚えていて下さることに感謝です。
確定拠出は所得控除だから使わない手はありませんよね。
私は諸々の自分の価値観を照らして、使っていませんがイデコは基本推奨派です。
定期預金よりいいのは間違いないですね。
ううむ・・今回も、含蓄のある素晴らしい記事ですね。
長期投資を結婚と捉えて、だからこそ相手の中身を深く知る事が大事、という感覚も、示唆に富んでいて非常に強く頷けます。
サウジアラムコの例に関連して感じるのが、IPOで我先にと向かうのは、例えるなら渋谷にストナンしに行くようなものに見えてしまい、じっくり株の婚活をしたい派の僕は感覚的にパスなんですよね・・短期的に勝率が高いのは理解しているのですが。
「迷ったら業界シェアNo.1をとりあえず買っておけばいい」という感覚も良く理解出来ます。
ただ僕は疑り深いので、仮に業界シェアNo.1企業が潰れても冷静でいられるように「業界シェアNo.1とNo.2を併せて買っておこう」と考えるタイプです。笑
しかし、サウジアラムコの一般株主5%・・これは100%保有はナシですね。
僕もXOM、CVXのままで続投です^^
いえいえ、長期投資を結婚とたとえるなんて書きながらちょっと気恥ずかしかったくらいです(笑)。
他に良いたとえが思いつかなかったので、このまま突っ走りました。
なんかたとえとか加えないと堅苦しいだけの文章になるなと思い自分なりに色々考えるのですが、自分のあまりの引出しの狭さにテンション下がる日々です。。
株主利益は企業の成長ではなく、その成長が投資家の期待をどれほど超えるか、だとシーゲル先生は言っています。
そのためには、地味でも株主のためにコツコツ働いている会社に投資するのが一番だろうなって思っています。
サウジアラムコはいずれにしてもIPO直後に掴みにいくのは長期投資としては止めたほうがいいだろうなって思っています。
もちろん短期的利ザヤを抜きにいくなら大賛成ですが。
>ただ僕は疑り深いので、仮に業界シェアNo.1企業が潰れても冷静でいられるように「業界シェアNo.1とNo.2を併せて買っておこう」と考えるタイプです
なるほど、慎重派ですな(笑)。
そういうところ、長期投資向きですね。
やっぱり性格ってありますからね。
XOMとCVXはエネルギーセクターとしては堅いですね。
私もXOMは半永久保有でいく予定です!