米国株で長期投資をしている投資家の多くが保有していると思われるのがタバコ会社。
具体的には、フィリップ・モリス・インターナショナル(PM)やアルトリア・グループ(MO)、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BTI)などがあります。ちなみに、私はPMとMOの2銘柄でポートフォリオ全体の約15%を占めます。
なぜ私も含め、多くの米国株投資家がタバコ銘柄に投資しているのか?
それは、先ずは圧倒的なキャッシュフロー創出力というのが挙げられると思います。
PMやMO、BTIなどのキャッシュフローを見ると他の優良企業をも圧倒する儲かりっぷりが素人でもわかります。毎年毎年、潤沢なフリーCFを生み出しています。これは事業継続に設備投資が不要なためです。淡々とタバコを製造して売って、儲かった金を株主にそのまま還元しているというシンプルなキャッシュな流れです。
これはフィリップモリスの過去10年のキャッシュフローです。半端ない儲けっぷりです。そういったタバコビジネスに魅力を感じてタバコ会社に投資している人も多いのでは。私もそうです。
でももう一点、タバコ会社へ積極的に投資している理由があるかもしれません。
それは、、20世紀後半のタバコ銘柄の投資リターンがめちゃくちゃ高かったということです。米国株投資家の中にはジェレミー・シーゲル教授の『株式投資の未来』を読んだことがある人もいると思います。
『株式投資の未来』によれば、1957年~2003年のフィリップモリスの年率リターンは19.75%で全銘柄中トップした。同時期のS&P500のそれは10.85%でした。
1957年にPMに10万円投資していれば、2003年には約4.6億円になっています。S&P500に投資していれば約12百万円になっています。
S&P500というインデックスに投資しても約50年で資産が100倍ほどになっており、米国株インデックス投資の有効性が確認できます。一方で、フィリップモリスという最優秀銘柄だけに投資していれば、その米国株インデックスを遥かに超える投資リターンを得ることができました。
こういった事実(過去タバコ会社のフィリップモリスの投資リターンがべらぼうに優秀だったという事実)を根拠に、タバコ会社への投資ポーションを拡大していませんか?
果たしてその判断は正しいのでしょうか??
私は、タバコ会社はこれからも市場平均S&P500を超える投資リターンをもたらしてくれると考えています。ただ、20世紀後半と同じくらいの高リターンは厳しいだろうと思っています。最近読んだあるウォールストリートジャーナルの記事でその思いが強くなりました。
そのWSJの記事に言及しつつ私の意見を述べてみます。
フィリップモリスの投資リターンが高かったという過去の具体的事実のみを持って、それを将来に適用するのは危険だと思います。
「なぜ?」を考えるべきだと思います。
20世紀後半にフィリップモリスの長期株主リターンがあれほどまでに高かったのはなぜでしょうか?
それは一言で言うと、長期的に投資家の増益期待が低かったからです。
企業の増益率そのものではなく、それが市場の期待に対してどうだったかが投資リターンを左右します。
かつて、たばこ会社へのマーケットの期待はとても低かったようです。
フィリップモリス株の場合、だれもが買いを手控え、危険な製品「タバコ」の製造者として巨額の賠償金支払いを命じられたことから、破綻の恐れもあると噂された。人気が離散した結果、株価が下がり・・(以下省略)
『株式投資の未来』より引用
フィリップモリスに対する投資家に期待はとても低かったのです。よりファイナンス的に言えば、リスクプレミアムが高かったということです。タバコ会社の長期投資はリスクが高い投資だったのです。リスクに見合ったリターンだということです。
このように危険と思われていたフィリップモリスでしたが、実際の結果は市場の予想を覆す高収益を上げ続けました。それが高い株主リターンをもたらしました。
20世紀後半のフィリップモリスの株主リターンが圧倒的に高かったのは、常に危険危険と投資家に思われ続け株価が低く抑えられたにも関わらず、実態はタバコビジネスが膨大な利益を出し続けたからです。
翻って、現代はどうでしょうか?
タバコ会社は、上記の20世紀後半と同じ状況に置かれているのでしょうか?
確かにPMやMOなどはトップクラスに配当利回りが高い銘柄です。でも、マーケットからの期待が低い不人気ダメ銘柄なのでしょうか?
そんなことは全くありませんよね。
先日こんなウォールストリートジャーナルの記事がありました。
復活を遂げた米タバコ業界、黄金期再来か
この記事の中に、こんな興味深い文章がありました。WSJの記事をすべて引用するのはさすがにマナー違反だと思うので、一部抜粋します。(ホントはすべて引用して読んで欲しいくらい!!)
当時のタバコ業界の未来予想図と言えば、規制強化や喫煙人口の減少による売り上げの落ち込みだった。各州で巨額の賠償金を求めるタバコ訴訟が起こされ、一部タバコ会社の経営破たんも近いと思われていた。しかし、タバコ業界にとって事態はそこまで悪くならなかった・・・
ここは、『株式投資の未来』で書かれていることと同じです。
で、さらに具体的な指標の話に言及しています。
2000年当時、米国タバコ会社の株価収益率(PER)は生活必需品セクターの他業種の3分の1程度の水準だった。
そうなんですね!?
あなたも知っていました?
米国株投資歴たったの1年半しかない素人投資家Hiroは大変驚きました。会社の昼休みに、パンかじりながら「ふぇ~~、そうなんだ~~、知らんかったーー」って何度も何度もこの記事を読み返しました。
タバコ会社のPERってそんなに低かったんですね。知りませんでした。
今の主要なタバコ会社のPERはS&P500のそれ(現在約18倍)を超えていますよね。
各社のPER
・フィリップモリス(PM) 24倍
・アルトリアグループ(MO) 23倍
・ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BTI) 21倍
軒並み20倍を超えています。
PERが高いってことは、端的には投資家の期待が高いことが意味しています。増益期待が高いというだけでなく、将来のキャッシュの安定度が高いとも思われています。マーケットは今やフィリップモリスなどのタバコ会社を危険だとは認識していないようです。
そりゃ、あんなWSJの記事が載る位ですから。
WSJの記事は、タバコ会社の未来を礼賛するものです。未だに規制強化や税金といった脅威は残りますが、かつてに比べてタバコ会社の外部環境は改善しています。
このWSJの記事を読んで、投資家として何を考えるべきでしょうか?
「おお、タバコ業界調子いいみたいじゃん!!、よっしゃ俺が投資しているタバコ銘柄もドンドン活躍してくれそうだな!、もっともっと買い増そう!!」って思うべきでしょうか?
株式投資とはビジネスそのものであって、株主リターンの源泉が投資先企業が稼いだキャッシュなのは間違いないですから、タバコ会社株主のあなたにとってタバコ会社のビジネス環境が安定することが喜ばしいことでしょう。
しかし、、株式投資のリターンとは何かをもう少し抽象的に考えてみると、株式報酬とは結局リスクに対するご褒美だと言えます。リスクがあって、そのリスクをとったご褒美が株主リターンです。
人々が株式にリスクを感じなくなってPERがガンガン上がってしまえば、いくら儲かりまくっている企業へ投資したって株主リターンは少ないでしょう。
20世紀後半のタバコ会社は投資家のリスク認識が高かったからこそ、そのリスクを果敢に取った投資家はリスクに見合う高額な報酬を受け取ることができたのです。
それは正当な対価ですよ。
仕事でお金を儲けるってしんどくて大変なことです。仕事って人が嫌がることや面倒くさがることを代わりにやるから仕事なんです。自分でやるのは時間かかるし、危険だし面倒だから人はお金を払ってまで製品やサービスを購入するわけですよね。
リスクが高いと思わているビジネスであっても必ずそのリスクの担い手は必要です。それが資本主義のルールです。本当に誰もリスクを取ろうとしなかったら、政府や中央銀行が乗り出してきます。それが起こったのがリーマンショックでした。
20世紀後半に、タバコ会社の株を持ち続けるって相対的に価値ある”仕事”だったのです。高いリスクを背負い続けるという仕事です。
でも今は違うようです。
タバコ会社には黄金期が到来しつつあるようです。それは投資家のタバコ銘柄へのリスク認識を引き下げます。それはファイナンス的に言えばPERを押し上げます。現にタバコ会社のPERは軒並み20倍を超えていましたよね。
私は、フィリップモリスなどのタバコ会社はこれからも卓越した株主リターンをもたらしてくれると信じています。S&P500平均を超えるトータルリターンを達成するだろうと予想しています。
それは、永続してキャッシュを創出する能力自体は健在だし、PERも市場平均を超えているとはいえ20倍台前半で健全な範囲内だと思っているからです。
ただし、『株式投資の未来』で書かれたフィリップモリスの大活躍が、21世紀にも再現するかと言われればそれには懐疑的です。
『株式投資の未来』を読んだ投資家の中には、「おおPMって凄えじゃん!」って感動して銘柄分散を怠ってフィリップモリスなどのタバコ会社に集中投資している人がいるかもしれません。
それは止めた方がいいと思います。
書籍に書かれている具体的な事実を無思考に解釈してはいけないと思います。
かつてフィリップモリスへの投資リターンがなぜ高かったのか、その背景を理解すれば今のタバコ会社に当時と同じ株主リターンを期待するのは無理難題だってことがわかります。
じゃあ何に投資すればいいの!?って聞かれも、、素人の私なんかには全くわかりません(笑)。
米国優良株を適度に分散して、あるいはETFを活用して、コツコツ投資を続けていくしかないとしか言えません。
となるとPerの低いIBM?最近はVZも下がってきましたね。ちょっとキャッシュフロー落ちてるみたいで心配ですが。
PERが高いこと自体はそれほど心配していません。
PMやMOなどはPERが市場平均を超えていて然るべきだと思っています。
なんせあのキャッシュフローですから。
とは言え30倍とかになれば話は別ですが。
しかし、PERが高いってことは過去程のハイリターンは望めないだろうなとは思っています。
確かにIBMはPERが低めで安心して投資できます。
PERも一つの判断指標として有効ですが、どう使うべきか迷います。
非常に参考になる数値に違いはありませんが。
PERって1期間の利益で株価を測ろうとする点に無理があるなって思っています。
PERについて思うところはいつか記事にしたいな~と思います。
VZは魅力的な水準まで利回り上がってきましたね。
VZとか、先日別の読者様からコメント頂いたQCOMとかは、バリュエーション的には結構魅力的だな~と感じております。
VZは2016の会計上のノイズが嫌気されてるとか?この辺はhiroさんの専門分野ですかね!
VZの決算は会計的要因ではなく、純粋に携帯電話契約数が減少したためだと理解してます。
ベライゾンは米国内でのビジネスですし、どうしても今後も大きな成長は期待できません。
なので、今の低いPERや高い配当利回りも妥当であって、それほど割安とまでは思っていませんね。
ただ幾分か魅力的なバリュエーションに見える程度です。
投資するにしてもほどほどに抑えます。
何買うか今めっちゃ悩んでますー。
北のミサイル発射速報を横目にマーケットの様子を伺ったら、MOが10%下落してて目を疑いました。瞬間的には20%近く下がってたようです。
どうやら、FDAアメリカ食品医薬品局が、ニコチン含有量低減を目指す、と表明して、タバコ株が総崩れしているようです。
自分の保有銘柄がここまで急落したのは久し振りです、、、
ちょうど次回がMOの順番でしたが(今は予算不足)、悩ましいですね。
開発or製造工程見直しで設備投資負担増が重しになるのか?、単に買い場が来たと喜ぶべきか。
まあとりあえず買うと思いますがw、今後も業界の動向には注目ですね。
おはようございます!
私も一瞬目を疑いました。
瞬間的には20%も下落していたいのですね。
私が見た時も16%ほど下落していて、システムエラーかと最初は思いました。
アメリカのFDAはかなり強い権限持っていますからね。
私は仕事を通じて、FDAの怖さをまざまざと見せつけられました。
FDAのせいで、減損したくらいですから。
FDAの対応コストがいくら発生しているのか、今後いくら発生する見込みなのか投資家に説明するのが大変で・・。
私も自分の保有銘柄が1日でここまで下落したのは初体験です。
MOへは100万円ほど投資しているので、1日で10万円ほど吹き飛んだ計算です。
これが株式投資というものですね。
自分がビジネスリスクを取っているんだと実感する瞬間です。
MOへの投資判断は迷いますよね。
個人的には、もう少し情報が出てくるを待ちたいなとは思っています。
具体的な金額はわかりませんが、いくらかFDA対応費用が発生するのは間違いないと思います。
タバコの販売にすぐに悪影響があるとは思えません。
10%下落はちょっと行き過ぎなんじゃないの?っていうのが個人的感想です。
ただ、素人の私なんかよりもマーケットの方が賢いのは言うまでもありませんが。
慎重かつ大胆にリスクテイクしていきたいですね~。