マイホームという「夢」のために数千万円の巨大借金を背負うなんて、ともすると「人生の墓場」なんて思われる方もいらっしゃるかもしれません。

実は私も特に20代の頃はそういう考えを持っていました。終身雇用が崩壊した現代において、勤め人の労働年数とさほど変わらない返済期間の借金を背負うなんて正気の沙汰ではないと。

しかし、色々ありまして、考えが変わりました。考えが変わった数ヶ月後には7千万円という年収の何倍ものローンを背負っていましたw。納得して決めたら即行動派です、意外と。

ネットニュースでは、「湾岸タワマンを35年ローンで買った夫婦の末路・・」といった感じのタイトルの記事をよく見かけませんか。ホントに「末路」というワードが好きだなあと思います。。

ああいうのは煽り記事に過ぎないと私は勝手に判断しています。

きっとPV数は稼げるのでしょう。人の不安を煽るコンテンツ、他人の不幸を紹介して安心感を覚えさせるコンテンツ、こういうのはクリックされやすいと推測します。

私は住宅ローンはさほど恐れる必要はないと思っています。数千万円という日常生活離れした金額、桁数に身震いしがちかもしれませんが、ちょっと冷静になって考えれば恐るるに足りないものだとわかります。

経済取引は常に貸借両方を考える癖を

簿記では借方、貸方という概念があります。借方が左側、貸方が右側です。バランスシートで言うと借方が資産、貸方が負債・純資産となります。

会計仕訳は必ず借方と貸方が一致するようになっており、これを貸借一致の原則なんて言ったりもします。

これは会計を職としない人でもぜひ抑えておきたいところです。企業のみならず家計でも貸借一致の原則は成り立っています。

資産だけを考えるのではなく、その相手勘定としての負債・純資産は何のかを考えないといけません。

まあ、これは大抵無意識にできるものです。

友達から1万円を借りたら現金という資産が増えますが、当然その見合いとして友達へお金を返す義務を負債として認識しますよね。

しかし、こと住宅ローンの話になると負債にばかり目が行きがちです。巨額の借金ですから、それも仕方ないとは思いますが、資産側の経済性にも意識を向けることでローンの恐怖感は幾分消え去っていきます。

7000万円のローンという負債があっても、それで購入した自宅不動産の価値が同額7000万円あれば、実質債務はゼロと言えます。

私は最近2057年完済予定の住宅ローン返済が始まったのですが、多分そこまで払い続けることはありません。10年後か20年後か知らないけど、いずれ現居を売却してローンを完済することになると思います。

少なくともそうできる状態(残債割れしない)の物件を選んだつもりです。

消費者金融で100万円借りて散財したら、借金という負債だけが残ることになります(しかも高利)。見合いの資産はないわけなので、労働で返すしかありません。

見合いの資産がある1億円の低利の借金よりも、見合いの資産がない高利の100万円の借金の方がよっぽど怖いと感じます。

会計の世界では資産を流動資産と固定資産に分けます。流動資産は原則として1年以内に資金化できるもの、固定資産は資金化に1年超かかるものを指します。

特に都心部は住宅の流動性も高いですし(特にマンションは)、自宅不動産は固定資産というよりは流動資産に近いかもしれません。売って資金化しようと思えば、1年以内には実現するという合理的な期待が持てるからです。

ローンが怖いと感じる人ほど、ローンの金額自体を抑えるというよりは、見合いの自宅不動産の資産価値を重視した方が結果として安心できると思います。もちろん、月々の余裕ある資金繰りも重要ですが。

4000万円のローンで買ったマンションが3000万円に値下がりしたら実質債務は1000万円です。一方で、8000万円のローンで買ったマンションが9000万円に値上がりしたら実質債務はゼロどころか利益がでます。

仮に前者のケースとて実質債務は住宅ローン額4000万円ではなく、自宅価値を差っ引いた1000万円程度なわけです。しかも低利で返済期間も長い。

資産価値の程度は物件に依存しますが、とにかく自宅の経済価値を住宅ローンから差し引くことです。それが実質債務です。実質で見れば、住宅ローンは大した額にならないことが多いのではないでしょうか。

金利はリスクを反映している

日本の住宅ローン金利はとても低いです。固定は最近少しずつ上がってきましたが、それでも全期間固定で1%台です。変動金利は未だに0.5%前後で借りれます。もちろん債務者の属性によりますが。

銀行は利益を追求する営利機関です。ボランティアでお金を貸しているわけではありません。当たり前です。

なぜ住宅ローンはこれほど金利が低いのか?

低利でも事業として成立するからです。

なぜ、低利でも事業として成立するのか?

そもそも日本が低金利だからというのもありますが、一番の理由は住宅ローンというビジネスが安全だからです。デフォルトが極めて少ないからこそ、低利で融資しても相応の収益になると銀行は判断できます。

つまり、ローン破産を煽るネット記事なんてものは、一部のレアケースを大袈裟に取り上げているだけということです。

実際ローン返済が始まって感じることは、賃貸の家賃支払と感覚はさほど変わらないということです。

ローン審査に通るような人は、きっと賃貸の家賃も滞納してない人でしょう。住居費は主要な生活費として給料から確保されますから、安定したサラリーがある人は銀行から見ればすごく安全です。滞納リスクは低いと見ています。

リスクが低いと要求プレミアムも小さくなる。これが経済の原則ですね。ローリスク・ローリターンということです。

住宅ローンが安全な金融商品であることは、超低金利という形で銀行が私たちに教えてくれています。

特に初めてローンを組む時は、「本当にこんな年収の何倍もの借金を背負って大丈夫なのか?」と不安になるかもしれません。

が、もし本当に不安があれば銀行がこんな低利でお金を貸してくれるはずはありません。

そもそも借金でリスクを取っているのは、借り手というよりは貸し手です。貸し手こそ「この人、本当に返済してくれるんだろうか?」と不安になります。経営責任もあるので、しっかり厳密に審査をします。

1%未満の金利で銀行からお金を借りることができたということは、貸倒リスクが極めて低いと専門家に判断されたということです。