会計監査3年、上場企業経理10年とかれこれ会計関連の仕事を13年やってきました。

「仕事できるな~、センスあるな~」と思う人と一緒に仕事ができることもあれば、「この人ちょっとな~、なんかいまいちだな~」と思う人もいました(自分のことは棚に上げて言ってます)。

会計関連の仕事でセンスを感じる人の特徴は大きく2つあります。この2つを兼ね備えている人ができる人って感じです。

一つが数字のセンスがあること。もう一つが言語化能力が高いことです。

数字のセンスがあるとは仮説思考

数字のセンスがあるというのはどういうことかというと、ぱっと仕訳や財務データを見たときに「ん、何かここおかしいな?」という直感が鋭いということです。

こういう人過去にいました。PLとBSを渡してほんの数分見ただけで、「ここの数字なんか違和感あるけど大丈夫?」と言ってくる上司。

今の職場というより、前職の監査法人にこのタイプのマネージャーがいました。だいたい直感は当たっていて実際に何らか問題が見つかることも多かったです。凄いなあと思いながら見てました。

こういう人の脳内を一度覗いてみたいものです。

思うに、きっと自分の中で「あるべき数字」が出来上がってるんですね。それと無意識に比較して、大きな乖離があると違和感を察知できようです。

比較というのキーワードで、数字の分析とは要は比較です。何とも比較しないで分析は不可能です。前月の数字、予算の数字など何らかの数字と比較することで分析が成立し、異常値なりを発見することができます。

前月の人件費が10億円なのに、今月のそれが20億円だと明らかにおかしいですよね。人件費は固定費ですから、月によってそれほど変わるものではありません。ボーナスはと思われるかもしれませんが、それも普通は月次引当をしているものです。

なんの比較情報も提供していないのに、ただ数字を見ただけで違和感を感じることができるのは、脳内に比較情報があるからです。これくらいの範疇だと妥当かな、という仮説を予め立てているんです。

何とも比較してないように見えて、実際はしっかり比較している(=分析している)。

そのスキルは経験で身につく面もありますが、やっぱり普段から意識する努力なのかなと思います。ただ漫然と仕事をしているだけだとなかなか身に付かないです。

為替の分析とかもそうです。最近のドル高、人民元高を踏まえるとこういう数字の出方をするはずだよね、という大まかな仮説を持っている人が強いです。

経理の肝は計算能力ではなく言語化能力

できる経理マンと言うと会計理論に詳しく、エクセル堪能で、計算が早い人というイメージがあるかもしれません。

もちろんそこも重要なのですが、もっとも必要とされる能力は言語化能力だと思います。

アカウンティングとは「説明する」という意味の英語です。会計とは業績を説明するために生まれたツールです。数字だけ並べても、きちんと説明できないのでは意味はないです。

頭いい人って数字を見せたときに「これって要するに〇〇ってことだよね」的な発言をよくします。「これは要するに先月のA工場の操業度悪化の影響が今月コスト増として表れているということだね」的な。

逆に微妙な人って、つらつらと会計的な話ばかりする傾向があります。「今月この仕訳が入って、そして前年度の逆仕訳が入って、そしてこういう数字になってます・・」的な。で結局どういうことなの?って突っ込みたくなります。

あと、数字を言葉で説明する時って、どれくらい細かく伝えるかのバランス感覚も求められます。

めちゃくちゃ忙しい事業部トップや役員クラスに業績の説明をする時に、あまりに細かい情報をインプットしても消化不良になります。偉い人も所詮同じ人間で、脳みそのキャパはそう変わりません。

敢えて言わないことも重要ということです。説明をサボるというわけでは決してなく、この立場の人にここまで細かいことを言ってしまうと逆に混乱するな、やぶへびになるな、という感覚です。

かといって、あまりに説明を端折り過ぎるのまずいです。敢えて言わなかっただけなのに、後から「それは経理から聞いてないけど!」って文句を言われるのも癪です。

自分の中で腑に落ちるまで数字を言語化した上で、それをどう伝えるか相手の立場を踏まえてコントロールする。この繊細な言語化の能力が高い人ができる経理マンだなあと感じます。

別に経理に限った話でもないですが、仕事って結局のところコミュニケーションがすべてだなと最近よく思います。言葉です。言い方も大事。

この辺のソフトスキルってどうやって鍛えればいいのかなってよく考えます。てか、本来学生時代に鍛えておくべきところなのかな。ということは、基本ぼっちだった私は・・(以下略)。