不確実性は株価を下げる

「頭と尻尾はくれてやれ」という言葉がありますが、その通りだと思います。特に尻尾はくれたやった方がいいですよ。新型コロナウイルスの感染拡大で世界的に外出規制、自宅待機となり経済活動が縮小しています。

当然に株価も暴落。ここ最近少しづつ持ち直しの兆しも見えます。感染者数は減少傾向で、昨夜のNYダウは7.7%も上昇しました。しかし、安心はできません。4月に2番底を試すと主張する専門家もいます。まあ、未来の相場なんて誰にもわかりませんよ。

私たちサラリーマン投資家としては、いつも通り淡々と投資を続けるのが一般解なのかなあと思います。私は例月よりも投資額を増やしてはいるものの、毎月初に買い付けるという基本スタンスは変えていません。「もう底だろ!」と有り金をすべてぶっ込みたくなる時もありますが、ぐっと我慢しています。

なぜ株が売られているのか?

経済活動が一時停止して企業の収益が落ちているからです。利益が下がれば、それに伴って株価も下がるのは当然です。でも、それだけじゃないです。いつ経済活動が元通りになるかわからないという不確実性が株価低迷を長引かせます。

不確実性が増すとリスク認識が上がり、割引率が上昇する結果将来キャッシュフローの現在価値が小さくなり株価が下がる。なんてファイナンス論のテキストには書いてそうな堅苦しいことを考えずに、自分の実生活に置き換えてみるとわかりやすいです。

狭い自宅ですが、リモートワークのためにデスクと椅子を買おうか迷ってます。ニトリとかの通販サイトを見ると、結構なお値段なので買うか悩みます。お金の問題もありますが、ただでさえ狭い居住スペースに追加で家具を置くことに抵抗があります。もっと広い家に引っ越すのも選択肢です。

でも、こういった判断を今はまだ下せません。なぜなら、会社のリモートワークがいつまで続くか不透明だからです。ついに政府が緊急事態宣言を出しましたね。その期間中(確か5月6日まで)はさすがに、原則リモートという会社の方針は変わらないはず。じゃあ、その後は。コロナがある程度収束して、普段通りの生活が戻った後はどうなのか。これをきっかけに事務職はリモートワークでいいよね!って流れになるのか。それとも、コロナ以前のように普通に会社に出社するのか。そしていつかコロナウイルスは忘却の彼方へ消え去るのか。

それはわからない。わからないから、支出できません。住環境に投資したいけど、もうちょっと待って様子を見たいという気持ちが強いです。

そんな感じで不確実性が高いとお金を出し渋っちゃいます。それは企業の経営者や投資家も一緒です。サプライチェーンが混乱している中で新規工場の建設はやりづらいでしょう。ソーシャルディスタンスが決算にどう影響するか不透明な中、株を買うのは抵抗があるでしょう。

株を買いたい人が減ると株価は下がります。不確実性は株価を押し下げます。

不確実性はボラティリティを高める。割安株は暗闇の中で拾うしかない。

また、不確実性は株価のボラティリティを高めます。平時なら、コカ・コーラのEPSのコンセンサスは1.9ドル~2.1ドルの間とかなのに、今みたいな非常時は上は2.1ドル下は1.5ドルといった感じで、投資家やアナリストによってEPS予想に大きな差が出ます。いつでも楽観論者、悲観論者それぞれいるものですが、両者の予想の差が大きくなると必然相場のボラティリティは高まります。

株価の底値はそんな不確実性がマックスの時に訪れるものです(それも後から振り返ってわかるだけ)。新型コロナウイルスの感染者数が有意に抑制されたことが確認され、ワクチンや治療薬の開発まで終えてから株を買うのがそりゃ安全に決まってます。でも、その頃には株価はすでに最高値を更新しているかもしれません。少なくとも割安な状態にはないでしょう。

株式報酬とはリスクテイクのご褒美です。誰かが社会のリスク資本を保有しないといけません。企業収益が危ぶまれている時に喜んでエクイティを持ちたいと思う人は普通はいません。損するのが怖いから。でもそうやって周りがリスクを嫌っているからこそ、資産価格は下がり株式の期待リターンは上昇します。

周りが怯えている時は楽観と悲観が入り混じるので株価の変動も大きくなります。株を買った翌日に5%下がるとか、ここ1カ月はそんなの当たり前ですよね。3%くらいの変動だと軽く感じるくらいですw。トンネルの出口が見えない時は株価の変動が大きくなります。あと300メートルで出口だという人、いや出口まであと3キロはあるぞという人、色んな情報が錯綜するからです。だから、底値で買うなんて先ず無理です。

トンネルの先に出口の明かりが見え始めた頃は、恐らくもう底値は通り過ぎています。割安株は真っ暗闇の中で手探りで拾うしかありません。相対的に情報量で劣る個人投資家は特にそうです。

今このタイミングでリスクをとるかどうかは各投資家それぞれの判断次第です。万人にとっての正解なんてありません。私はリスクを取ります。ただし、底値を拾える自信はさらさらありません。過去の経験から投資タイミングは下手くそだとわかってますしw。投資した翌日に5%、7%と急落するリスクはあると承知しています。それでも株を買います。いましっかりリスクを取って、将来配当をざっくざく貰いたいからです。

平時よりも割安な値段で株を仕込みたいと思うなら、平時よりも高いボラティリティは受け入れるしかありません。それが嫌なら相場が落ち着くまで投資を控えることです。要はどれくらいリスクを取って金儲けするかです。

山崎元さんは「人的資本のあるサラリーマンは思った以上に金融資本でリスクを取れる」と著書で語っていましたが、まさにそれを実感しています。毎月のサラリーがあるだけでかなり気持ちに余裕が生まれます。保有資産の時価下落はしんどいですが、まだ追加でリスクを取れる元気(と資金)は残っています。