橘玲さんは著書『幸福の「資本」論』の中で、人生の幸福の条件として以下の3つの資本があると言っています。

・金融資本
・人的資本
・社会資本

大きくお金と人間関係の二つに分けられるのかなあと思います。

金融資本を蓄積する目的はお金のみ。金融投資にお金以外(やりがいなど)を求めることは普通はありません。人的資本は給料を稼ぐ力のことだから、当然お金に関連しますが、職場で人間関係も構築されます。あと、仕事を通じて自己実現というか生き甲斐を見出すこともできます。社会資本とは仕事の利害関係に基づかない人間関係です。家族、恋人、親友などです。

・金融資本:金
・人的資本:金、人間関係、自己実現
・社会資本:人間関係(家族、恋人、友人)

橘氏は「幸福は社会資本からしか生まれない」と言っています。まあ、概ね同意です。社会資本だけでなく、人的資本も幸福をもたらす資本だと私は思いますけどね。仕事をして社会の役に立つことで幸せを感じることもできると思いますから。サラリーマンに限らず、副業や自分で立ち上げたビジネスも人的資本です。

一つ確信していることは、金融資本から幸福は生まれないということです。

とは言え、金がないと生活できません。毎月カツカツでは心穏やかに過ごせません。金融資本が十分にないと人的資本、社会資本を蓄積する余裕が生まれません。だからこそ、先ずは金融資本です。金優先。できれば20代のなるべく早いうちに、ある程度の金融資本を構築した方が良いと思います。

明確な基準なんてありませんが、そんな何千万円も要らないですよ。う~ん、たとえば300万円とか500万円とか、それくらいあると金の塊って感じがしますね。

ただし、それだけのお金があっても預金のままならそれは金融資本とは言えません。少なくとも、私が定義する「資本」には該当しません。預金ではお金が働いてくれませんから。お金をマーケットで働かせて初めて金融資本と言えます。具体的には株式や債券、REITなどです。

なぜ若い内に金融資本を優先して作り上げた方がいいのか?

経済が安定しないと、生きるのに精一杯でお金以外のことを考える余裕が生まれないというのは先に言った通りです。それ以外の重要な理由として、ある程度の金融資本を構築すれば後はほったらかしでも勝手に増殖してくれるというのがあります。しかも複利で。S&P500指数などの株式は長期で時価が増えていくと期待できます。やることと言えば、配当を定期的に再投資するくらいです。

一度仕組みを作ってしまうことが大切です。加速して離陸するまでがもっともエネルギーを使います。途中でばてて倒れそうになることもありますが、頑張って離陸すれば後は惰性でも飛行できます。どのくらいの速度で離陸するかは自分で決めてOKです。

金融資本から幸福は生まれないけど、お金に余裕がないと何事も楽しめない、というか楽しむ余裕を持てないです。衣食足りて礼節を知るという言葉もあります。お金は幸福の源泉ではないからこそ、割り切ってさっさとある程度貯めてしまった方がいいと思います。養う家族がいない20代の若い時がチャンスです。正社員でも最初は給料は安いでしょうが、ボロアパートや実家暮らしなどで家賃を抑えればそこそこ金は余るはずです。

金融資本、人的資本、社会資本はどれか一つだけでなく、並行して蓄積していくことも可能です。金融資本を積み上げる必要があるからって、他の2つを完全に犠牲にする必要はありません。ただ、若い時は金融資本を優先させた方が人生を楽しめるのでは思う次第です。もちろん、人それぞれですけどね。これはあくまで私の考えです。

とまあ、なんか偉そうに書きましたが、これも結果論かな。自分の行動を正当化しているだけかも。自分が20代だった時、ここまで長期的、戦略的に考えて金融資本を蓄積していたわけではありませんから。社会資本という概念も頭になかったですし。でも、なんか無意識的に「今はお金を貯めておいた方がいいはず」と思っていた気がします。本能的な行動でした。それで良かったと思っています。たられば言い出すとキリがありませんが、今20代に戻ってもそんなに行動は変わらないと思います。

人的資本と社会資本を充実させて幸福な人生を送るためにも、もっとも重要度の低い金融資本をさっさと作り上げてしまった方がいい、というのが今の私の考えです。