「ダウの犬」投資戦略の過去の実績

「ダウの犬」という投資手法があります。NYダウ30種の中から配当利回り上位10銘柄を年末に抽出して、毎年機械的に銘柄を入れ替えていく方法です。

NYダウ30銘柄の時点ですでに優良大企業に厳選されているわけですが、その中からさらに10銘柄を選ぶわけでまさに選抜エリート集団です。サッカー日本代表に選ばれる時点でもの凄いことですが、その中でスタメンに抜擢されるのはさらにハードルが高いことです。

ただ「ダウの犬」に選ばれることはあまり名誉あることとは言えません。配当利回りが高いということは利益成長が成熟しているか、もしくは業績が芳しくなく株価が下がっているケースのどちらかなケースが多いです。NYダウ30銘柄の中でも投資家の業績見通しが悪化している銘柄が「ダウの犬」に選ばれがちです。

配当利回りが高い=投資リターンが高い、と一概に言えるわけではありません。実際に2017年の「ダウの犬」はNYダウを5%もアンダーパフォームしました。ただ、21世紀を振り返ると「ダウの犬」投資法はぼちぼち良好なパフォーマンスを残しています。

以下は2001年から2017年までの「ダウの犬」とNYダウのリターンの比較表です。

  ダウの犬 NYダウ 判定
2001年 -5% -5% 引き分け
2002年 -11% -15% 勝ち
2003年 33% 28% 勝ち
2004年 7% 5% 勝ち
2005年 -5% 2% 負け
2006年 32% 19% 勝ち
2007年 2% 9% 負け
2008年 -39% -32% 負け
2009年 18% 23% 負け
2010年 21% 14% 勝ち
2011年 15% 8% 勝ち
2012年 10% 10% 引き分け
2013年 35% 30% 勝ち
2014年 11% 10% 勝ち
2015年 3% 0% 勝ち
2016年 17% 14% 勝ち
2017年 23% 28% 負け

2001年~2017年の中で「ダウの犬」は10勝4敗2引き分けでした。NYダウという優秀なインデックスに対して、16回の内12回は勝利or引き分けでした。

 

2018年「ダウの犬」10銘柄のご紹介

2017年末時点のNYダウ構成銘柄を配当利回りが高い順に並べてみます。

ティッカー 企業名称 配当利回り
1 VZ ベライゾン・コミュニケーションズ 4.5%
2 IBM IBM 3.9%
3 PFE ファイザー 3.8%
4 XOM エクソンモービル 3.7%
5 CVX シェブロン 3.5%
6 MRK メルク 3.4%
7 KO コカ・コーラ 3.2%
8 CSCO シスコシステムズ 3.0%
9 PG プロクター&ギャンブル 3.0%
10 GE ゼネラル・エレクトリック 2.8%
11 JNJ ジョンソン&ジョンソン 2.4%
12 INTC インテル 2.4%
13 MCD マクドナルド 2.4%
14 BA ボーイング 2.3%
15 UTX ユナイテッド・テクノロジーズ 2.2%
16 DWDP ダウ・デュポン 2.1%
17 TRV トラベラーズ・カンパニーズ 2.1%
18 JPM JPモルガン・チェース 2.1%
19 WMT ウォルマート 2.1%
20 MMM スリーエム 2.0%
21 CAT キャタピラー 2.0%
22 MSFT マイクロソフト 2.0%
23 HD ホーム・デポ 1.9%
24 DIS ウォルトディズニー 1.6%
25 AAPL アップル 1.5%
26 AXP アメリカン・エキスプレス 1.4%
27 UNH ユナイテッド・ヘルス 1.4%
28 NKE ナイキ 1.3%
29 GS ゴールドマン・サックス 1.2%
30 V ビザ 0.7%

赤色にした上位10銘柄が2018年の「ダウの犬」です。

2017年と銘柄はあまり変わっていません。2017年「ダウの犬」で2018年から抜けたのはボーイング(BA)とキャタピラー(CAT)ですね。両社とも昨年大きく株価を伸ばしました。

気になる銘柄について少しコメントします。

1位のベライゾンは成長が鈍化している通信銘柄で配当利回りは常時4%以上あり「ダウの犬」の常連です。2018年は通信企業のパフォーマンスには期待できるかもしれません。2017年は携帯電話サービス料金の値下がり圧力や業界再編の不透明感を嫌気して、ベライゾンは売られがちでした。しかし、今年は減税やネット中立性の廃止という支援材料があります。年末にかけてかなり株価は戻しましたが、それでも予想PER14倍程度でS&P500平均よりかなり低いです。

2位のIBMは今後の決算内容を要チェックですね。IBMワトソンをプラットフォームとするコグニティブ・ビジネスやクラウド事業などIBMが戦略的必須事業(strategic imperatives)と呼ぶ領域が、今後どれだけ成長するかウォール街は注目しています。戦略的必須事業はレガシー事業に比べて利益率が高く、うまく成長軌道に乗ればIBMの株価は大きく上昇するかもしれません。

4位と5位にエネルギー大手のエクソンモービルとシェブロンがいます。原油需要が今後20~30年レベルで消えるとは思えません。石油大手はコスト削減努力を継続しながら今後も地道に稼ぎ続けるはずです。エネルギー企業は原油価格が下落して収益が悪化しても、下手に本業以外に手を出さずに(出せない)コスト削減努力をする点に好感を持っています。資本が浪費されるリスクが小さいです。個人的な直感ですが、エネルギー銘柄は”買い”だと思っています。私はエクソンと油田サービスのシュルンベルジェ(SLB)の2社への投資を2018年以降も継続していくつもりです。

10位には2017年話題をさらったゼネラル・エレクトリック(GE)がランクインしました。昨年、配当を50%カットしましたが、株価も下がっているため配当利回りは2.8%となっています。ジョン・フラナリー新CEOは複雑な事業ポートフォリオを再編し、航空・電力・ヘルスケアの3事業にリソースを集中させる方針です。

最後に2018年「ダウの犬」10銘柄を再掲しておきますね。

ティッカー 企業名称 配当利回り
VZ ベライゾン・コミュニケーションズ 4.5%
IBM IBM 3.9%
PFE ファイザー 3.8%
XOM エクソンモービル 3.7%
CVX シェブロン 3.5%
MRK メルク 3.4%
KO コカ・コーラ 3.2%
CSCO シスコシステムズ 3.0%
PG プロクター&ギャンブル 3.0%
GE ゼネラル・エレクトリック 2.8%