2001年~2016年 10勝3敗2引き分け

「ダウの犬」と呼ばれる有名な投資戦略があります。NYダウ構成銘柄30のうち、配当利回り上位10銘柄を毎年抽出して機械的に銘柄入替していく投資法です。

配当利回りが高い銘柄は株価が抑えられてバリュエーションが割安になっている可能性が高いため、それらの銘柄に投資することで高いリターンが期待できるという発想です。配当利回りが高いからと言って必ずしも割安と言えるわけではないですが、過去の「ダウの犬」戦略の成績はまあまあ良好です。

  ダウの犬 NYダウ 判定
2001年 -5% -5% 引き分け
2002年 -11% -15% 勝ち
2003年 33% 28% 勝ち
2004年 7% 5% 勝ち
2005年 -5% 2% 負け
2006年 32% 19% 勝ち
2007年 2% 9% 負け
2008年 -39% -32% 負け
2009年 18% 23% 負け
2010年 21% 14% 勝ち
2011年 15% 8% 勝ち
2012年 10% 10% 引き分け
2013年 35% 30% 勝ち
2014年 11% 10% 勝ち
2015年 3% 0% 勝ち
2016年 17% 14% 勝ち

2001年から2016年まで10勝3敗2引き分けでした。機械的な投資方法としては優秀だと思います。

 

2017年は「ダウの犬」の負け・・

さて、帰省した福岡で姪っ子と戯れつつ、基本的にグダグダ暇しております。そう言えば2017年の「ダウの犬」投資の成績はどうだったのかな~と気になりまして、早速調べてみました。

2017年の「ダウの犬」10種は以下でした。

ティッカー 企業名称
VZ ベライゾン・コミュニケーションズ
PFE ファイザー
CVX シェブロン
BA ボーイング
CSCO シスコシステムズ
KO コカ・コーラ
IBM IBM
XOM エクソンモービル
CAT キャタピラー
MRK メルク

これらの銘柄の成績はどうだったのでしょうか?

2017年のNYダウのトータルリターンは28.0%とかなりの好成績でした。S&P500より高いです。「ダウの犬」銘柄とNYダウのリターンとを比較しました。

ティッカー 企業名称 2017年トータルリターン NYダウとの比較
VZ ベライゾン・コミュニケーションズ 3.5% -24.6%
PFE ファイザー 15.5% -12.6%
CVX シェブロン 10.0% -18.1%
BA ボーイング 93.1% 65.0%
CSCO シスコシステムズ 30.5% 2.4%
KO コカ・コーラ 14.2% -13.9%
IBM IBM -4.0% -32.1%
XOM エクソンモービル -3.9% -32.0%
CAT キャタピラー 73.3% 45.2%
MRK メルク -1.2% -29.3%
単純平均 23.1% -5.0%

2017年「ダウの犬」、NYダウに惨敗

2017年の「ダウの犬」銘柄の単純平均リターンは+23.1%(ドルベース)とNYダウを5%も下回りました。23.1%という結果は立派ではありますが、2017年はNYダウの方が優秀な成績を収めました。

足を引っ張った主な銘柄はIBM、エクソンモービル、メルク、ベライゾンコミュニケーションズです。

IBMはバフェット氏が一部売却したとの報道を受けて株価は軟調に推移しました。決算内容は年後半から少しずつ改善傾向が見られるようになりましたが、まだ不透明感が強いです。

石油大手のエクソンモービルですが、年後半にかけて原油価格は1バレル60ドル付近まで回復しましたが、決算内容に出遅れ感があり、他のエネルギー株と比べて2017年のリターンは悪かったです。競合シェブロンのリターンはエクソンより10%も良かったです。

メルク(MRK)は、肺がん治療薬(キイトルーダ)の欧州での承認申請撤回の影響で10月末に株価が急落しました。2017年のリターンは配当込みで▲1.2%となりました。

スプリントとTモバイルの再編問題(統合は実現せず)やAT&Tのタイムワーナー買収報道(当局審査中)など、2017年は通信業界を揺るがすニュースを頻繁に目にしました。携帯電話市場が飽和しており、各社次の成長エンジンを求めて買収を検討しています。携帯電話サービス料金の値下がり圧力を受けてベライゾンの株価は2017年11月くらいまで軟調に推移しましたが、年終盤になると減税やネット中立性廃止などポジティブな材料が出てきて株価は戻りました。とは言え、株価は横ばいで配当込みでなんとかプラスリターンを確保できた程度です。

2017年「ダウの犬」10銘柄のうち7銘柄がNYダウをアンダーパフォームしました。ボーイングとキャタピラーの2社がかなりリターンを押し上げてくれましたが、それでも7銘柄のマイナスをカバーするには至らず。

2013年から4年連続で「ダウの犬」がNYダウに勝利してきましたが、連勝記録は2017年で途絶えました。

 

S&P500には辛勝

S&P500との比較もやってみました。

S&P500平均の2017年のトータルリターンは+21.7%(ドルベース)でした。S&P500のリターンと比較してみました。

ティッカー 企業名称 2017年トータルリターン S&P500との比較
VZ ベライゾン・コミュニケーションズ 3.5% -18.2%
PFE ファイザー 15.5% -6.2%
CVX シェブロン 10.0% -11.7%
BA ボーイング 93.1% 71.4%
CSCO シスコシステムズ 30.5% 8.8%
KO コカ・コーラ 14.2% -7.5%
IBM IBM -4.0% -25.7%
XOM エクソンモービル -3.9% -25.6%
CAT キャタピラー 73.3% 51.6%
MRK メルク -1.2% -22.9%
単純平均 23.1% 1.4%

2017年「ダウの犬」、S&P500に辛勝

2017年「ダウの犬」銘柄の単純平均トータルリターンは+23.1%でS&P500の+21.7%を1.4%アウトパフォームしました。

「ダウの犬」勝利に貢献したのがボーイング(BA)とキャタピラー(CAT)です。両社ともトランプ相場の景気循環に乗って大きく株価が上昇しました。2017年初BAの配当利回りは3.6%ほどありましたが、年末時点では2.3%まで下落しています。

2017年「ダウの犬」10銘柄の内7銘柄はS&P500指数に負けましたが、ボーイングとキャタピラー2社の大活躍のおかげでなんとかS&P500指数を超えることができました。

2017年のS&P500は2013年以来の大幅上昇でしたが、「ダウの犬」10銘柄はそのS&P500を超えることができました。機械的に10銘柄選ぶだけでS&P500を超えるのは凄いことだと思います。