2017年が終わりましたね。2018年もよろしくお願いいたします。
去年2017年に米国株に投資していた人の大半は報われたことかと思います。シンプルにS&P500ETFをホールドしているだけで、20%近い年率リターンをゲットできたはずです。
2017年のS&P500ETFの株価チャートです。
見とれちゃうほど綺麗な右肩上がりですよね。
実際、2017年は過去に例を見ないほどおとなしい凪な相場環境でした。S&P500指数が1日で2%以上変動した日は1日もありませんでした。1日で1%以上下落した日はたったの4日だけです。2015年は32日、2016年は21日あったことを考えると2017年がどれだけ穏やかな相場だったかがよくわかります。
なぜ2017年がこんなに平穏な上昇相場になったのか理由はわかりません。FRBが金融引き締めに動いているものの、世界的にみればまだまだ金融緩和政策が続いていることが株式相場を下支えしたのかもしれません。米国も政策金利自体は上がりましたが、ドル安が手伝ってかなり金融緩和的な環境が続きました。
投資家をハッと驚かすようなサプライズが少なかったことも2017年の凪相場に貢献していると思います。年初、年内のFRB利上げ回数は3回というのが市場コンセンサスでしたが、実際に3回の利上げとなりました。2016年は予測に反して1回しか利上げできませんでした。GDP成長率や失業率などの重要指標についても、概ね市場予想通りの結果で推移しました。
まあ後付けて言い出せば色々と理由は引き出せるわけですが、何はともあれ結果として、2017年は低ボラティリティの中での上昇相場という近年稀に見る素敵な年となりました。資産効果が手伝って、米国家庭はクリスマス商戦でたくさん買い物して、各小売り企業はたっぷり儲けることができたみたいです。いいですね、たくさん買い物して経済にお金が回ることは良いことです。
2017年は投資家にとって良い1年となりました。
めでたし、めでたし。
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って、こんなところで記事は終わらないですよ。
果たして、2017年は本当に良い1年だったと言えるのでしょうか?
年初からあまりネガティブなことは言いたくありません。が、兜の緒を締めるためにも敢えて言いますが、この2017年の凪相場は長期投資家にとっては残念なことです。ええ、とても残念なことですよ。こんな皆が慢心しちゃうような優しい相場は今後の長期投資リターンを下げることになるでしょう。
リスクあってこそのリターン。凪相場はマーケットのリスク認識を抑え込んでしまう。
株式投資ってなんで儲かるのでしょうか?
え、そりゃ企業がしっかり儲けてそれを株主に還元しているからでしょ。
そう、その通りです。S&P500ETFに投資してリターンを得られるのは、S&P500を構成する500社が平均して資本コストを超える利益を上げているからです。株式とはビジネスそのものです。企業がビジネスで利益を出せば、自ずと投資家は儲かります。
それは事実です。企業の利益→配当→株主リターンです。ですが、企業が利益を上げることは、投資家がリターンを得る上での十分条件にはなりません。それは必要条件に過ぎません。もう一つ、株式投資のリターンの源泉として重要な要素があります。
それがリスクです。
投資家が株式という金融商品に対してリスクを感じてくれるから、株式はリターンを生みます。株式投資のリターンの源泉はリスクです。リスクなきところにリターンはありません。ハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターンっていう言葉がありますよね。それはその通りで、リスクが高くないとリターンは高くなりません。株式が今後も高いリターンを私たちにプレゼントしてくれるためには、株式のリスクが高くなくてはいけません。
じゃあ、株式のリスクって何なのか?
具体的に数値で測れるのか?
リスクは分散や標準偏差といった統計数値で測定可能ですが、そんな数字の議論はここではしません。もう少しざっくり簡単に理解しましょう。
株式のリスクとは、投資家が株式に抱く恐怖感です。「株を買ったら損するかもしれないな~、怖いな~(ビクビク)(゚Д゚;)」というすべての投資家の感情の集合が株式のリスクです。リスクとは人の感情です。感情ですから数字で測れるようでそこまで厳密に測定できるもんでもありません。
株式にリスクを感じることをファイナンス的に言うと、将来の利益(配当)が一定の利率で割り引かれているということです。将来の利益(配当)が常に一定の利率で割り引かれているからこそ、株式はリターンをもたらす程度の株価に落ち着きます。
投資家の恐怖感=リスク=割引率
です。
2017年は株価が少し下がってもすぐに押し目が買いが入りました。S&P500指数は大きな調整を一度もすることなく、グングンと上昇していきました。こんな感じで株価の変動が小さいことは投資家に安心感を与えます。「ああ、なんだか最近の米国株は株価のブレも小さいうえにリターンも高くていいじゃん!、よーし俺も米株やろっかな。」って考える人が増えてきます。実際に私の周りでも株式投資を始める人が少しですが出てきました。そうやって、株式に対する楽観から株への資金流入が増えて株価は切り上がっていきます。
その株価上昇をファイナンス的に言えば、投資家の株式へのリスク認識が下がった結果、割引率が低下して将来利益(配当)の割引現在価値たる株価が上昇したということになります。実際に2017年は米国企業のEPS上昇率以上に米株価が上昇しましたが、これはPERの上昇を意味しており、投資家の楽観姿勢を示しています。
投資の法則として知られている言葉として「中吊りの法則」という言葉があります。通勤電車の中吊り広告に株式投資関連の広告が目立ってきたら、相場の天井が近いことを示唆しているというものです。世間に株式に対する楽観・安心感が広がっていくと、普段投資に興味がない人までもネット証券の口座を開設して投資を始めようとします。そうすると、金融業界はコストを掛けてでも広告を大々的に打つ経済合理性が生まれます。しかし、その頃には相場はピークを迎えていることが多いものです。「中吊りの法則」という格言は、株式に対する恐怖感の減退、人々の株式マーケットに対する楽観姿勢が株式リターンを下げることを教えてくれます。
2018年、慎重さを忘れずにマーケットに居続けましょう!
2017年、株式投資で儲かっている人を横目で見ていた人の中には「よし、2018年は俺も株をやってみよう!」という考える人も出てくるでしょう。すでに投資を始めている人も、丸1年間調整らしい調整がなければ、2018年も躊躇なくマーケットに資金を投じる人が多くなるでしょう。
2017年の穏やかな凪相場は投資家、潜在的投資家に慢心をもたらしている可能性があります。今年も2017年と同じような投資家フレンドリーな相場が続くとは思わない方がいいでしょう。途中株価が急落するシーンもあるかもしれません。
とは言え、いつが相場のピークなのか事前に予測することは不可能です。下手にマーケットから資金を引き揚げても、再度マーケットに戻るタイミングを読めずに機会損失だけ膨らんでいくリスクがあります。今年は積極果敢になるべきタイミングとは思えませんが、少し心にブレーキを掛けつつもマーケットに居続けるのがいいのかなと思います。私も毎月コツコツ投資を続けていくつもりです。
Hiroさん、あけましておめでとうございます!
確かに2017年は株価が下落してもすぐに戻るだろうという楽観の相場でしたね。
「そろそろ暴落があってもおかしくない。しかし狼狽売りすることなくホールドして(少しブレーキをかけつつも)積み立てを継続していく。」と最近このような心構えをしております。
年初から自分の心構えをより強くしてくれる記事ありがとうございます。
今年もよろしくお願い致します。
チェルシーさん、明けましておめでとうございます。
2017年は近年稀に見る平穏相場となりましたね。しかも株価大幅上昇。
特に2017年から株式投資を始めた方の中には「株って簡単に儲かるじゃん」って思っている方もいるかもしれません。
しかし、平均への回帰という言葉もありますし、2018年の相場に過度な期待を持たない方がいいかなと思います。
S&P500にはハイテク銘柄の割合が多いので、金利上昇などで相場の時合いが悪くなると大きく下げるリスクがあります。
そんな時が仮に訪れたとしても、慌てずにホールドできるよう心構えを持っておけるといいのかなと思います。
という思いがあって、年初からこんなテンション下げる記事を書いてしまいました。
まあ相場がどうなるか分かりませんね。初日からハイテク株上がっています。
こちらこそ、本年もよろしくお願いします!
そういえば2006,7年頃に米国株特集の電車の中吊り広告を見ました。
当たってますね(笑)
あの当時は資本主義が成熟しきっている米国への株式投資なんて考えられない!
って思っていたのが今では資産の中心にすべきだって思ってるとは
不思議なものですね。
そうですか!
自分で「中吊りの法則」とか言っておいて何ですが、実際に電車の広告が株だらけになっているのを見たことはないんですよね。
というか、電車ではボーっとスマホ見ていることが多いです。
2007年というのが興味深いですね。
あの当時はイールドカーブも逆になっていました。
今から振り返ると何とでも言えますが、市場崩壊の兆候はあったのでしょうね。
>あの当時は資本主義が成熟しきっている米国への株式投資なんて考えられない!
わかります。
やはり、利益成長=投資利益という発想になるのが普通ですよね。
一度勉強して気が付けば簡単なのですがね。
シンプルなインデックス投資ですが、実際に始めるまでには高いハードルがあるように思います。