トランプ次期大統領の支持率は就任前にも関わらず50%を切っています。オバマ大統領は80%以上ありました。
トランプ氏は気軽にツイートして企業経営者は困惑させています。何よりも金融機関のトレーダー達を困惑させています。ゴールドマンサックスやモルガンスタンレーのスーパーコンピューターも、さすがにトランプツイートを踏まえて高速取引を実行することはできないでしょうw。
冷暖房設備メーカのキャリアは事業をメキシコに移転しようとしていました。しかし、トランプさんから「米国の雇用を削減するとはけしからん奴だ!!」と文句を言われ、結局キャリアはインディアナ州での事業を継続することになりました。
トランプさんは自動車メーカーに脅しをかけて、これも成功を収めています。自動車メーカーは政府との取引でやり玉に挙げられがちです。
フォードはメキシコ新工場建設を撤回して、米ミシガン州に電気自動車の製造施設を建設すると言っています。フォードはトランプ大統領の圧力で経営判断を変更したとは言わないでしょうが、表面上はどうしてもそう見えます。
最近は我が国トヨタ自動車までツイート攻撃の標的にされました。
一般的に米国メーカーは、特に汎用品であれば人件費の安い中南米諸国などの米国外で製造したいと考えます。当然です。コストの安い国で作ったほうが原価が安くなって利益率が高まりますから。単純な話です。
だから、トランプ氏のアメリカ第一主義、保護主義政策はグローバル企業には損です。株主にとって嫌な話です。
ですが!!
損なのですが。
日本人米国株投資家はこっそり得をすることになると思います。アメリカ人は得られない利益が日本人投資家にだけは転がり込みます。
みなさん、気づかぬうちにフリーランチを食べることになると思います。
良かったですね!!
日本人投資家が得をする理由
企業の経営者は常に株主利益を考えています。少なくとも米国企業の経営者の思考は株主利益最優先です。
確かに、数々の米国企業、特に製造業がトランプ攻撃に屈して実際に工場移転計画等を変更しています。
でも、これは企業の経営者がトランプさんにビビって、ホワイトハウスに呼び出されて怒られるんじゃないかってビクビクしての行動なのでしょうか?
担任の先生に職員室に呼び出されて怒られるのが怖いから宿題をやってくる、そんな小学生のような発想をしているのでしょうか?
そんなわけはありません。
トランプさんがどれだけあーだこーだ不満を垂れようとも、経営者は常に株主の方を向いています。トランプさんのご機嫌は窺っているかもしれませんが、視線はいつも株主です。
キャリアもフォードも、別に経営者がトランプさんに気を遣ってメキシコへの工場移転計画を白紙に戻したわけではありません。そうすることが株主にとってお得だと判断したからです。
メキシコには移転しないほうが株主にとって利益になると経営者は判断しました。
なぜか?
普通に考えれば、人件費などのコストが安いメキシコに工場を移転させた方が原価が安くなって粗利率が改善するはずです。
なぜコストが高いアメリカでの製造を続けることが得策だと考えたのか。
それは補助金や減税です。
トランプさんは生粋のビジネスマンです。損得で行動してきた男です。米国の経営者を感情だけで動かすことなどできないとわかっています。
取引です。
例えばキャリアはメキシコへの工場移転を止めて米国に雇用を残す見返りに、インディアナ州が700万ドルの減税措置を講じると言っています。
メキシコへの工場移転を無理に決行して関税リスクなどを背負うよりかは、米国に残って減税措置を受けて高いコストのまま事業を継続したほうが株主にとってお得だろうという経営判断です。
あくまでも株主利益を考えての決断であって、別にトランプさんにお土産を渡しているわけではありません。結果的にそう見えるかもしれませんが。
トランプさんはビジネスマンだから、きちんと補助金や減税などのメリットを与えて交渉をしているはずです。交渉はトランプさんの得意分野です。
お金って空から降ってくるわけではありません。
補助金、減税って誰の負担なのでしょうか?
アメリカ国民ですね。納税者です。
コストの安い新興国への進出をストップして米国の雇用を守るとは、つまり株主から雇用者への所得移転です。その所得移転のすべてを株主に負担させるのではなく、一部は米国民みんなで負担するよってことです。
株主と全アメリカ国民のお金が、解雇されるはずだった米国労働者の手に移転するということ。
株主だけの損失負担で雇用を維持するのはちょっと可哀想過ぎるから、そこはアメリカ国民全員で一部は負担するよってことです。補助金や減税とはそういう意味です。
アメリカ国民の税金が、補助金や減税という形で米国企業を支えてくれるということです。
つまり、日本人米国株投資家はアメリカ国民が収めた税金の一部を頂けるということです。ほんの僅かですがフリーランチかな。
P.S.
これを言い出すと、米国企業が得る補助金や減税はすべて日本人投資家にはお得だっていう理屈になるから、今回の出来事だけの特別な事象ではないなってここまで記事を書いて気づきました。。
ちょっと説得力のない変な記事になっているかも、、お許しをm(__)m
ゴールドマンサックスやモルガンスタンレーのスーパーコンピューターも、さすがにトランプツイートを踏まえて高速取引を実行することはできないでしょうw。
→できてますよ。まだ4秒かかるみたいですがすぐにミリ秒になるでしょう。
http://m.jp.wsj.com/articles/SB10504433381807684657504582564150546384914?mobile=y
実は私もこのWSJの記事を読んでいて、Yudetさんとは逆に金融機関のシステムはツイートに対応できていないと解釈してしまっていました。
この記事のこの文章の背景には実は送っていただいたWSJの記事があったのですが、その記事をピンポイントで送ってこられてとても驚きました!(笑)
ツイートにまでプログラミングで対応してしまうのは、、もうこれからどんどんAIの時代になるんだなってより一層感じました。
コメントありがとうございました!
会計先生教えてください。
東芝のニュースが駆け巡ってますが、債務超過とは何なのでしょうか?
また、PMはどうして自己資本を食いつぶすぐらい配当出してるのに成り立ってるのでしょうか?
BSの見方教えて頂きたく
おはようございます!
最近忙しくて、、返信が遅くなりました。
債務超過とはあくまで会計上の話で、資産よりも負債の方が大きい状態をいいます。
純資産とは単純に「資産-負債」と定義されるのですが、この純資産がマイナスの状態を債務超過と言います。
資産70、負債100だと30の債務超過です。
私は債務超過という表現はやや不適切で、負債超過が正しい表現だと思っています。
ここでのポイントは債務超過とはあくまでも帳簿上だけの話であって、キャッシュが回っていれば会社自体の存続は続くということです。
資金繰りさえ回っていれば赤字だろうと債務超過だろうと会社は持続します。
逆に黒字で純資産たっぷりでも、デフォルト起こせば倒産です。黒字倒産。資金繰りは会社経営でも家計でも基本となります。
東芝はグループ会社ののれんを数千億円減損するとの報道のようで、これは東芝の純資産を食い潰す規模なので債務超過に陥る可能性は十分あります。
ただし、東芝は現預金を1兆円近く保有していますし毎日の営業CFはあるので目前の資金繰りに不安はありません。
なのでこの減損で債務超過になっても会社存続がすぐに危ぶまれることはないでしょう。
ただし、減損は会計上だけの話とは言え、会計とキャッシュは長い目で見れば繋がります。
会計上で減損を計上するということは、将来のキャッシュインの減少を意味します。
減損損失とは将来数年先、数十年先のキャッシュ不足を会計上だけ前倒しで認識するイメージです。
先に将来のキャッシュがやばい!というメッセージを会計処理で発しています。
でも一応将来ですから、今は大丈夫。
でも将来キャッシュが危ないことは間違いないので、東芝は中期的に何らかの資金手当てが必要になります。
会計上で減損を計上することで「将来の資金繰りがやばくなるかも!!」というメッセージを投資家に発信することができます。
これは意義あることです。
減損は見積もりの要素が大きく過度に計上することはいけませんが、適切な減損損失の計上は投資家フレンドリーです。
フィリップモリスも同じ理屈で、債務超過でもキャッシュが回っているから成り立っているということです。
普通、いくらキャッシュが回っていても債務超過は正直言って褒められた状態ではないかもしれませんが、PMクラスのキャッシュ稼得能力があれば問題ないということです。
もしわからない点があれば、遠慮なく聞いてください!
よく上司に「お前は知識はあるかもしれんが、説明が下手くそだ!」って怒られているので、、(笑)。
ありがとうございます。なのですがやはり分かるようでよく分からずです…
左右がバランスしてるからBSなのに、崩れる時点で???です。
また債務超過になっているとき、いわゆる会社の解散価値はどうなるのでしょうか?
PMが解散しますってなると、株主はどうなるのでしょうか?
なるほど!そこですか。
わかります。
波乗り翼さんが理解し兼ねるポイントというか、感じはなんとなくわかります。
なんとご説明すべきか。。
BSのバランスが崩れる感じが??という点ですね。
BSって確かにバランスしているんですけど、これは無理矢理バランスさせているだけでなんです。
実際にビジネスを想像してください、家計を想像してください、資産と負債が同額なんてあり得ないですよね。
だからその差額を純資産としてBSに計上することで、無理矢理バランスさせています。
負債より資産が多い普通の会社のBSだって、差額を無理やり純資産で調整しているバランスさせている点は一緒です。
それが負債が資産より大きくなると「債務超過」なんていう仰々しい表現をするから混乱をしてしまうのだと思います。
たとえば、銀行から100万円借りてきたとします。
現金 100万 借入金 100万
で貸借はバランスします。資産=負債なので純資産はゼロです。
で、この現金のうち40万円をギャンブルに突っ込んでパーにしたとします。
そしたらBSはどうなりますか?
現金 60万 借入金 100万
となりますよね。
でもこれだと貸借バランスしない。だから無理矢理純資産で補てんするイメージです。
現金 60万 借入金 100万
純資産 ▲40万円
これが債務超過のBSです。
いかがでしょうか?
解散価値の件ですが、まず理解すべきは株式会社のBSは解散を前提には作成されていないという点です。
これを専門用語で「継続企業の前提」、「ゴーイングコンサーン」と言います。
まあそんな用語はどうでもいいです。
で、解散価値の話です。
会社の解散価値は、解散する時点で会社が保有する資産をすべて現金化して、そこから負債を返済して残ったお金となります。
なのでPMの解散価値はマイナスだと思います。
ざっくり試算してみます。
PMは資産の4割が現金+売掛金+在庫です。在庫がすべて売れると仮定すれば、まずこれらは金銭価値がありますね。
工場などの固定資産もいくらかは現金化できるのでしょうが、たかが知れていると思います。
一方で負債に目をやると、負債総額の約8割が借入金です。
ということは資産のうち現金化できるものをすべて現金にしても、負債を返済しきれないということです。
つまり、PMの解散価値(株主にとっての)はマイナスだということです。
PMが解散しても、株主には一銭も入ってこないと思われます。
余談ですが、ここがPMの凄いところです。
BSは常に危険ですw。
なんでこんなに危険なBSにしているのか?
いや、できるのか?
それは営業CFが99.9%潤沢に入ってくると経営陣が確信しているからです。
要するにたばこビジネスはそれほど安定して儲かるということです。
なるほど、前半よく分かりました
現金 60万 借入金 100万
純資産 ▲40万円
こんな状態でも、給料なりのキャッシュインがあり、銀行に利子返済ができていればいいということですね。
後半は投資判断には悩んでしまいます。MO普通なのにどうしてPMは財務戦略なんだろうって感じですね。まぁBSを無視してもどちらも凄いFCFなので魅力的なのですが
はいおっしゃる通りです。
仮に負債が資産より多くても、キャッシュで負債が返済できていればOKということです。
MOは普通と仰っていますが、BS観はかなりPMと似通っています。
MOは現金と在庫を足しても総資産の15%ほどしかありません。一方で負債は40%もあります。長期債務ですが。
自己資本比率は10%もありません。
債務超過か否かという点を見るとPMとMOは違うように見えますが、同じ構造のBSだと思っています。
今後も何かご不明点あれば、お気軽にどうぞ!
だいぶ前のお返事に対する返信ですみません。僕もこの時期決算で忙しくて…今日も午前中は仕事してました。
WSJの記事を踏まえていたんですね!気付きませんでした。同じ記事を読んで反対の感想を持つって面白いですね。今でも適時開示に自動で反応するbotはありますので、それがtwitterに対応するのは難しくはないと思いますが、トランプのツイートは適時開示と違ってbotが反応しづらい表現なので笑、そこに多少の難しさがあるのだと思います。
いえいえ、とんでもないです。
経理部はこの時期忙しいですよね。。私も昨日は12時に帰宅しました。
貴ブログ拝見しましたが、ほぼ同い年で同じ経理(財務?)なんですね!
そうですか、適時開示にも自動で反応するのですね。。
凄いですね、買収などの情報を市場が織り込むのはさすがに人が関与していると思っておりました。
逆にトランプツイートはわかりやすくて、反応しやすいかもしれませんね笑。
ところで、株取引のプログラムのことをbotと表現するのですね。
初耳でした。勉強になりました。
僕も経理です。ほぼ同じ年なので将来設計の考え方など参考にさせていただいてます。
ツイッターで議員の牛歩戦術が話題になった時に、牛というキーワードの急上昇にbotが反応して吉野家の株価が上がった出来事を浅田彰が動物的ディストピアと批判してましたが、トランプのツイートに反応するためには統計的能力だけではなくて文脈を読む力が必要になるので、これを機に人工知能が発達することを期待してます。半ば冗談ですが。
経理ですか!
同じ環境の方に出会えて、親近感沸きます!
私もYudetさんの記事を参考にさせて下さい。ブックマーク登録しました。
>ツイッターで議員の牛歩戦術が話題になった時に、牛というキーワードの急上昇にbotが反応して吉野家の株価が上がった出来事を浅田彰が動物的ディストピアと批判してました
一人で家で缶ビール飲みながら読んでいて吹き出すところでした。笑わせないで下さいよww。
面白ネタありがとうございます。使わせて頂きます。
これからもよろしくお願いします!
ブログを通じて色んな方に出会えて嬉しいです。