中央銀行が発行するデジタル通貨が将来現実化するかもしれません。日本は中国、アメリカの後でしょうけど。

ブロックチェーン技術を使うことで、デジタル通貨は低コストに安全で送金できるなどのメリットがあると言われます。一方で、政府が資金の流れをすべて監視できる点はデメリットかもしれません。何にお金を使ったかというのはかなりプライベートな情報です。

さて、デジタル通貨のメリットの一つとしてバロンズがこんなことを言ってました。

デジタル通貨はプログラム可能なため、例えば給付金が3ヵ月後にデジタルウォレットから消滅するとなれば、消費促進と経済活性化につながるだろう。

バロンズより

これはなるほどーって思いました。

デフレが悪いのは、それが人々に過剰な貯蓄を促すからです。お金を使わずに待てば待つほど物価が下がるわけだから、なるべく消費は抑えようというインセンティブが働きますよね。

投資家として若い頃から資本蓄積すべしと言っている立場ではありますが、みんながそれを行うと経済は縮小低迷しちゃいます。合成の誤謬です。

だから、2%程度のマイルドなインフレが好ましいと一般的に考えられています。インフレとは貨幣価値の減価です。現金のまま持っておくと価値が下がるなら、なるべく早めに使ってしまおうと思いますよね。それが経済活動を活発にします。

ただ、人は物価という外部環境よりも、自分の収入や資産の名目額により敏感に反応します。

給料が2%アップしても物価が3%上がれば実質的には給料ダウンです。給料横ばいでも物価が1%下がるなら、実質的には給料アップです。

普通に考えれば後者の方が望ましいと思うはずですが、実際は前者の方が好まれることもあります。名目でもいいから給料が上がると嬉しいという感情は理解できますよね。2~3%の物価上昇だと、さほど実感がないからというのもあるでしょうか。

2%のインフレよりも、保有資産の2%の減価の方が消費を促す効果が高いと思います。

1年経ったら口座残高が100万円から98万円に自動的に減少する。これは誰しも嫌ですよね。

こんな政策が簡単に採用されるとは思いませんが、少なくとも技術的にはデジタル通貨は「腐るお金」になることができるようです。

1900年代初頭、シルビオ・ゲゼルという人が減価するお金を提唱しました。それは、実際にドイツやオーストリアで導入されました。が、現代でも運用されているものはありません。

「腐るお金」を使えば過剰貯蓄による経済低迷を防げると考えたわけですが、やはり言うは易く行うは難しだったというわけです。

デジタル通貨でそれが実現可能になるとは今まで考えたこともなかったです。

すべての通貨を「腐るお金」にするのはやり過ぎ、無理でしょう。でも、たとえば昨年の特別給付金10万円みたいなものは、1年以内に使わないと消滅する「腐るお金」にすることで、国民の消費を促すという方法は有効かもしれません。

これなら麻生さんも給付金に賛同してくれるでしょうか。