1971年の所謂「ニクソンショック」まで20世紀の大抵の期間で、ドルは金との交換が保証されていました。金本位制です。

言うまでもなく、現在は金本位制ではありません。私たちが使っている円はもちろん、ドルもユーロも不換紙幣です。金と交換することはできません。政府がその紙幣での徴税力を持ち、結果として私たちがそれを信じているから通貨として流通しています。

金本位制が崩壊したのは、経済に流通する資金量の柔軟性に欠けるからです。経済が成長しているのに、金の保有量が足枷となってマネーの量を増やせない。不況期に景気を刺激したいのに、マネーの量を増やせない。こういう弊害が大きくなってきたからです。

今、私たちが住んでいる世界は管理通貨制度が採用されています。金の保有量とは関係なく、中央銀行がマネーの量を管理しています。

より正確に言うと、民間銀行や債券投資家の融資判断がマネーの量を左右します。銀行が貸し出しを増やせば経済に出回る資金量が増えるし、融資を減らせばマネーの量が減ります。

管理通貨制度におけるお金は信用貨幣と言えます。銀行や投資家がお金を貸し出す時は、対象の企業や個人の信用力を厳しく審査しますよね。

今、あなたのスマホに入っている電子マネー1万円は、元を辿れば誰かの借金です。現代通貨とは常に誰かの負債です。誰の負債にもなっていなければ、それは(信用)通貨とは言えません。

そういう意味で、ビットコインは信用貨幣ではありません。デジタルゴールドと言われるくらいですから、信用貨幣というより商品貨幣です。

この50年役割を果たしてきた信用貨幣制度が段々と機能不全に陥っている。そう思うことがよくあります。

金本位制はゴールドの量がマネーの量を規定してしまう点に限界があった。

同じく、信用貨幣制は信用の量がマネーの量を規定しまう点に限界があるんだと思います

低コストで拡張できるソフトウェアの価値が高まるにつれて、景気拡大局面においても借金、つまり信用貨幣を調達する必要性が薄れてきました。それが長く続く低金利の一因です。

アメリカ政府はコロナ禍で苦しむ国民救済を名目に、巨額の国債を発行していますが、その主な買い手はFRBです。

FRBが資金源の米国債を負債とする米ドルなんて、もはや信用貨幣とは言えないと思います。何に対する信用に基づく貨幣なのでしょうか。信用とは無関係にFRBが買っているだけです。

商品貨幣(金本位制)

信用貨幣(管理通貨制度)

再び、商品貨幣?

こういう大きな流れがあるような気がします。

商品貨幣たるビットコインに注目が集まっているのは偶然ではない。社会の変化に沿った流行です。

ただし、ビットコインはやっぱり経済のメインストリートには来れないかな。というのも、その発行枚数には上限があるし、好不況に応じて政府、中央銀行が流通量をコントロールできないからです。

国家が流通量をコントロールできる商品貨幣、というのが次の50年の主要通貨になるんじゃないでしょうか。そして、それはすでに実現しつつある。つまり政府と中央銀行の結託です。中央銀行の独立性というのは過去の遺物になるでしょう。