FRBは3月15日に予想通り利上げを実施しました。
0.25%の利上げで、FF金利の誘導目標は0.75~1.00%となりました。FRBは2017年内にさらに2回の利上げを見込んでいます。
減税策が思いのほか早く決議され(多分無理だけど)、インフラ投資や規制緩和策といった公約が順調に消化されれば、経済は予想外に加熱しインフレが進むかもしれません。そうすれば、FRBは利上げのスピードを早めるかもしれません。
さて、今回の利上げを受けたマーケットの反応はちょっと意外だったな~と個人的に思いました。意外というのは教科書通りではないという意味です。
為替 円高ドル安へ
利上げをした3月15日以降、ドル円の為替は1ドル114円から112円に円高ドル安へ進みました。
為替って投機・実需様々な取引によって動くので一概に変動要因を言えるわけではありませんが、一般的に言って米利上げはドル高円安要因です。
それは単純に、アメリカの金利が上がればみんなアメリカに資金を移すでしょという発想です。なるべく金利が高い商品に投資したいって普通に考えますよね。
だから、FRBが利上げしてアメリカの金利が上昇したにも関わらず、ドルが売られたのは教科書的な動きではありません。まあ最近こういう傾向にあるように思いますが。
これは詳しい理由は素人の私にはわかりかねます。想像ですが、利上げに向けてドル買いが進んでドルが割高になっており、実際の利上げを機にドル買いポジションを手じまった投資家が多かったのだと思います。
ここ2年間のUSDの実効為替相場です。すべての通貨に対してUSDの価値がどう動いたかを表した表です。
昨年11月の大統領選以降、ドルの価値が急激に上昇していることがわかります。これがドルの割高感を生んでおり、利上げをきっかけにポキッと折れた感じかな。
米国債10年物利回りの下落
FRBは短期金利の誘導目標を引き上げましたが、長期金利(=米10年国債利回り)は上昇しないどころか下落しました。
FRBが利上げを決定すると、なぜか債券は買われました。(つまり債券価格が上昇して、利回りが低下した)
教科書的に考えれば、短期金利が上がれば長期金利も上がります。長期金利って短期金利の塊みたいなもんですから。もちろん満期が長いことに対するプレミアム(ターム・プレミアムと呼ぶ)もありますが。
ニュースなどを見ると、FRBは利上げをしたものの依然としてハト派的な印象を市場に与えたため、債券は買われたようです。
要するに「そんなメチャクチャ急激な利上げはしないよ」というメッセージを市場は受け取ったということ。マーケットは利上げは当然織り込み済みで、FRBの今後の積極的な利上げ発言も織り込んでいたようです。それが実際は、利上げまでは予想通りだけど、今後の見通しが思ったよりハト派でちょっと意表を突かれた感じです。
3月21日深夜現在、米10年債利回りは2.46%程度で推移しています。
トランプ大統領の政策実現次第で、FRBはタカ派に変わるリスクもあると思います。
新興国株上昇
新興国株の動きも印象的でした。
新興国株式はFRBの利上げ決定を受けて大きく反発しました。新興国株式ETFであるEEMは38.6ドルだったのが利上げ後に39.6ドルまで3%弱も上昇しました。
これも意外です。
新興国株式はアメリカ利上げに弱いです。それは、アメリカの無リスク利子率が上がるのであれば、リスクを取ってまでボラティリティの高い新興国株式に投資するのは止めようという動きが出るからです。また、一般的に米利上げは新興国通貨安も誘発します。
2013年、当時のFRB議長だったベン・バーナンキ氏が量的緩和縮小を臭わす発言をした際、新興国株式と債券は叩き売られました(いわゆるテーパリングかんしゃく)。
また2015年にFRBが利上げした時も、新興国の債券、為替、株から一気に資金が流出しました。
アメリカの利上げは、新興国の株価と通貨にダブルパンチを食らわせるリスクをはらんでいます。今やグローバル世界経済は金融市場を通して密につながっています。
今回は2013年や2015年のようなショックは起こりませんでした。むしろ新興株は上昇しました。
これは新興国の経済成長が順調で、ドル建て債務もかつてほど多くないためだと思われます。が、マーケットの真意は私にはわかりかねます。
マーケットの先読みは無理だなって実感した
今回のFRB利上げ後のマーケットの変動を見て改めて感じましたが、株価や為替を先読みして取引するなんてことは、私達個人投資家には無理だなってことです。
長期投資では売買のタイミングは関係ない、優良株を持ち続けて配当再投資を続けるだけでいい。それはわかっている。でも、人の心理として少しでも良い条件で投資したいと思うものです。正直言いますが、私もそう思ってしまいます。
やはり、自分が投資してすぐに円高や株安が進んでネット証券の赤い数字を見るのは心地良いものではありません。追加投資単価が下がるというポジティブ発想もできなくはないですが、やはり自分が頑張って仕事して稼いだお金ですから、50万円が1晩寝て起きたらで48万円になっていたら嫌なもんですよ。寝ている間に2万円も損するって嫌ですよね。
短期を気にするなって言われても、気になってしまうのが人の性。そういう心理は仕方ないんじゃないですかね。
確かに、ドル買いポジションが膨らみ過ぎている、今度の利上げではドル安が進むぞって予想して、利上げ後にドルを仕込むことができた猛者もいるかもしれません。でもそれは今回予想が当たっただけで、今後も継続して当て続けられる再現性があるとは思えません。
人間心理として短期的な損失は「痛み」なのは理解できます。ですが、今一度、自分は長期投資をしているんだ、短期的な損失は気にしないしそんなにパフォーマンスに関係ないと思うことも大事だと思います。
長期投資のいいところは適当に買ってほったらかしでいいところです。何もしないことがお金儲けに繋がるって株式投資くらいではないでしょうか。
せっかくそんなコスパの良い金儲けをやってるんですから、目前のマーケットなんて気にせず、ネット証券の画面なんか開かずに、ゆっくり自分の趣味でも楽しめばいいと思います。