(リーマンショックの時)米当局が信頼性の高い政策を打ち出せ要因は2つある。
一つは資本市場が高度に整備されていたため、証券化されたローンの価値が評価しやすかった。もう一つは資産評価や審査を担う当局の人数が非常に多かったためだ。
日本経済新聞 経済教室より
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米国株投資の魅力はこういうところだと思います。アップルやフェイスブック、アマゾンなど世界をリードする優良企業に投資できることも魅力ですが、一番はこの日経の記事に書かれてあるような「裏方」の強さです。
資産評価や審査って目立たない間接業務です。「お前らは金を生んでないだろ!」って言われて会社では肩身の狭い思いをするような部門です。
審査や監査ってともすると無駄なコストだと思われがちです。なるべく削減すべきコストと思われがちです。
でも、米国はそういうガバナンス関連に莫大なコストを掛けます。そうやって資本市場を守ることが国益だという意識が強いです。株主もそこにカネを掛けることに不満を持っていません。
会計監査なんて日米じゃ全然違います。
アメリカの監査報酬の平均は2.5億円ほどですが日本のそれは0.6億円ほどです。その差は4倍以上。
これはアメリカの監査人(会計士)のスキルが日本より高いというわけではなく、単に一企業に割く監査時間、監査人員がアメリカの方が多いだけです。日本企業の監査リソースは明らかに不足しています。私は監査をする側と監査を受ける側、両方経験していますがそう感じます。
日本企業は監査報酬=コストという認識です。1円でも削るべきコストと認識されています。「監査法人はネチネチ指摘してくる面倒な奴、敵だ。」という空気すら感じます。
確かに監査報酬はコストだし、監査対応の人件費もコストです。会社の販管費としてPLに計上されるのは間違いない事実ですし、削減できるに越したことはないです。が、そこはそんなにギューギューに絞るべき所じゃないと思うのですよ。
もっとガバナンスにお金を掛けることに価値を見出すべきだと思います。何かあってからじゃ遅いです。何かあったら、監査報酬どころじゃない追加コスト(損失)が発生する可能性があります。
アメリカは違います。アメリカでは、監査法人はともに働くパートナーであって、経理部員と一緒に株主のために証券市場を守っているんだという風土、空気があります。パートナーなので監査法人にたくさんお金を払うことに抵抗がありません。公正な証券市場を守るためには、相応のお金を掛けて当然だと株主は理解しています。
アメリカは圧倒的に「裏方」が強いです。表舞台に立つCEOが富を生み出していると言えますが、その富をガチっと守って株主に届けているのは「裏方」です。株主の利益を影でしっかりサポートしてくれる仕組みが整っているところが、米国株の一番の魅力だと私は思っています。
米国が裏方が強いとは意外でした。CEO始め経営陣が多額の報酬を受け取っているのは知ってましたが、生み出された富を株主に届ける裏方にもきっちりお金をかけてこそ、米国企業の堅固なコーポレートガバナンスが維持されているんですね。大変勉強になりました。
米国が(米国企業が)間接業務的なことにここまでコストを掛けられるのは、企業が儲かっているからという理由もあります。
高収益な企業が多額の税金を納めるので、豊富な財源から当局審査等の人員を十分に確保できます。
企業の監視コストの絶対額は大きいですが、GDP比で見るとそうでもないかもしれません(調べたことありませんが)。
企業でも言えることですが、規模が大きくなればなるほど間接部門(本社部門など)に高額投資できます
コーポレートガバナンスを大切にするという文化的背景に加えて、そのような米国の経済力も影響していると思います。