アメリカ中央銀行のFRBは6月14日のFOMCで、今年(2017年)2回目の利上げを実施しました。これを以って、翌日物フェデラルファンド金利(FF金利)の誘導目標は1.00%~1.25%となりました。
賃金上昇率がイマイチではありますが、堅調な経済成長が続いていると判断してFRBは金融引き締め方向に動いています。ECBや日銀が依然として超緩和的な金融政策を続ける中、米国が先駆けて金融緩和を解除し始めています。
FRBは年内にもう1回の利上げを予定しています。
さて、この6月のFOMCの利上げは完全に想定内でした。
注目点は別にあります。FRBのバランスシート縮小計画です。FRBは利上げを続けながらも、バランスシート縮小を同時並行で進めると明言しました。このバランスシート縮小は当初12月頃からだと言われていましたが、9月から前倒しでやるのではとの憶測も出始めています。
FRBのバランスシートはリーマンショック前の2007年には0.8兆ドルほどだったのに、直近4.5兆ドルまで膨れ上がっています。バランスシートの資産内容は主に米国債とモーゲージ債(MBS)です。
なぜ、FRBのバランスシートはここまで巨大化してきたのか?
それは、金融危機後の経済停滞を回避するために中央銀行自身がリスクテイクして市場を安心させるためです。債券を買い入れて金利を低く抑えて、企業や個人の資金調達コストを下げることが目的です。
上述の通り、FRBは利上げを実施しました。もう経済は回復した、これ以上中央銀行が民間企業をサポートする必要はないという判断です。
そこでFRBは今まで経済サポートのために大きくしてきたバランスシートを小さくすると言っています。FRBのバランスシートを徐々に縮小すると宣言しています。米国債やMBSの償還金再投資をストップして、徐々にバランスシートを縮小するとのことです。
でさ。
このFRBのバランスシート縮小報道を聞いて、あなたは何を感じますか?
ニュースの意味って、わかりますか?
難しいですよね。
先日、こんなコメント頂きました。
FRBのBS縮小の話題をよく目にするのですが、今一つ意味がわかりません。一般的な企業においてBSの縮小は企業規模を小さくするという悪い意味になると思うのですが(借金が多すぎれば返済はいい意味になるとは思いますが)、FRBのBS縮小は前向きな行動なのでしょうか?
この疑問は最もだと思います。
金利を上げるというのはまだわかりやすい。
金利(誘導目標)を0.75%から1.00%に上げますよ~と言われたら、「ああそうですか~」という感じですよね。
でも、FRBのバランスシートを徐々に縮小させるって言われても、「・・・」ってなりませんか?
バランスシート縮小がマーケットにどういう影響を与えるのかって、なんか理解しづらいかもしれません。
そこで、自分なりに説明してみようと思い記事を書きました。
先に言っておきたいですが、私は金融政策とか全くの専門外でド素人です。
会計士だから金融についても完璧に理解しているんでしょ?とか思ったら大間違いです(笑)。
同じ業界の友人についても言えますが、みんな当然会計には詳しいですが金融投資には疎い人が多いです。金融監査やっている人は別ですが。
ということで金融素人の私Hiroが、自分なりにこのFRBバランスシート縮小について簡単に説明してみたいと思います。間違ったこと言ってたらごめんなさい。
自分なりに出来る限り説明してみたい!って思ったのは、こういった金融に関する疑問を持つことはとても良いことだなって思ったからです。
株式投資家として金利や為替などマクロ経済を少しでも理解しようと勉強することは大切なことだと思います。それで投資リターンが上がるかはわかりませんが、ニュースをスムーズに読めた方が長期投資を楽しくやれると思います。
仕事でも何でもそうですが、つまらないと思う、避けてしまうのは自分が理解できてないからです。仕事を楽しむ究極の方法は、その仕事について徹底的に勉強して知識を得ることだと思います。
例えば、経理の仕事ってどうしても専門的な面があって、他部署から配属になった人は嫌がります。酷いケースでは退職してしまいます。そんな中、最終的に経理の仕事を楽しんで活躍しているのは、最初に苦労してでもしっかり簿記の勉強をしていた人です。休日返上でしっかり勉強して知識を付けると仕事の話が理解できるようになって、段々と楽しくなってくるんだと思います。
なんで、長期株式投資を少しでも楽しくやっていくために、少しずつでも経済金融について勉強していけるといいですね。なんか偉そうなこと言ってますが、私もまだ勉強中ですので。てか一生勉強だと思ってますが。
ってことで、FRBのバランスシート縮小問題の説明。
先ず、バランスシートの大小そのものを見たらダメだと思います。
ダメというか、、少なくとも私はそこを考えても全く理解できません。
FRBのバランスシートが大きいから経済にどう影響するのか?
FRBのバランスシートが小さいから経済にどう影響するのか?
ここを考えても、なかなかわからないと思います。
(もしわかる人いたら、教えて欲しいくらいです。。)
私が思う、このFRBバランスシート問題を考えるポイントして、ストックではなくフローを考えるべきというものがあります。
ストックというのバランスシートそのものってことですね。FRBのバランスシートそのものを見るのではなく、FRBのバランスシートが縮小される過程に注目したほうがいいのかなって思います。
いや、本当はね、問題の本質はバランスシートの大きさそのものにあるとは思うのですよ。FRBのイエレン議長とか、金融の専門家にはわかっているのだと思います。
でも、はっきり言って、素人にはそこはわかりません。少なくとも、私はいくら考えてもわかりませんでした。だからフローに着目して考えるのがいいと思います。バランスシートが小さくなるフローに着目すれば、かなり理解は進みます。
バランスシートが小さくなる過程では何が行われるでしょうか?
いや、行われるといういうか、今まで行わてきたことが行われなくなります。
それは証券再投資です。
FRBは満期がきた米国債やMBSの償還金を今までは再投資することで、拡大したバランスシートの大きさを維持してきました。それを今後はしなくなります。
FRBには、これから4年間で満期を迎える債券が1兆ドル以上あります。これらを今後は再投資しないと言っています。再投資を止めるペースは徐々に早めていくようですが、最初はゆっくり慎重に進めます。
こう考えるとわかりやすいと思いませんか?
要するに、バランスシートを縮小(債券再投資を止める)ことで、今までFRBによって大量に買われてきた債券が、今後は買われなくなるということです。
債券が買われなくなるとどうなるでしょうか?
単純に需要と供給で考えればよいです。
債券に対する買い圧力が減る、債券需要が減退するわけです。
そうすると、債券の価格は下がります。債券価格が下がると債券利回りは上昇します。つまり金利が上がります。金利が上がるってことは、企業の資金調達コストが上昇することになるので経済の過熱は抑えられます。
このように、FRBが債券投資をストップさせることは債券利回りを上昇させるので、利上げと同じ効果が期待できます。なので、FRBのバランスシート縮小には金融引締め効果があるということです。
どうでしょ?
私はこんな感じで自分なりにFRBのバランスシート縮小問題を理解しています。
繰り返しですが、バランスシート縮小の過程でFRBは債券投資から手を引いていくことになります。具体的には以下の指標に直接的な影響を与えるはずです。
①米国債利回りの上昇
米国では長期金利が上がっていません。短期金利と長期金利のスプレッドは縮小傾向です。ですが、今後はバランスシート縮小に伴って長期金利も上昇する可能性があります。そうなれば金融株にはポジティブでしょう。
FRBバーナンキ前議長は短期債を購入した日銀の政策に不備があると考え、長期債を買っています。
②住宅ローン金利の上昇
MBS(住宅ローン担保債券)への再投資を止めるので、MBSの価格が下落します。米国住宅ローン金利の上昇が想定されます。最近米国ではミレニアム世代の住宅購入が増加しており、これが米国消費を支えている面もあります。今後、住宅ローン金利が上昇すれば住宅購入意欲が削がれて消費が停滞する恐れがあります。
③ドル高
米国の金利が上昇すれば、少なくとも教科書的にはドル高円安となります。
以上、理解違いがあれば申し訳ありませんが、FRBバランスシート縮小問題について素人なりに語ってみました。ご清覧ありがとうございました。
お久しぶりです
数年前taperingで大騒ぎしていたのが、こんかいBS縮小にはあまり波風が立たず、隔世の感があります
思うに
このBS縮小という言葉がわかりにくく、みんなが反応しにくいのかもしれませんね
taperingは5,4,3,2,1というカウントダウンで
今回は実質上
0,-1,-2,-3というカウントダウンを続けるという
ほんとは今までのtaperingよりももっと
impactのあることなのかもしれませんが
わざとわかりにくい表現でケムに巻かれているのかもしれません
vaporeさん、お久しぶりですね。
あの時は突然のバーナンキさんの発言に、市場が動揺したのでしょうかね。
今の金融引き締めは、利上げにしろバランスシートにしろ相当慎重に進めている様子がよくわかります。
先日のFOMCでも市場にバランスシート縮小を実行することをしっかり明言していましたし。
明言し過ぎると市場が完全に織り込んでしまって、急な方針転換が難しくなるだろうと思います。
それでもFRBは予め市場にメッセージを発信しているように感じます。
これは、景気が強いことの確信もあるでしょうけど、前回のテーパリング癇癪の反省があるんじゃないかなって推測してます。
おっしゃる通り、バランスシート縮小問題は本質が分かりにくいですね。
バランスシートの大きさそのものに着目して、効果を分析することも米当局はやっているようです。
ですが、私にはわかりません。
バランスシート縮小は今までやったことないから、マーケットは判断し兼ねているのかもしれませんね。
急に長期金利が急騰したらちょっと怖いですけどね。
まあ逆イールドになるよりましですがね!
Hiroさん
水木シーゲルです、
米国は健全な経済を目指すためにマイルドな物価上昇と金利の引き上げで羨ましい限りです。
一方、日本の長期債が2%になったら、日本の利払いが!とか日銀が評価損で債務超過に!とかギャーギャー経済音痴のオンパレードになりそうですね。
FRBの利上げと米国長期債の動きは必ずしも一致しないのが、不確定要素たっぷりの経済ってやつですね。
自分の予想が毎回hitしないのが経済の面白いところです。
例外として、冗談で2015年に国内債券ファンドを大人買いをして、期待をしてなかったのですが、イールドカーブの水没で美味しい思いをしましたが、最高の値段で売ることは失敗しました。
株も好きですが、債券も結構好きです。でも債権が好きって人は聞いたことありません。
地味だし、下落余地が高いからでしょうね。。。。
FRBのBSに関してはモーサテで結構取り上げて解説が面白いですね。
どうも連投ありがとうございます!
企業収益も金融環境も、やっぱり米国が最初に回復しますよね。
最近は欧州企業もかなり回復しているようで、資金が欧州株に流れるのではと報道されています。
おかげさまで米国株は株価絶対額的にも、バリュエーション的にも割安とは言えないレベルですね。
米国株が魅力的だから仕方ありません。
あんま調子乗らない程度に、コツコツまったり投資を続ける時期ですかね~。
焦る時期ではないですね。
>FRBの利上げと米国長期債の動きは必ずしも一致しない
そう、そこ不安要素ですね。
私も同意見です。
米国企業の利益は堅調に見えるのですが、なぜか長期金利が上がらんですよね。
あと賃金も上がらない。
ECBのドラキ総裁はこれを「雇用の質が悪化している」と言ってました。
まあ要するに低賃金の単純労働者、アルバイトや非正規ばかり増えてるってことでしょうね。
なんか株式投資家の間ではよくアーリーリタイヤの話とかでますけど、安易に正社員の職を捨ててはいけないなと思いました。
それにしても、長期金利上がらないのなぜですかね?
当時のグリーンスパン元議長も長期金利コントロールには苦労していましたものね。
イエレン議長も同じ悩みを抱えているかもしれません。
これ以上長期金利のみが下がったら、リセッション入りを予感させるレベルです。
米国株は低ボラティリティで順調ですが、一寸先は闇。
大胆かつ冷静に。
投資は続けつつも、保守的に保守的に。
ですな。
PS
モーサテって何のことかわらなかったですよ!(笑)。
ググったら、モーニングサテライトのことなんですね。
もしネットにFRBの記事あれば読んでみますね。
Hiroさん
水木シーゲルです、
モーサテって言ったら、投資に興味がある人ならば避けて通れない番組です。
早起きなので見てますが、代わりに寝るのは早いのでWBSを見ることなく寝ます。
佐々木さんやシュナイダーさんはベテランですね。
また本日の日経平均や為替の予想のコーナーに関しては。。。。。。。
どーでもいい話ですが、IT関係の仕事をしてるますので、大したProjectでもないのにWBSを出せとか言われることがあります。
その際はワールドビジネスサテライトの事ですか?といって笑わせて誤魔化すことがあります。
WBSとは(Work Breakdown Structure:作業分解構成図)、プロジェクト全体を細かな作業(Work)に分解(Breakdown)した構成図(Structure)なのですが、
1からですと作るのがめんどいです。
水木シーゲルさん、返信ありがとうございます。
そうなのですね、恥ずかしながら「モーサテ」という単語は初めて知りました。
モーニングサテライトという番組は知っていましたが、あまり見たことありませんでした。
水木シーゲルさんがそれほど勉強になるとおっしゃるなら、是非毎日観たいです!
ですが、、調べたら5:45~7:05なんですね。
早すぎる~。
私の毎日の目覚ましの設定は7:19です、中途半端ですが。
夜型なんですよね~。
朝型の方が脳的に良いと思っているのですが、ついついいつも夜更かししちゃう。
モーサテのサイト覗いたら、いくつかは動画がアップさていますね。
これ見れば、ある程度はキャッチアップできるのかな。
あ、お金払えば、バックNOも見れるようですね。
この時間のニュースは生活習慣的にどうしても厳しいので、課金検討してみます。
ご紹介ありがとうございます!!
WBSの話、めっちゃ共感できるw。
システムコンサルの方と一緒に仕事することが結構あって、よくWBSWBSって言っていました。
アクセンチュアとか。
最初はなんのことやろ?って思っていました。
それこそ夜のニュースのWBSのことしか思い浮かびませんでしたね。
Hiroさん
起床時間が4:20の私には5:45からのスタートでも遅いと感じます。
窓を開けて寝れば自然と起床時間は早くなります。
アクセンチャは弊社と同業者的な部分があります。
彼らがWBSって言ってきたら
ワールドビジネスサテライトの大江真理子さんはいいですね!と呆けてみてください。
うけるか、白い目で見られるかどちらかと思います。
モーサテで勉強になるのは、guestのメンツによります。
本気で株ずけになりたい場合は、
スマフォで日経の短波ラジオのsoftをinstallして聞いてみてください。
さらに、日経CMBCを一日中見るといいかもしれません。
そこまでやってもパフォーマンスが上がるとも思いませんが。。。。
水木シーゲルさん、今週も終わりましたね、お疲れ様です。
起床時間が4:20ってめちゃ早いですね!
それはお仕事の為というより、水木シーゲルの生活習慣ということですね。
朝の方が脳が活発に働くというとは、脳科学的に立証されているそうなので理想的な生活習慣かもしれませんね。
それと、やはり軽い運動が脳にはいいそうです。
軽い運動をした直後は、脳が、ぐっすり眠って朝起きたときと同じ活動状態になるらしいですよ。
でもハードな運動はダメだそうです。
早起きの習慣ある方が羨ましいです。
私、なんかですね、、夜早く寝ると時間を無駄にしてしまっている錯覚に陥ってしますのですよね。
そんな変な発想があって、いつも夜中の1時、2時に寝ることが多いです。
で、起きるのは7時半くらい。
モーサテ終わってる。。
アクセンチュアと同業でいらっしゃるということは、きっと夜も遅いのではと思ってしまいますが、そこはきちんとタスクマネジメントして早く帰宅されてるんですね~。
私結構だらだら残業することもあるので、見習いたいです。
>彼らがWBSって言ってきたらワールドビジネスサテライトの大江真理子さんはいいですね!と呆けてみてください。
うん、間違いなく白い目で見られますねw。
コンサルさんとの打合せのときは、結構ピリピリモードのことが多かったです。
色々と情報ツールご存知なのですね。
勉強家なんですね~。
ご紹介ありがとうございます。
スマフォのソフトってアプリってことですよね。
ちょっと検索してみますね。
ありがとうございます。
こんばんは、とてもわかりやすかったです。記事にまでしていただき、ありがとうございます。
金融ってとてもわかりにくいですね。簿記の勉強をしても、サラッとしか金融に関することはでてきませんし、なんか漠然としているっていうか。
バランスシートって言葉も簿記を勉強していなければ多くの方が見たことはあるが、その構造はしらないっていう人も多いでしょうし。いろんな分野があるので、一生勉強しても終わりがないですね。
マネックス証券で開催している広瀬隆雄さんの月1回の米国株講座を聞いていますが、20%ぐらいしか理解できません。それに対してリスナーの方が的確なコメントをしているのを見ると圧倒されてしまいます。
本当に多くの優秀な方が投資されているんだな~って感じます。
みもんさん、こんばんは。
いえいえ、先日はご質問ありがとうございます。
私もFRBのBS縮小問題について、自分なりに色々と考えていたタイミングだったのでグッドタイミングなご質問でした。
せっかくなので記事としてアップさせて頂きました。
私の知識レベルでご説明できるのはここまでです。
わかりやすいかった、と言って頂けて良かったです!
金融は概念的で難しいですし、何より普通に学校生活を送っているだけでは勉強する機会がほぼありませんよね。
簿記もそうかもしれませんが。
社会人になってから、興味を持ちだして独学で勉強せざるを得ない人が大半だから余計に難しく感じます。
やはり先生に体系的に教わりたいところです。
>バランスシートって言葉も簿記を勉強していなければ多くの方が見たことはあるが、その構造はしらないっていう人も多いでしょうし。
あ、、なるほど。
ブロガーとして、とても為になるコメントです、ありがとうございます。
私はバランスシートという言葉は当然知っているだろうという前提で、いつも記事を書いているところがあります。
でもそれは私が会計士で、経理部勤務だからですよね。
普通の人はたとえ株式投資家であっても、BSとかバランスシートとかPLとか聞きなれないですよね。
うん、この辺は記事書きながらも迷うことあるんですよね。
気を付けたいと思います。
>本当に多くの優秀な方が投資されているんだな~って感じます。
ですね~、同じ思いです。
私も寄せられるコメント、メールを読んで同じこと感じています。
非常に刺激的で楽しいです。