20年後、あなたが望もうが、望むまいが現在の仕事のほとんどが機械によって代行される。
元グーグルCEO ラリーペイジ
人工知能があなたの仕事を奪ってしまう。
人々が今行っている仕事の90%はロボットが代行すると言われても、ぶっちゃけそんなに実感湧かないと思いませんか?
「ふ~ん、そうなんだ。」
「まあ遠い未来の話でしょ、うちらにはあんま関係ない話でしょ。」
こんな感じで他人事のように考えてしまうかもしれません。
その気持ち、とてもわかります。
経済紙等ではAIが人工知能が・・と騒ぎ立てますが、仕事の現場は別に数年前とそんなに変わっていないと大企業でサラリーマンをしている身として実感しています。システムを刷新して、より効率的に業務が行えるようになったということはありますが。
経理や会計の現場は人工知能によって奪われやすい仕事だと揶揄されがちですが、そんな経理現場ですらドラスティックな変化はありません。会計士なんて人工知能に奪われやすい士業の筆頭だと言われています(汗)。
ただ、私も含め多くの人がAI社会の到来を「自分事」として捉えることができないのには理由があるんじゃないかと思っています。
※勝手な私の推測です。
それは、人は指数関数的な成長を実感として理解できないということです。
GDPが毎年2%成長すると聞くと低成長のように聞こえますが、毎年毎年2%ずつ成長すると段々とその成長の絶対額は大きくなっていきます。
株式投資をしている人は「複利」という言葉を聞いたことがあると思います。株式投資では最初は小さな投資利益かもしれないけど、コツコツ再投資を積み重ねることで指数関数的に資産が増えていくという意味です。ただ、その複利的成長を実感できる人は実は少ないと思います。今実際に毎月5万円をコツコツ投資している人は、算数的にはいつか自分が億万長者になれると理解できても、きっと現実味は薄いのではないでしょうか。
これが株式投資を気長に続けることの心情的難しさだと思います。配当再投資に飽きて、投機的な日本の小型株などに走ってしまう人がいる理由なんじゃないかと思います(投機が悪いとは思っていません)。
Y=2^x
という数式をエクセルでグラフ化しました。
最初は低空飛行ですが、後半にかけてグワーッと伸びていますよね。まるで飛行機が離陸する時のように、最初は陸地で助走しているけど、一定地点から一気に空に飛び立つ感じです。
これが指数関数的な成長です。
算数ではこうやって理解できるんです。
あなたも中学生の時、数学の2次関数を学んでいるはずです。
机上では理解できる2次関数ですけど、多分現実世界でこの2次関数的な成長を理解するのは難しいんじゃないかと思います。それは現実世界では1次関数的な成長の方が身近だからです。年を重ねるのも一つずつです。勉強してテストで点数を稼ぐのもコツコツ地道に積み重ねる感じです。社会人になって仕事を覚えるのも、挨拶からエクセルの使い方からコツコツ積み上げるイメージですよね。マラソンでゴールに向かうのも直線的です。
半導体業界に勤めている人は仕事で「ムーアの法則(※)」を感じる人もいるかもしれませんが、多くのサラリーマンはそんな指数関数的にビジネスが成長すること、自分自身が成長していることを感じ取るシーンは多くありません。
(※「半導体の集積率は18か月で2倍になる」という半導体業界の経験則)
ただ、ムーアの法則で分かる通り、科学の世界、とりわけITハイテクの世界では指数関数的な成長を遂げることがあります。
というか、人類全体の歴史で見ればまさに経済成長とは指数関数的な成長を遂げてきました。
ジョン・F・ケネディは、ライス大学での演説で5万年の人類の歴史を1000分の1の50年間に縮小させて、こんなたとえ話をしました。
最初の40年間については、人は動物の皮を体に巻き付けられるようになったこと以外、ほとんど何もわかっていません。
10年前、人類は洞窟から出て住処をつくり始めました。
文字を書き、台に車輪を付けることを習得したのは、5年前。
キリスト教が始まったのは、2年前。
印刷技術は今年になって発明され、蒸気機関が新しい動力として誕生したのは、たったの2か月前です。
ソ連に先を越された米国が、宇宙開発事業に本気で乗り出すことを宣言することがこのスピーチの目的でした。
別名Moon Speech。
先人たちが築き上げきた技術革新の波を我々の世代で途絶えさせることはできない、というケネディ大統領の意志が宿っているようです。
人類の歴史を50年で見ると、蒸気機関が発明されたのはここ2カ月の出来事なんです。ここまで製造技術が進化してきたのは、人類の歴史で見ればつい最近のことなのです。
繫殖力の強い細胞がいて、その細胞は1分毎に1度分裂します。その細胞をシャーレに入れると60分でシャーレは細胞で一杯になりました。そのシャーレが半分になるのは何分後でしょうか?
答えは59分後です。
最初の59分で半分が満たされ、ラスト1分でもう半分が一気に埋まる。
人工知能の進化もこれら例に漏れず、指数関数的な成長を遂げる領域です。AIのディープラーニングでは、インターネット上のあらゆる情報(画像)にタグ付けしていきますが、それは人が個別にタグ付けするスピードとは格が違います。
人工知能という分野は2008年頃にもありましたが、当時は研究者にとって斜陽分野だったらしいです。それが近年急速に話題になってきました。
基礎研究のレベルを超えて一般市民の間に広くその情報が広まるというのは、人工知能研究も実用レベルに到達するまで相当終盤にあるのかもしれません。専門ではないので詳しくはわかりませんが。
氷山の一角が見え始めたら、氷山全体が見えるまではあっという間かもしれません。
シャーレに満たした細胞が半分になるのは最初の59分で、残りの半分はラスト・ワン・ミニッツで起こるのです。今は果たして何分目なのでしょうか?
わかりません。
でも、、59分に近づいているのではないでしょうか?
大衆にニュースが行きわたるというのは、それくらい時が経過しているからだと思います。
ところで、「ナッシュ均衡」という言葉を聞いたことありますか?
経済学の用語です。ググれば色んな専門的な説明が出てくるはずですので、興味のある方はググってみて下さい。
で、私はそんな経済の専門家でもないのでナッシュ均衡について学術的な説明はできません。
失礼ながらざっくりテキトーに説明します。
(間違ってたらすみません。)
ナッシュ均衡とは、言いたいけど言い出せない、ウジウジ、もぞもぞしている感じです。「なんかおかしいな~っ」て思っているけど周りを気にして言えない。キョロキョロと周りの様子を観察している感じでしょうか。空気を読んでいるみたいな、日本人的な感じです。
う~ん、例えて言うなら、漫画「ドラえもん」の中でジャイアンが公園にみんなを集めて開催するリサイタルです。
「おれはジャイアン ガキ大将~」
のび太もスネ夫もしずかちゃんも、み~んな心の中では嫌がっているんです。
(は~、また始まったよジャイアンのリサイタル)
(下手だしうぜえな~、)
(まじ消えろよ、このゴリラ野郎)
(もうーー、うるさい!!)
ってみんな心の中で思っているわけです。
でも誰も言い出さない。大人しく耳を押さえて下を向いて我慢して聞いてます。「うるさい!」なんて言ったらジャイアンに殴られるから、誰も言わない。怖くて誰も言えない。
全員沈黙という行為を取り続けることが自分の利益になると判断しています。
↑
ナッシュ均衡
でも、のび太君が勇気を出してジャイアンに文句を言いました。そう、のび太君はとても勇気があるんです。最終回でジャイアンに一人で勝負に挑んだ男です。ここぞという時に勇気を出して行動できるのがのび太君なんです。
のび太「えーーい、ジャイアン、うるさいぞ!! 誰もお前の歌なんか聞きたくないんだよ!」
ここで周りはちょっと動揺します。
ジャイアンの顔がみるみる紅潮していきます。
(え、のび太、何を言い出すの? やべえぞ、ジャイアン切れるぞ。)
(のび太の奴、なに急にカッコつけてんだよ。大人しくしとけよ!)
周囲は無意識の内に損得計算します。
のび太に賛同するか、依然としてジャイアンに平伏しておくか。
(いや、ここはまだジャイアン側に付いておくべきだ。)
その時、のび太を支持したいしずかちゃんが、勇気を出してこう言います。
しずか「そうよ、のび太さんの言う通りよ! たけしさん、もう大声で歌うのは止めて! ね、ドラちゃん?」
ドラえもん「え、お、おお、そうだそうだ、ジャイアン止めろ!」
のび太君、しずかちゃん、ドラえもんがジャイアンに反旗を翻しました。するとどうでしょう、周囲の同級生たちも、みんな一斉にのび太側に加勢し始めます。
↑
ナッシュ均衡が崩れた瞬間
脇役A「そ、そうだ、そうだー、俺だって本当はジャイアンの歌なんて聞きたくねーんだよ。」
脇役B「俺もだ!」
脇役C「私も!」
脇役D「僕もそうだ!」
スネ夫「そうだそうだー、のび太の言う通りだー!」
ジャイアンの形勢が一気に不利になりました。
とどめの一撃に、妹のジャイ子がこう言います。
ジャイ子「お兄ちゃん、もう止めて!(涙)」
もうジャイアンの手からマイクは離れています。
ジャイアンの負けです。
リサイタルは中止です。
みんな解散!
「ナッシュ均衡」とはこんな感じだと理解しています。
「なんかおかしいよな~」ってみんな思っているんだけど、周りの出方をうかがって自分は行動しない。だからその奇妙な均衡状態は続きます。でも、誰かがパイオニアになって、のび太君のように行動し始めます。それは何も失うものがない若い世代が中心だったりします。そうやって、誰かが行動し始めると「あ、やっぱりそうか!」と周りも流されて行動し始める。
そうすると、ナッシュ均衡は堰を切ったように崩壊し始めます。
ナッシュ均衡は意外としぶとく継続するのですが、崩れる時は一気に崩れる感じです。
AIのような指数関数的な成長をしている技術は、このナッシュ均衡が崩れる時のように急に世の中を変えていく可能性があると思っています。
急に来るんです。
AIの進歩はこんな感じで指数関数的です。
突然、実用レベルまで技術が進歩することがあり得ると思います。
じゃあ、私たちの仕事が突然無くなるのか?と聞かれれば、それにはNOと答えます。
なぜなら、科学が進歩しても法律などの社会制度がそれにオンタイムで追いつくのは、無理だからです。
科学の進化は指数関数的ですが、政治の動きは1次関数的です、しかもかなり緩やかな1次関数です。
でも、いつかはラリーペイジ氏が言う通り、人の仕事はAIに取って替わられると思います。それは失業というより、労働解放としてポジティブに捉えるべきだと思います。
ただ問題はもちろん所得です。
カネです。
人工知能の労働に課税してベーシックインカムとして広く配布して、働かずとも人々は所得を得られる日が来ると思います。
(その税務制度を制定するのは大変な作業で時間が掛かると思いますが。)
そうなると、もはや所得の格差はなくなるかもしれない??
みな仕事をする必要がなく、すべての人に政府が均等にお金を配るから。。
そうでしょうか?
長期的に見ても、仕事はすべて消えるわけではありません。
アートの要素が強いコンテンツ産業の類は残り続けると思います。そこで価値を発揮できる人は、人より多くのお金を稼いでいい生活を送れることでしょう。
資本主義経済は、周囲の人に評価され承認欲求を満たされたいという人々の欲望に動かれて、そのシステムが稼働しています。
AIですべての人が労働から解放されて、みんな平等に所得を得て一億総中流時代が再び訪れたぞ~、とは多分なりません。他人よりもいい生活を手に入れたいという人間の根源的な欲望が、AI社会になったからって消えるわけではないでしょう。
AI時代に価値を発揮できるのは、ウォルト・ディズニーのようなクリエイティブなコンテンツメーカーだけではありません。ウォルト・ディズニーに出資している資本家も、AI時代に周りより抜きんでて社会に価値貢献できる、すなわちお金を稼げる存在です。
企業のリスクテイカーという職業は、今後100年、200年と生き残り続けます。
資本主義が崩壊しない限り、生き残ります。
いつか来るAI時代に備えて、株式投資を地道に続ける人は経済的に勝ち組に入れると確信しています。
確かに法制度が追いつかない面があるかもしれませんが、技術が先行して世の中を変えて、それに法律が後追いするのはハイテク産業の常です。
いづれAIは社会を変えると思います。
世間一般にまでニュースになることがそれを物語っていると感じます。
そしてその変化は急激に来ると思います。
ナッシュ均衡が崩れる時は、一気にドカンと崩れます。
ラスト・ワン・ミニッツに備えて、株式投資を続けましょう。
ジャイアンへの謀反に備えて、株式投資を続けましょう。