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自己資本比率30%のマイクロソフトがトリプルA格付をゲットできる理由

      2018/01/14

米国企業でスタンダード・アンド・プアーズやムーディーズなどの格付機関から、トリプルA格付けを貰っている会社は超レアです。私が知る限りでは、ジョンソン&ジョンソンマイクロソフトの2社だけです。かつてはエクソンモービルやファイザーもトリプルAだったと記憶していますが、今では両社とも1ノッチ引き下げられています。

格付が高い=優良企業と思われがちですが(それはあながち間違いではないけれど)、格付が高いからって投資対象としても有望とは限りません。格付機関は収益性ではなく財務安全性を評価しています。いくら高収益な企業でも、高いレバレッジをかけていて利息負担が重い企業の格付けは低くなります。財務格付は負債提供者にとっての企業の魅力度を示しているのであって、資本提供者(株主)にとっての企業の魅力度は示しているわけではありません。

そりゃ、株主にとっても企業の財務が安全であることに越したことはないですが、負債を全く活用せずに安全運転に徹するだけの企業に投資しても高いリターンは期待できません。株式投資家にとっては、適度に負債を利用している企業の方が投資対象としては魅力的です。

 

マイクロソフトの自己資本比率はたったの30%

さて、S&Pなどの財務格付けは収益性ではなく財務安全性を評価した指標なわけですが、その財務安全性を測るもっともオーソドックスな指標と言えばなんでしょうか?

自己資本比率という指標があります。

自己資本比率=純資産 / 総資本(負債+純資産)

企業のバランスシートの右側は資金の調達手段を示しています。企業が調達した資金のうち、いくらが自前で準備したものなのかを示すのが自己資本比率です。負債が40、純資産が60なら総資本は100です。この時、自己資本比率は60%(60/100)となります。

純資産とは株主からの出資金と過去の利益の積み上げ(配当控除後)です。負債、つまり借金には返済義務がありますが、純資産(資本)は返済義務がありません。負債に頼らずなるべく純資産(資本)の範囲内で事業を運営する方が資金繰りは安全です。一般的には自己資本比率が高ければ高いほど、財務安全性は高いと言えます。

日経新聞によると米国企業の自己資本比率の平均は42%です。自己資本比率が42%以上あれば平均的米国企業よりも財務は安全ということです。
(あくまで、自己資本比率という指標のみで評価した場合)。

じゃあ、米国企業として超レアなトリプルA格付けを維持しているマイクロソフトの自己資本比率は何%だと思いますか?

直近年度決算である2017年6月末のマイクロソフトの自己資本比率は30%です。

え、、トリプルA格付けのマイクロソフトの自己資本比率ってたったの30%しかないの!?

マイクロソフトはがっつり借金しています。特に最近は低金利だったこともあり負債を増やしています。海外留保利益という莫大な現預金を保有していますが、米国内に戻すと課税されるので、その現金には手を付けずに借金を増やしてきました。2013年6月末には55%あった自己資本比率は2017年には30%台にまで下がってしまいました。

 

格付評価を決めるのは自己資本比率にあらず。大事なのはキャッシュフロー

借金しまくって自己資本比率が30%台まで下がってしまったマイクロソフト。では、なんで米国企業平均以下の自己資本比率しかないマイクロソフトがトリプルA格付なのでしょうか?

その理由の一つとして、負債に見合うだけの現預金を持っていることがあります。それは銀行や社債投資家にとっては安心材料です。短期資金が十分にあれば、何か不測の事態が起こった時にすぐに返済してもらえますね。

でも、それだけではトリプルA格付をゲットすることはできません。米国の格付機関の評価は厳しいです。あなたはもしかしたら、リーマンショックの印象が強く残っていて、米国の格付機関に不信感をお持ちかもしれません。確かに、リーマンショックの時にS&Pなどの格付機関はサブプライムローン債券に対してトリプルA格付を付与していました。あれは格付機関の判断ミスとしか言いようがありませんね。

ただ、格付機関を擁護する気は全くありませんが、ああいう証券化商品はやや特殊です。ハンバーグみたいなもんです。見た目は美味しそうなハンバーグだけど、ひき肉の一部に腐った肉が使われていました。他の挽肉は優良ですから、混ぜこぜした後のハンバーグ自体は美味しそうに見えるわけです。格付機関は毒が混じったハンバーグにトリプルAを与えてしまいました。ハンバーグの中身の挽肉のクオリティーなんて知らんわ、という言い訳はダメだと思いますよ。格付機関はプロとしてハンバーグの本質を見抜く責務があったはずです。

企業の財務格付の評価は、CDOなどの証券化商品の評価に比べるとシンプルです。企業はハンバーグではなくステーキって感じでしょうか。肉1枚だけなので、ハンバーグみたいに毒のある挽肉が混ざることはありません。バランスシート構成が複雑な企業は確かにありますけど、所詮1法人の財務評価です。色んな証券化アセットがぐちゃぐちゃに混ざった金融商品の評価に比べれば企業の財務評価は簡単です。なので、企業の財務格付を誤るリスクは低いです。正確に格付が付与されていると考えてよいでしょう。

リーマンショックで印象が悪くなったかもしれませんが、米国の格付機関の評価は厳しいです。ケースバイケースですが、ざっくり言えば米系格付機関の方が日系格付機関よりも1ノッチ厳しいです。日本でシングルAでも米国ではトリプルBって感じですかね。

で、ちょっと話戻しますね。自己資本比率30%しかないマイクロソフトがなんで厳しい米国の格付機関からトリプルAを貰えるのかって話です。

その最大の理由は、キャッシュフローです。米系と日系の格付機関の評価目線で一番違うところが、米系はキャッシュフロー中心で日系はバランスシート中心で評価するという点です。もちろん、どちらもキャッシュフロー、バランスシート両方見ているのですが、米系格付機関は圧倒的にキャッシュフローを重視しています。

米系格付機関は自己資本比率なんて数字は参考程度にしかしません。営業キャッシュフローを重視しています。負債が増えることは一般的に財務格付に悪影響と思われがちですが、米系の格付機関は適度な負債はむしろプラス評価します。負債が増えても、それをうまく活用して営業CFが増えるならそれは債権者にとってもポジティブだと判断するわけです。

格付機関(特に米系)が重視する指標の一つに、インタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)というものがあります。

ICR=(営業CF+金融収益) / 支払利息

本業の収入で支払利息の何年分を稼いでいるかを示しています。ICRが高ければ高いほど財務は安全だと評価されます。ICRに絶対の目安はありませんが、10を超えれば超優良だと見て差し支えありません。1年間の営業キャッシュフローで10年分の利息を稼いでいるということは、よほどのことが無い限り負債の返済が滞ることはありません。

企業の財務安全性を測る時は、自己資本比率よりもICRの方がよっぽど大事です。特に米国企業のようにバランスシートに載っていない無形資産をたくさん保持している場合、自己資本比率という数字はもはや何の意味も持たないと言っても過言ではありません。優良企業になればなるほど、バランスシートよりもキャッシュフローを重視すべきです。

では、マイクロソフトのICRはいくらでしょうか?

2017年6月期決算データからやや簡便的ではありますが算出してみました。マイクロソフトのICRは約18倍でした。

わーお!!さっすがマイクロソフト。ICR18倍とは超優秀ですね。

マイクロソフトの負債比率は70%です。負債比率は自己資本比率の逆数です。バランスシート右側の7割が負債なわけです。そのすべてが有利子負債ではありませんが、平均的米国企業よりも多額の借金を抱えているのは間違いありません。

借金が多いということはその分利息負担も重いです。にも関わらず、マイクロソフトのICRは18倍もあるわけです。借金の利息なんて余裕で返済できているわけです。なぜかと言えば、マイクロソフトがぼろ儲けしているからです。本業でメチャクチャ儲けているから、借金が多くても利息を余裕で返済できているのです。

マイクロソフトのPLとキャッシュフロー計算書を見れば一目瞭然ですが、もう凄まじい収益力ですよ。米国企業ナンバー1と言えるかもしれません。営業CFマージンは40%を超えています・・。
こちらをクリックするとマイクロソフトの財務データに飛びます。ご参考までに)

マイクロソフトのバランスシートを表面的に見ると、とてもトリプルAの企業には見えません。だって、自己資本比率がたったの30%しかないんですもの。。でもね、自己資本比率なんてほんの参考程度にすべきです。大事なのはキャッシュフローです。キャッシュフローが全てです。結局、キャッシュを稼ぎまくっている企業は、資本提供者にとっても負債提供者にとっても魅力的だということです。

多額の借金を抱えているマイクロソフトがトリプルAを貰えているのは、莫大な営業キャッシュフローを稼いでいるからです。

Cash is king

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