長期的な株式投資では、あまり株価にこだわり過ぎることなく定期的に買い増していった方がいいと思います。というのも、あまりに底値を狙い過ぎてもその「底値」になることは永久になく、結局投資機会を逸してしまうことが多いからです。

「頭と尻尾はくれてやれ」、「素晴らしい価格でほどほどの企業を買うのではなく、素晴らしい企業をほどほどの価格で買う (byバフェット)」という投資スタンスがいいかな~と。僕はこういうスタンスでいます。なので、基本的に毎月投資をしています。ちょっと割高かな~と思う時でも、えいや!で買っちゃうことが多いです。ま、そのせいで含み損になっている銘柄が多数あるので説得力はないのですがねw。ただ、まだまだ米国株投資初めて2年半ですから。「これからこれから~」って思ってます。

株のバリュエーション判断って難しいです。日々、ウォール街のエリートと複雑にプログラミングされたシステムが売買を繰り返して株価が値付けされています。マーケットはまあまあ合理的であらゆる情報を織り込んでいますから、特に大企業の株価が割安に放置されることは少ないです。そういう意味でも、定期的に買い付けることをおススメしたいです。

とは言え、株式マーケットは人間の感情が動かしていますから優良企業の株が一時的に割安になることだってあります。リーマンショックの時、米ドルは紙切れになるとさえ囁かれました。今だから言えることですが、2008年当時の米国株価は過度に売られていたと言えるでしょう。あの時果敢にリスクテイクできた投資家は、その後大きなリターンを得ることができました。

マーケットは常に合理的というわけではありません。感情ある人間が株を売買しています。不安が不安を呼んで、株が売られ過ぎることがあっても何ら不思議ではありません。

では、何を以って割安と判断すればいいのか?
株価が暴落したからって、そのチャートだけ見て割安と判断するのは早計です。

私は、以下の3つの条件が揃ったらその株は割安と判断することにしています。

①PERが11倍まで下がる
②米国内だけでなくグローバルにビジネスを展開している
③高収益な優良企業

 

①PER11倍=益回り9%=インフレ率2%なら実質7%のリターン

PERが11倍ということは益回り(PERの逆数)は9%です。インフレ率2%を加味しても実質で7%のリターンを確保できるPERが11倍です。

PERは今の利益の何倍で株が買われているかを示した指標です。EPS10円で株価110円ならPER11倍です。あくまでも今の利益をベースに益回り9%なのであって、これから増益していけば投資額に対する収益率はもっと向上します。

ただ、今後利益が上昇するか否かなんて確実なことは何も言えません。どんな優良企業であっても衰退するリスクはあります。たばこ会社のフィリップモリスやアルトリア・グループが50年後も元気に存続しているかは分かりません。

ただ、PERが11倍ってことは、今後利益がインフレ率と同率しか成長しなくとも実質で7%のリターンを確保できることを意味します。近年、米国は2%程度のインフレ率になっていますのでこれを前提に考えています。仮にほとんど利益成長できなくとも、実質ベースで7%のリターンを得られるのがPER11倍という数字です。

米国株は過去100年歴史的に実質7%弱のリターンを残してきた実績があります。株式のリスクに対するリターンは概ね7%くらいだとマーケットは無意識に認識しているのでしょう。私はこの傾向は今後も変わらないと思っています。

2017年のような投資家に優しい凪相場が続くとリスクプレミアムが消失する可能性もあるとビビっていましたが、嬉しいことに今年はボラティリティが復活しています。株式に対する恐怖感が徐々に蘇っているように感じます。明確な根拠はないですが、21世紀も米国株は平均して実質リターン7%を提供してくれると思います。ちょっと下がるかもですが・・。

だから、物価調整後の実質ベースで7%という基準を僕は持っています。

あとは大事なのが将来のインフレ率です。インフレ率がどうなるかで実質7%を得るのに必要な名目リターンは変わってきます。

実質リターン インフレ率 名目リターン
7% 1% 8%
7% 2% 9%
7% 3% 10%
7% 4% 11%
7% 5% 12%
7% 6% 13%

私が想定しているシナリオはインフレ率2%です。FRBがインフレ目標として設定している数字です。

FRBが金融政策をミスるリスクは常にあるわけで、インフレ率がもっと上がる可能性はあります。利上げが後手に回れば物価が急伸するリスクはあります。しかし、失業率が下がって労働市場が逼迫してもそれほど賃金が上がっていない現状を見るにつけて、僕はインフレ率がかつてのように急激に上がることはないだろうと予測しています。ってことで、2%程度のマイルドなインフレが続くという楽観シナリオで考えています。

ってことは、実質7%を得るために必要な名目リターンは9%です。益回り9%ってことは、その逆数のPERは11.1倍(=1÷9)となります。

 

②グローバル

あとはグローバルにビジネスを展開していることも求めます。というのも、PER11倍が割安と言えるためには、今後インフレ率(2%)以上の利益成長が必要だからです。

PER11倍なら利益がインフレ率と同じペースでしか成長しなくとも7%の実質リターンを得られるわけですが、実際にインフレ率程度しか利益が成長しないならばPER11倍は割安でも何でもなく妥当な株価だったということになります。実質リターン7%は十分とは言えるけど、割安なタイミングで投資できたリターンとは言えないですね。

あくまで利益がインフレ率程度しか成長しないだろうとマーケットに思われてPER11倍となっているけれど、実際には長期でインフレ率以上にもっとグイグイ利益が成長するからPER11倍が割安と言えるわけです。須らくPER11倍=割安とは言えません。利益が長期的に下落するならPER11倍でも割高です。

今後の大きな利益成長の余地がある企業は、やはり米国内だけにとどまらずグローバル(特に新興国)でビジネスを展開できる企業だと思います。たとえば、コカ・コーラやペプシコ、アップルなどです。法的に米国内だけでのビジネスとなるベライゾンコミュニケーションズやAT&Tの場合、PERが11倍でもそんなに割安とは思いません。

 

③優良企業

最後の条件が高収益な優良企業であることです。

優良企業ってなんやねん!?
って言われるのは分かってますw。

まあ、明確な定義はないんですけど、俗に言う広い経済的な濠(エコノミック・モート)を持つ高収益な企業です。圧倒的なブランド力や、ネットワーク効果を有するビジネスを持つ企業です。具体的に言えば、ペプシコやクラフト・ハインツのブランド力は今後50年も安泰でしょう。むしろ時が経つに連れてブランド力は高まっていくはずです。ブランドの本質は「時間」であるというのが持論です。マイクロソフトのオフィスソフト(エクセル等)のネットワーク効果はめちゃ強く、これからも高収益な体質で居続けるだろうと思います。

こういう「優良企業」である必要があります。長期投資ですから。PER11倍なら利益がインフレ率と同じペースでしか成長しなくとも実質で7%のリターンだと言いましたが、それは今後50年超企業が存続していることが大前提です。インフレ率程度の利益成長ってしょぼいかもしれませんが、50年間も存続し続けて(インフレ率程度であれ)利益が成長し続けるのはすごいことです。並みの新興企業ができることではありません。

割安どうこうの議論は一旦置いておくとして、長期投資では「優良企業」を選んだ方がいいです。冒頭に掲載したバフェットの言葉をいつも胸に留めています。

素晴らしい価格でほどほどの企業を買うのではなく、素晴らしい企業をほどほどの価格で買う

ウォーレン・バフェット

 

 

まとめ&具体例。割安な株価なんて滅多に訪れないね~

もう一度、私が思う割安の3条件を書きますね。

①PERが11倍まで下がる
②米国内だけでなくグローバルにビジネスを展開している
③高収益な優良企業

繰り返しになりますが、PERが11倍ってことは益回り9%です。今後インフレ率が2%程度で推移すると想定した場合に、歴史的な株式実質リターンと同じ7%のリターンが得られるのがPER11倍です。これから利益がインフレ率と同じ2%しか成長しなくとも、7%の実質リターンを確保できるのがPER11倍です。

要するに、実質的に利益横ばいでも歴史的平均と同じだけの株式リターンを得られるバリュエーションがPER11倍ということです。

「時に裏打ちされた優良企業」でしかもグローバルにビジネスを展開している企業は、長期ではインフレ率以上に利益成長できると期待できると思うわけです。S&P500平均くらいの利益成長が期待できると思うのです。マーケットはインフレ率程度の利益成長しか期待していない。でも実際は市場平均と同じか、それを上回る利益成長を達成できるはず、、だから割安。こう発想してます。

 

最後に具体的に計算してみましょう。

②グローバルと③高収益な優良企業の条件に当てはまる企業を適当にピックして、PER11倍としたときの株価を出してみましょう。株価=EPS×PERですね。EPSはYahoo Financeにあるアナリスト予想(中立)を使用します。

企業名称 PER11倍とした時の株価 実際の今(5/12)の株価
コカ・コーラ 23ドル 42ドル
ペプシコ 62ドル 97ドル
フィリップモリス 58ドル 81ドル
マイクロソフト 40ドル 97ドル

どうでしょう、、どの企業も今は割安な株価とは言えませんね。最近フィリップモリスが暴落しましたが、それでも私が考える割安基準には全くもって引っかかりません。コカ・コーラの株価が23ドルなんて信じられない株価です。でも、これくらいまで下がって本当に割安だと言えると思っています。

こんな水準まで暴落することを待っていたら、一生投資する機会が訪れないかもしれません。なので、仕方なくバリュエーションを意識し過ぎることなく、毎月投資するようにしています。先日、暴落したフィリップモリス株に30万円ほど投資しましたが、そんなに割安感を感じているわけではありません。フィリップモリス株がもし50ドル台に突入したら、その時はリスク承知で全力で突撃することを検討します。

僕はグローバル優良企業については常に「調整後EPS×11」ないし「予想EPS×11」を頭の中で計算しています。それが割安な株価だと考えていますから。でも、そんな理想的な株価に出会ったことは未だかつて一度もありません。ま、私が個別株投資を始めたのは2017年ですから経験が浅すぎるだけですがね・・。リーマンショックの時は、きっと僕が掲げる割安株3条件に引っ掛かる銘柄がたくさんあったことだと思います。だからって、あんな恐怖感渦巻くときに投資するのは相当な胆力が必要ですけどね。

この割安3条件はどのファイナンステキストに書いてない素人投資家Hiroの勝手な基準です。あまり気にしないで下さいね(笑)。でも僕は真剣にこれを割安な株価の基準にしています。こういう自分なりの基準を持っています。正しいか分からないけど、これが私が考える「割安」な株価なんです。

自分なりの投資の基準を持っておくこと自体は大切だと思います。それが正しいかどうかはさて置き。どうせ絶対に正しい基準なんてないんですから。そもそも将来のインフレ率次第で、私の考える割安株の条件も変わりますからね。インフレ率が本当に2%で推移するかどうかは分かりません。

とにかく、自分なりの判断軸を持っておくことは重要だと言いたいです。そうでないと、ただ株価が暴落しているチャートだけを見て「割安」と判断してしまい、虎の子のマネーを思いっきり放り投げてしまうかもしれません。