少し長いですが、今週のバロンズの一節を引用します。

クレディ・スイス証券で株式ストラテジストを務めるパトリック・パルフリー氏は、高配当利回りのセクターを2種類に分類している。

一つ目は、公益事業、不動産投資信託、電気通信サービスなど伝統的に利回りに敏感なグループだ。一方、生活必需品とヘルスケアを別のグループとしているのは、少なくとも理論的には、その一部が株主還元のための多額のキャッシュを創出できることによる。

バロンズ(下線は私が勝手にやったもの)

米国株のセクターは11あります。最近新しくコミュニケーション・サービスセクターが誕生しましたが、それ以前の旧来のセクター分類です。

・生活必需品
・一般消費財
・情報技術
・エネルギー
・金融
・資本財
・電気通信
・公益事業
・資本財

・素材
・不動産

バロンズはこの中でも特に、公益事業と電気通信の2つを「伝統的に利回りに敏感なグループ」と表現しています。

「伝統的に利回りに敏感」とは、、なんてわかりづらい表現なんだ(笑)。

まあ、バロンズの表現方法の問題はちょっと横に置いておくとして、実は私もバロンズと同じことを思っています。公益事業と電気通信は他のセクターとは違った、ちょっと異質なセクターです。

何が特殊かと言うと、ビジネスが法規制で守られているという点がです。

公益事業はガスや電力といった国民生活に欠かせないインフラを担っており、特段供給責任が重いです。万が一、事業者が破綻したり撤退したら住民は大混乱です。公益企業は常に一定のマージンが確保できるような売値を設定することができます。

電気通信セクターの企業とは、具体的にはAT&T、ベライゾンコミュニケーションズ、Tモバイル、スプリントなどです。

電気通信事業は昔はAT&Tの実質独占でしたが、今は少なくとも法的には参入規制が緩和されており独占ビジネスではありません。しかしながら、通信インフラは電力・ガスに負けず劣らず生活の基盤となっています。通勤電車内の風景を見れば一目瞭然ですよね(みんなスマホをいじっている)。通信インフラがなければ、私は大好きなマリオカートのオンライン対戦もできないし、YouTubeも観れません。

通信インフラは供給責任が重いビジネスなので、FCC(連邦通信委員会)の様々な規制を受けています。

法規制どうこうもありますが、電気通信事業は過去積み重ねてきた莫大な設備投資の下でビジネスをやっており、他者が参入するのは困難という側面もあります。

あと、同じ地域で通信インフラを提供する会社が複数存在する意義が薄いのも、競合が参入しずらい理由の一つです。清涼飲料というマーケットでは、コカ・コーラ、ペプシコーラ、ファンタ、三ツ矢サイダーなど色んな製品にチャンスがあります。それぞれ風味も味も違いますから。でも、通信インフラは会社毎に差別化するのが困難です。大きな1社がいるのに、そこにわざわざ同じサービスを携えてやってくる会社は多くありません。

そんなわけで、電気通信セクターは公益事業ほどではないにしても、比較的法規制等によって守られたビジネスです。私はそう解釈しています。

各セクターに対して、私はこんなイメージを抱いています。

公益事業のリスクがもっとも低く、次に電気通信セクターのリスクが低いだろうと考えています。リスクが低いってことは、その見合いとして期待リターンも低いことを意味しています。

私はベライゾンコミュニケーションズ(VZ)とAT&T(T)に投資していますが、上記を理解した上で(つまり期待リターンはやや低いだろうと承知の上で)、保有し続けています。今後も最大でポートフォリオの10%くらいは電気通信でいいかな~と思っています。

それは、VZやTの配当利回りが高くて私好みだからです。期待リターンの低さを承知しながらも、高い利回りに惹かれています。Tなんて今6%も利回りありますからね~。配当好きにはたまらんっす。

一方で、公益株には今のところ一切投資していません。電力会社等の公益銘柄は確かに配当利回りは高いですが、事業リスクが全セクターの中でもっとも低く、長期的なリターンがやや期待できないだろうと見ているからです。それは電気通信セクターも同じなのですが、公益セクターはより一層長期的なリターンが弱いかな~と思って避けています。

これは一般論として、公益セクターを避けるべきという意味ではありません。私は自分のリスク許容度が比較的高いと自覚しているので、リスクが低めの公益セクターをポートフォリオから外しているだけです。

リスクを調整したいときに、公益株をポートフォリオに含めることは合理的です。ただ、長期的なリターンは他のセクターより期待できないと、承知の上で投資する必要はあります。

平たく言えば、公益事業と電気通信は株式の中では比較的ローリスク・ローリターンということです。両セクターは、ポートフォリオのリスクを抑えて運用したいときに非常に便利です。あと私のようなインカム好きの投資家にもオススメです。