※2019年2月期決算データ反映、コメント刷新(2019/8/4)

S&P100構成銘柄を中心に米国企業の業績、財政状態、キャッシュフロー、株主還元状況について過去10年分のデータをグラフ化しています。

データソースはMorningstarです。

今回はコンステレーション・ブランズ(STZ)をご紹介します。

基本情報

会社名 コンステレーション・ブランズ
ティッカー LOW
創業 1946年
上場 1979年
決算 1月
本社所在地 ニューヨーク州
従業員数 9,600
セクター 生活必需品
S&P格付 BBB
監査法人 KPMG
ダウ30 ×
S&P100 ×
S&P500
ナスダック100 ×
ラッセル1000

地域別売上構成比

米国内売上高が97%を占める

セグメント別売上構成比

業績

キャッシュフロー

バランスシート

資産

負債純資産

株主還元

連続増配年数

3年

過去3年の配当成長

年率+47.1%

この3年で配当は3.1倍になりました。

過去の株主リターン(年率、配当込み)

過去10年(2009~2018):+26.7%
過去20年(1999~2018):+17.2%  

バリュエーション指標(2019/8/4時点)

予想PER:15.3倍 最新情報はこちら

配当利回り:1.6% 最新情報はこちら

コメント

コンステレーション・ブランズ(STZ)は米国、メキシコ、ニュージーランド、イタリア、カナダでアルコール飲料事業を展開しています。売上高の約6割強がビール、4割弱がワイン・スピリッツです。

もともとはワイン会社として1945年に創業した会社で、多数の有名ワインブランドを保有しています。具体的には「ロバート・モンダヴィ」、「メイオミ」、「エスタンシア」、「ノビロ」などがあります。

ビール事業が成長エンジン。きっかけは2013年にメキシコビール「コロナ」や「モデロ」など複数のビールブランドの米国販売権を取得したこと。ベルギーのビール大手アンハイザー・ブッシュ・インベブがメキシコの同業グルーポ・モデロを買収する際に、独占禁止法に引っかかってやむを得ずコンステレーション・ブランズに売却しました。

私は仕事でそれなりの数のM&Aを見てきたと自負していますが、もっとも成功確率の高いM&Aが独占禁止法の観点からやむを得ず売却を迫られた事業を買うケースです。M&Aは高値掴みのリスクがあるものですが、この独禁法に絡むM&Aは買い手優位です。売り手は事業売却を早期に取りまとめないといけませんから、買い手は交渉で有利な立場にあります。また、独禁法でやむを得ず売却する事業なので収益性の高い事業であることが多いです。本来なら売る気のなかった優良事業を、仕方なく売っているということですから。買い手からすれば、優良事業を割安とは言えなくてもそこそこ妥当な金額で買うことができます。

こういう独禁法に絡んだM&Aは運もあります。ラッキーとも言えます。「棚ぼた」的な面は否定できません。とにもかくにも、STZはグルーポ・モデロから超優良ビール事業を継承することができました。

最近は健康志向もあって、ビールの中でも低カロリーなライトビールが人気です。コンステレーションは「コロナ・プレミアム」というブランドのライトビールを発売して、この市場でも存在力を示したいと考えています。

STZがさらなる成長の糧を求めて目を付けているのがマリファナ(大麻)です。2017年にカナダの大麻栽培会社キャノピー・グロースの株式を9.9%取得することで合意しました。STZの出資額は約220億円です。今後全米で合法化されることが期待される大麻市場への足掛かりになることを期待しています。

財務データを見てみましょう。

売上高はFY12を底に右肩上がりで成長しています。FY13に大きく成長しているのは上述した通りコロナビールなどの販売権を継承したためです。そのビール事業が牽引して順調に売上・利益ともに伸びています。粗利率は改善傾向。

FY18の売上高は81億ドルで前年比+7%。ビール事業が13%の成長を記録。数量だけでなく販売単価も上昇しました。ワイン・スピリッツ事業はほぼ横ばいでした。

FY18の純利益は34億ドルで、税制改革の特別利益があった前年からさらに48%の伸びを記録。純利益率も42%と非常に高いです。これはキャノピー・グロース株等の公正価値評価益を21億ドル計上しているためです。要するに株の含み益です。米国の金融商品会計基準が最近改正されて、保有株の時価変動がPLに反映されるようになりました。大麻関連銘柄は一時的に上がっている可能性もあるので、この純利益が持続的なものとは思わない方がいいです。営業利益は売上高と同程度の伸びです。

営業CFは売上成長と連動して伸びています。営業CFマージンは28%もあって高収益。ビールの生産能力を拡大しているため、フリーCFは営業CFに比べてやや少なめです。

バランスシートを見てみましょう。固定資産が多いのが目立ちますね。この大きな固定資産の大半は過去のM&Aによって認識したのれんと無形資産です。もちろん、ビールを醸造する設備等の有形固定資産もそれなりにありますが、無形資産の方が大きいです。

配当推移を見ると意外に思われるかもしれません。1945年創業の老舗メーカーですが、FY15まで無配です。実はSTZは1974年からずっと無配でした。詳細な理由は分からないですが、債務圧縮を優先して配当を出していなかったようです。増益が続き財務の安全性も高まってきたことから、約40年ぶりに2015年から配当を再開しました。それだけ業績が改善していると捉えることもできるでしょう。やはりビール事業の取得は大きかったと思います。配当性向は20%ほどでまだまだ増配余地あり。