バークシャー・ハサウェイ、2018年第1四半期決算で純損失計上
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こんなニュースがスマホに飛び込んできて驚きました。バークシャーの業績が悪いなんて全く聞いてなく、なんで赤字なのかすごく気になりました。
結論から言いますが会計マジックによる赤字であり、バークシャーの本業の業績に懸念はありませんでした。バークシャー株をお持ちの投資家の方々は不安になる必要は全くありません。
以下は、バークシャーの2018年度第1四半期決算の10-Qレポートにある連結PLです。
赤丸で示したところ(汚い丸で失礼します)が当期純損益です。()はマイナスを示しています。単位は百万ドルです。確かに純損益は11.38億ドルの赤字となっています。
しかし、よくPLを見てみると赤字の原因は黄色のマーカーで引いたInvestments gain(loss)であることが分かります。これはバークシャーが保有する上場株式(アップルやクラフトハインツ、コカ・コーラなど)の前期末2017年12月からの時価変動を示しています。2018年は、バークシャーの保有株は恐らくアップル以外は下落しているのではないでしょうか。この時価下落が損失としてバークシャーのPLに計上されています。
この上場株の時価変動による含み損益は損益計算書に計上されないのが普通です。ちょっと専門的になって恐縮ですが、「その他包括利益」に計上されて直接BSの純資産を動かします。時価変動が当たり前の上場株の含み損益をPLに載せると、投資家の判断を誤せるリスクがあるので、このようなキャピタルゲイン(ロス)は損益計算書に載りません。
でもでも、2018年からバークシャーは上場株の含み損益をPLに計上するようになっています。会計処理方法が変更されています。これは要注意です。
注記を読むとこのような記載があります。
With respect to ASU 2016-01, we reclassified net after-tax unrealized gains on equity securities as of January 1, 2018 from accumulated other comprehensive income to retained earnings.
バークシャーの10Qレポートより
↓
和訳します
↓
ASU2016-01(米国の金融商品会計原則)に関して、我々は株式の税引き後未実現損益をその他包括利益から利益剰余金へ分類を変更します。
バークシャーの10Qレポートより(Hiro和訳)
驚いた!
知らなかった(会計士のくせに勉強不足ですみません・・)。
どうやら、2018年から新しく適用になる米国の金融商品会計基準では上場有価証券のキャピタルゲイン(ロス)をPLで損益処理しなくてはならないようです。
なんでやろ。なんで米国FASB(米国会計基準を作成している非営利団体)はこんな会計処理を要求するんだろうか?
日本会計基準ともIFRS(国際会計基準)とも整合しません。
すみません、ちょっとFASBの趣旨は分かりません。こんな会計処理したら、投資家を困惑させると思うんだけど。。バークシャー株の投資家は急に赤字決算なんて言われて今回驚いていることでしょう。
大丈夫です安心して下さい、バークシャーの業績に不安はありません。株式の含み損の影響を除いた営業利益は52億ドルで前年より増加しています。
すみません、ちょっと質問させて下さい。
この会計方式の変更でBSやPLの数値が大きく変動するのは分かりましたが、
キャッシュフロー計算書も影響受けますか?
会計の知識が無いので企業の決算書はCFだけ見るようにしています。
営業CF、投資CF、財務CFに注目して綺麗だったら「GO!!」みたいか感じですw
あと、Hiroさん英語も分かるんですね。
すごいですね。
リアルでは絶対に接点をもつことができない世界のお方なんだろうな~って思います。
日本で一番すごい国立大出身なのかな?って勝手に思ってますw
ブログ初期の頃にそんなことを書いてた記事があったような。
ご質問ありがとうございます。
こういう会計のご質問は大好きです(笑)。
今回の有価証券の会計処理方法の変更によって変わるのはPLだけです。
BSは変わりません。なぜなら、昔も今も上場株を時価評価するという点は不変だからです。
BSに計上される投資有価証券残高は、今回の会計処理変更によって変わることはありません。常に時価でオンバランスです。
変わるのは時価評価差額をPL処理するのかしないのかという点です。
今までは、PL処理していませんでした。時価評価差損益はPLを通らずに直接バランスシートの純資産に反映されていました。
それが2018年から適用の新会計基準のもとでは、時価評価差損益をPLに計上することが必須とされました。
キャッシュフローは全く変更はありません。なのでBRKの業績を見るときはやっぱりキャッシュフローを見るのは欠かせません。
今後はバークシャーの純利益は会計期間によってかなりブレることが想定されます。
う~ん、、今回の会計処理はバークシャーの株主にとってはかなり迷惑だと思います。
この点はできれば記事にしたいです。バークシャー株に注目している投資家は大勢いらっしゃると思いますので。
私の英語力は最低限の読み書きだけですよ。
10Kレポートにあるような会計チックな文章は、さすがに職業柄スムーズに読めます。
ただし、英語全般的な能力は低いですよ。ほとんど話せないし、聞き取れません。
AIの自動通訳に期待して英語は勉強しないことにしましたw。
>日本で一番すごい国立大出身なのかな?って勝手に思ってますw
>ブログ初期の頃にそんなことを書いてた記事があったような。
いえいえ、そんなことありませんよ!
そんなこと書きましたっけ!?
であれば嘘ついているかもw。すみません。
私はT大学ではありません。
海外出張中に長いコメントありがとうございます。
Hiroさんの過去記事気合で探しました。
もちろん時間かかりましたw
https://growrichslowly.net/a-feeling-of-pride/
>私は某旧帝大卒でしかも学生時代に・・・・
この部分を読んだ時にHiroさんってすごい人だと思いました。
勝手にT大学だと思い込んでました。
申し訳ないです。
でも、Hiroさんの職場の方達の学歴とか見ると絶対にT大学と思ってしまいますよw
時差3時間半しかないのに若干時差ボケしてますw。
わざわざ記事探して頂きありがとうございます。
あ、この記事ですね。確かに少し学歴に言及してましたね。
記事数も800~900くらいになってきて、過去自分が何を書いたか覚えきれないです~。
ま、一度社会に出たら学歴は関係なくなりますね。
転職の時はちょっと影響するでしょうけど。
最近、転職市場でも売り手市場になっているらしく、転職で給料アップする人が増えているそうです。
こんにちは。
アメリカの法人の決算書を見たのは初めてで新鮮な感じです。
連結、とかその他包括利益ってこう書くのなーと素直に感心しました。
2点ほど質問をさせて頂きたいので、お手すきの際にでもご対応願います。
・日本では有価証券は保有目的に応じて売買目的、満期保有、子会社、その他
に分けられると思うのですが、アメリカの場合はそのような区分はあるのですか?
・今回の話としては、これは純資産全部直入法だと思ったら
営業費用や営業外損益に入っていた的な内容だと認識しましたが合っていますか?
(アメリカは営業費用の概念って無いんでしたっけか・・?)
あと全然違う話なのですが、私の働いている会社はただの食品スーパーで
IFRS適用は相当遠い話だと思っていますが、強制適用とかいずれされるんでしょうか?
うちはのれんの非償却のメリットもないし減損を戻したりもあるとかで恐ろしいです。
もし移行になった場合の業務負荷が相当ありそうですし・・
時代の流れに沿っていつかは移行しないといけないのでしょうか。
こんにちは。
アメリカの決算書なんて普段は見ないですよね。
新鮮かなと思い、敢えて載せてみました。
ご質問、回答しますね。
米国会計にも有価証券の区分は存在します。
・満期保有目的有価証券
・売買目的有価証券
・売却可能有価証券
の3つです。
ただし、これらの区分は事実上会計処理に影響を与えていません。
記事にしたASU2016の第一号では、どのような持分投資も結局、時価評価差額を当期純利益で認識するようになっているからです。
日本で言うところの、売買目的有価証券の会計処理が強制されている感じです。
個人的にはこの会計処理は反対ですね。。投資家に誤解を与えます。
特にバークシャー株主への影響は大きいです。
2つ目のご質問ですが、今までの時価評価差額はすべてPLには影響しませんでした。
なので営業費用にも営業外費用にもなっていません。
ちなみに、損失だけPL認識するのは全部純資産直入法ではなく部分純資産直入法ですね。
部分純資産直入法はすでに廃止されていますが。
IFRSの強制適用はいずれされるかもしれませんが、金融庁次第ですね。
今のところ、強制適用の時期は未定です。
適用範囲も問題です。上場企業すべてに求めたいのかもしれませんが、上場企業と言っても国内だけでビジネスをやっている小さな会社もあります。
そういう会社にも無理やりコストをかけさせてまで、IFRSにすることが有益かは微妙です。
任意適用の要件は緩くなっており、時価総額ベースでは東証上場の3割くらいはIFRSになっているはずです。
あと、実は単体決算は今もIFRSは不可でJGAAPのみです。
税金との関係があるからだと思います。
すいません追記です。
私の勤め先は東証の上場企業の連結子会社です。
失礼しました。
追記ありがとうございます。