米国では調整後利益というNon GAAPの(会計基準に基づかない)利益概念が普及しています。数年前、調整後利益をあまりに乱用し過ぎているとSECが警鐘を鳴らしたほどです。確かに、企業が恣意的に調整項目を選択できるわけですから、投資家はどのような項目が調整されているかウォッチする必要はありますね。
米証券取引委員会(SEC)は最近、決算における調整後利益の項目の利用方法を調査していると複数の企業に通知した。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
調整後利益を巡っては以前から、業績を粉飾するために使われかねないと指摘されていた。SECがこうした乱用の取り締まり強化に乗り出した背景には、昨年の調整後利益と「一般に認められた会計原則(GAAP)」に基づく利益の差が2008年以来の大きさへ広がったことがある。
2016年10月28日のWSJより
このようなSECの警告には耳を傾けつつも、投資家は調整後利益を最大限、投資判断に活かした方がいいと思います。長期投資では企業の本業の儲ける力の見極めが重要ですから。本業の儲ける力が弱っていない限り、一時的なトラブルや訴訟は乗り切れるもんです。
たとえば、数年前不正会計問題で揺れたオリンパスがわかりやすい例です。巨額の損失を「飛ばし」という手法で、こっそり長期にわたって費用処理していました。これは許されません。誠実に情報を公開することは不特定多数の投資家から資金を集めている上場企業にとって大切なことです。
オリンパス株は一時大きく売られたわけですが、その後ほどなくして株価は急回復しました。世界的に高シェアな内視鏡ビジネスの優位性は何ら変わっていないからです。不正会計問題が起こったからって、オリンパス製の内視鏡をボイコットするドクターなんていないわけです。
愚か者でも経営できるビジネスに投資しなさい。なぜなら、どのビジネスにもいつか必ず愚かな経営者が現れるからだ。
ウォーレン・バフェット
バフェットのこの言葉が思い出されます。上場企業の経営者になるような人の99%は勉強熱心で倫理観のある人です。でも稀にこういう1%に該当する人が出てきます。
ニュースで大きく報道されるような不正や、品質問題が起こると投資家は不安になります。「今ここで売るべきか、辛抱強く保有し続けるべきか」と悩むでしょう。結果論かもしれませんが、オリンパスは売らずにホールドが正解でした。
これから、あなたが投資する会社でもオリンパスのような事件が起きないとも限りません。
そんな時、何を頼りに判断すればいいのか?
調整後利益が判断材料の一つになります。
調整後利益は特殊要因を除いた本業での儲ける力を示しています。調整後利益が大きく衰えていないのであれば、長期的には復活できる可能性が高いです。ただし、SECが指摘している通り、調整項目は恣意的にいじれるので、何を調整しているかはきちんと確認する必要があります。普段はアニュアルレポートや10-Kレポートまで読まないかもしれませんが、有事の際は頑張って目を通した方がいいです。あとはキャッシュフローの確認もお忘れなく。