スペシャルではなくジェネラリストになれ!
情報化時代に専門知識バカはいらない!
1つの穴を深く掘るのではなく、2つ3つ4つの穴を掘れ!
てな感じのことが、たまに意識高い系のビジネス書とかに書いているあるじゃないですか。
私は、このジェネラリストになれっていう意見には反対です。
いや、反対というのも表現が違うかな。
ジェネラリストなんてあり得ないと思うんです。
自営業の人も、職を得てサラリーマンとして働いている人も、みんな何らかのスペシャリストだと思います。
スペシャリスト(専門家)と聞くと、弁護士・医師・会計士みたいな資格職をイメージされるかもしれませんが、それは違います。
サラリーマンを含むすべての職業人はみなスペシャリストなはずです。
一人一人がある特定分野のスペシャリストになって、そこに限りある人的リソースを突っ込むからこそ、経済全体の厚生が上がるわけです。
1日の稼働時間はMAX24時間(睡眠無視!)なんだから、どれだけ優秀な人であっても1人でやれる事には限界があります。その限られた人的リソースつまり時間を、特定の仕事に集中させることで経済全体が力強く成長します。
もしあなたが月収20万円(年収240万円)以上貰っているなら、あなたは何らかのスペシャリストなはずです。
単なるアルバイトレベルの単純作業者に、社会は月20万円も払いませんから。
よく経営者とはあらゆる分野に精通している最強のジェネラリストだ、みたいな意見も聞きます。
確かに、経営者は事業だけでなく財務・法務・人事と会社全体、業界全体を広く深く把握しておく必要があります。
側近のCFOなどを使うとは言え、CEO本人に全く財務会計知識がなければ話もきちんと聞けないでしょう。
でもそれだって、CEOはビジネスという分野に限ってジェネラリストなだけであって、この世に存在するすべてのジャンルを抑えている人は誰もいないはずです。
世の中にはあらゆるジャンルがあるんです。
心理学・哲学・宗教・言語学・戯曲・歌舞伎・倫理学・文化人類学・女性学・国際法律・環境学・軍事・考古学・歴史・地理研究・不動産・化学・金属鉱学・海洋学・バイオテクノロジー・物理学・地球科学・農学・電気通信・宇宙学・外国為替・年金保険数理・税金・証券化・基礎医学・臨床内科・臨床外科・皮膚科学・麻酔科学・歯科医学・泌尿器科学・プログラミング・アプリケーション・建築学・古美術・彫刻・茶道・書道・華道・鉄道・陶芸・カメラ・将棋・登山・キャンプ・ワイン・恋愛・ガーデニング・インテリア・落語
これらをすべて極めるまでいかなくても、全部そこそこ知識持ってますと言えるスーパージェネラリストはいるのでしょうか?
私はいないと思います。
すべての友人を集めればあらゆるジャンル網羅できるという人脈豊富な人は存在しえると思います。
でも、自分自身の頭脳にすべてのジャンルの知識を詰め込むのは無理だと思います。
なぜなら、時間は有限だからです。
時間にレバレッジは掛けれないからです。
自分がジェネラリストだと思っている人は、自分が知らない世界がまだまだたくさんあるという事実に盲目なだけだと思います。
日本経済、世界経済がここまで発展して社会が豊かになったのは、一人一人がスペシャリストに徹しているからです。
自動車の研究を40年ひたすら続ける人もいるでしょう。
世の中に社会・経済が存在しなければ、自動車の研究だけしててもいつか餓死にしちゃいます。
でも実際はそうならない。
自動車の研究をしている人はその労働対価としてお給料を貰い、その給料を使って市場でご飯や飲み物を買って家を借りて生活することができます。
もちろん、その裏にはご飯や飲み物、家を提供することのスペシャリストが存在するわけです。
こうやって、各人が自分の得意な分野(本人がそう思っていなくとも)に資源を集中的に投下してアウトプットを出し、他の人が社会に産出してくれたアウトプットをお金を使って購入するのが経済です。
株式投資にお金を回せるってことは、多分月収10万円のアルバイトではないですよね、あなたは。
で、あればあなたもスペシャリストです。
自分では謙遜して「いや、俺はしがないサラリーマンだよ」と思っているかもしれませんが、それでもあなたはスペシャリストです。
あなたが仕事のスペシャリストなら、そのスペシャリストとしての知識経験を株式投資にも活かせる場面はあると思うんです。
人は自分が今いる環境が当たり前になってきます。
特に日本は、転職して職場を変える文化があまりないので、余計にその傾向があると思います。
あなたが仕事をする上で当たり前に思っている知識は、世間的には当たり前ではありません。
あなたの常識は、世間の非常識なことは絶対にあるはずです。
あなたが仕事をする上で使っている知識やスキルは、何らか特殊性があるはずです。
それぞれ異なる業界で働いているわけでしょうから。
私は経理で働いているので、会計や財務に詳しいし、自分が働いている某製造業のビジネスについてそこそこ知識があります。それは多分、あなたにはない知識や視点だと思います。
逆に、あなたにはあなた独自の知識や視点が絶対にあります。
そういう、職業人として持っている専門知識や業界知識は大切にしたほうがいいし、株式投資にも活かせると思います。
マーケットはあらゆる情報を織り込んでいる。
自分が知っている”秘密の情報”は、マーケットに織り込まれていると思うべき。
とは言われます。
本当にそうでしょうか?
確かに、目先の決算予想、M&A案件なんかの情報は個人投資家が先んじで知れるものはないと思います。
てか、これらはインサイダー情報だから使っちゃダメですけどね。
こういう目先の短期的なネタではなく、もっと業界構造的な予測やビジネスモデルについての知識です。
「この企業は普段取引していて、こういうビジネスをやるから将来有望だ~」とか。
「マイクロソフトは株価最高値更新中の人気銘柄だけど、実は〇〇な理由で将来性は低いと思う」
「シスコシステムズは株価急落したけど、〇〇な理由で将来は有望だ」
ってIT業界に長くいる人はわかるかもしれません。
「エクソンなどのエネルギー株は低迷しているけど、〇〇な理由で石油ビジネスは盤石だ」
ってエネルギー業界に勤めている人は思うかもしれません。
そういう感性って価値あると思うんです。
確かにね、自分が思う程度のことはマーケットに織り込まれているはずだっていう謙虚な姿勢も大切だとは思います。
でも、マーケットの価格を形成しているアナリストや機関投資家だって、そこまで業界内部に踏み込んで把握しているわけではないでしょう。表面的なデータはすべて読み込んでいるでしょうけど。
それと、彼らは結構短期的に考えがちというのもあります。
10年、20年とその業界に身を置いてきたからこそわかる独特の嗅覚みたいもの。うまく言語化できない暗黙知みたいなもの。
特にそれが長期構造的な変化を予測するようなものであれば、それがマーケットに織り込まれてないケースだってあるのではないでしょうか?
短期的な「イベント」に関する予測はほぼほぼ株価に織り込まれていると思うのは、妥当だと思うんですね。
例えば、近く開催されるFRBの利上げ判断とか、OPECの減産協調を巡る会合の結果とか。
これらの話題に上がりがちな「イベント」の結果を自分なりに予想してあれやこれや売買しても、なかなか成果にはならないと思います。
そうではなく、今どのニュース媒体にも表れていないけれど、その業界のスペシャリストだからこそ感じる長期的な趨勢の変化、業界構造の変化。
こういうのって、今の株価に織り込まれていない可能性も十分あると思います。
同じITセクターの株を評価するにしても、投資家Aさんの視点と投資家Bさんの視点は当然違います。
ファイナンス的に言えば、投資家Aさんが思い描く将来キャッシュフロー・適用する割引率と投資家Bさんのそれらとは大きく異なるはずです。
その投資家間の差異にはダイヤモンドの原石が眠っていると思います。
マーケットに謙虚に向き合う姿勢も大事ですが、時には「これは自分しかわかっていないマーケットに織り込まれていない将来のストーリーだ!」と思ってもいいと思います。
なぜなら、あなたはジェネラリストではなくスペシャリストなのですから。
仕事で培ってきた知識経験は、株式投資にも大いに活かせると思います。
効率市場においては、分析力と客観性を持った人々がかかわることで公正な価格が設定される。
したがって、掘り出し物が生じる背景にはいつも非合理性、または理解不足がある。つまり、掘り出し物は往々にして、投資家が資産を公正に評価していない、表面的なことにとらわれて内実まで理解していない、バリューに基づかない昔ながらのアプローチや先入観、制限から抜け出せない、といった状況で生まれるのだ。
より狭い範囲のことに特化するなら、知見を強みとして発揮できる可能性は高まる。熱心に研究し、スキルを駆使すれば、個別の企業や証券について、隣の人よりもつねに多くを知ることができる。だが、市場や経済について同じようにできるかというと、その公算ははるかに小さい。だから、私は、「知りうることをしるように心がけなさい」と呼びかけている。
緑色の箇所ですが、将来のマクロ経済予測を隣の人よりうまくできると思わない方がいいと思います。
それはマクロ経済を知らなくていいという意味ではありません。
雇用統計や金利水準を抑えておくことは、投資家として必要なことだと思います。
ただ、それを先読みして短期取引できるとは思わないほうがいいです。
一方で、あなたが本業で詳しく知っている業界や企業について、マーケットの見方とは異なるあなたなりの視点があるのなら、それは長期投資に活かせると思います。
『投資で一番大切な20の教え』の著者ハワード・マークス氏は平均を上回る成果を手にするには、二次的な思考が大切だと言っています。
二次的な思考とは、隣の人の思考の1歩先を行く思考です。
「A社の業績が悪くてA株は売られているけど、構造的な強みは健在で今後必ず収益は回復するから、今の下げ相場は仕入れ時だ」みたいな思考です。
大衆とは逆を向く姿勢。
無思考にただ逆張り姿勢を取るのではなく、自分の知識経験に基づく根拠ある逆張り。
そんな二次的な思考って言われても、出来るかよ!
って思いますよね。
ええ、私もそう思います、そんな簡単に言うなよ!って。
でも、ある特定の領域については、あなたも二次的な思考ができるのではないですか?
あなたは、自分の知識経験について謙虚になり過ぎているのかもしれませんよ。
このブログに寄せられるコメントやメールを読んでいて私はヒシヒシとそう感じます。
特に半導体などIT業界に対する知見は、その業界内部にいる人と外部にいる人とでは圧倒的な知識差があると感じます。
それは本を読んだり、ニュースを読む程度では追いつけないようなものな気がしてます。
投資に自信過剰は禁物です。
主観的な予測よりも、客観的な分析を重視すべきだとは思います。
でもどうでしょう、あなたが得意とする特定の領域のみについては存分に二次的な思考を発揮して、隣の人より優位に投資判断できるチャンスがあるのではないでしょうか。
根拠あるリスクテイクは問題ないと思います。
少数意見が多数意見に変わる時、少数派だった人は利益を得ることができます。
その少数派になれるチャンスは、あなたの本業の専門領域にあると思います。