住宅ローンの返済は費用ではない
持家と賃貸どちらが得か。
住む場所は万人に必要だし、住居費は高額なので、多くの人の関心を集めることができるテーマなのでしょう。毎年どこかしらの媒体で取り上げられる話題ですね。
家賃を毎月払い続けるか、それともローンで家を買い毎月住宅ローンの返済を続けるか。どっちの方がより支払額が小さくなるか?
こういう観点で比較されることが多いです。
しかし、この比較方法は明らかに誤りです。これでは両者の損益を正しく捉えることはできません。
賃貸はよいです。賃貸は毎月の家賃が費用で間違いないです。
持家の計算がおかしい。住宅ローンの返済は費用ではありません。負債の返済です。仕訳で書くと「住宅ローン債務 ×× / 預金 ××」となります。
この仕訳にはBS科目しか出てきません。PL科目は出てきません。利息は置いておくとして。
これはちょっと会計をかじったことがある人なら誰でもわかる話です。簿記で言えば3級レベル。
しかし、会計に全く触れたことがない人にとってはやや直感に反することかもしれません。キャッシュフローに着目すれば、家賃の支払に対応するのは住宅ローンの返済と考えてしまう気持ちは分からなくはないです。
が、会計的に言えば家賃支払と住宅ローン返済とを比較することに意味はありません。家賃の支払は費用だけど、住宅ローンの返済は負債の減少だからです。PLとBSを比べてもダメです。
資金繰り管理という点では比較する意味は大いにありますが。
では、持家の費用とは何か?
住宅ローンの返済が費用ではないなら、持家の費用とは何なのか?
大きく4つあると思います。
・修繕費
・管理費
・利息
・住宅価格の値下がり(値上がりの場合もある)
マンションの場合毎月、管理費と修繕積立金を納める必要があります。これは費用として捉えておいた方がよいでしょう。戸建ての場合管理費はありませんが、修繕費は必要になりますね。
あとはローンに対する利息です。金利が低いとはいえ、数千万円もの借金なので利息も馬鹿になりません。4千万円×0.5%でも20万円です。
そして、最後の4つ目こそが持家最大のコストになりうるところ。保有物件の時価の値下がりです。4000万円で買ったマンションが30年後に1500万円でしか評価されなかったら、差額の2500万円は損失と言えます。売却してないなら含み損。売却したなら売却損です。
持家と賃貸の損得比較を一般論で語るのは不可能
賃貸の総コストを計算するのは簡単です。生涯の家賃、更新料を合計するだけです。何回か引っ越しするなら、引っ越し代や仲介手数料も織り込んだ方がいいかもしれませんが、基本は毎月の家賃を合計すればいい。シンプルです。
一方で、持家の総コスト計算は容易ではありません。正確に見積もることができるのは、固定金利の場合の利息くらいではないでしょうか。
修繕費はマンションの場合は毎月の修繕積立金を合計すればいいだけですが、大規模修繕を前に資金が足りないケースなどもあるようで、実際にどれくらいの修繕コストが必要かは不確実です。特にタワマンの2回目以降の大規模修繕は予想以上にコストがかかると言われます。
そして、もっとも不確実性が高いのが物件価格の変動です。こんなのわかるわけないです。4千万円で買ったマンションが30年後にいくらで評価されるかなんて、現時点で予測することはできません。
建物部分の価値は間違いなく下落しますが、土地がどう評価されるかはわかりません。一般的には、郊外は値下がるリスクが高く、都心は値下がるリスクが低いです。
とは言え、立地だけですべてが決まるわけもないですし、固有物件毎に様々としか言いようがありません。購入時と30年後の市況にも左右されるでしょう。
家賃 vs 住宅ローン返済額
ではありません。
家賃 vs (修繕費+管理費+利息+物件価格変動)
が賃貸と持家の正しい損得計算の方法です。
こんなの計算できるでしょうか。特に物件価格変動が予測困難です。少なくとも一般論として語ることはほぼ不可能です。
よくネットのニュースとかで紹介される持家と賃貸の経済比較なんて信用しない方がいいです。
購入の方が得という計算結果になることが多いが・・
この式からわかることは、持家のコストの大半は物件価格変動に依存するということです。高値掴みしてしまった人は多額のコストを負担することになるし、割安なタイミングで取得できた人は費用どころか利益を計上できることもあります。
ただ、試算してみるとわかることですが、大抵は持家の方が総コストは小さくなります。持家の方が得という計算になります。特に値下がりしづらい都心部の物件だとそういうシミュレーション結果になります。
が、これも盲点があって、家を買うということは相応のリスクを負担するという点です。持家の方が総コストが小さいからと言って、持家が賃貸よりお得とは一概には言えません。
リスクリターンをどう評価するのかという話になります。リターンは仮定を置けばある程度は客観的に計算できますが、リスクは計算できません。住宅を保有することのリスク評価は人それぞれです。
つまり結局のところ持家と賃貸どっちが得か(どっちの方がリスクリターンが高いか)は人それぞれになる、という毒にも薬にもならぬ答えを言っておきます。
私は都心部の物件を狙っていることもあり、リスクを考慮しても持家に軍配が上がると判断しました。年内のマンション購入を目指しています!
頑張ってください。応援しています。固定資産税をお忘れなく!修繕積立より高いと思いますよ。
ありがとうございます!
固定資産税、確かに大きな費用ですね。抜けていました。
頑張ります。
この計算だと、行って来い分の売買手数料6%(3%+3%)も、持ち家には更にかかりませんか?
ありがとうございます!
手数料も大きな費用ですね。抜けていました。
いつも楽しくブログ読ませていただいています。
さて持家と賃貸の比較ですが、私は設備投資意思決定の観点から考えたほうが分かりやすいように感じます。
※例えば30歳時点に35年ローンで住宅購入、65歳で売却するまでを一つのプロジェクトとして対賃貸とキャッシュフローでの比較をするのはどうでしょうか。(割引率は投資家目線の5%くらいで)
BS/PLで考えると、まさに物件価格の変動が大きすぎて比較難易度が上がりすぎてしまいますし、そもそも住宅投資で年度毎に決算をする必要性もあまり感じられません。
一般的によく言われている毎月のキャッシュフロー比較はこの設備投資の考え方に近く、バッサリと断罪してしまう程に筋の悪い見方ではないと個人的には思うのですがどうでしょうか!
いつもありがとうございます。
設備投資の意思決定を日常に応用する発想いいですね!
そういうの好きです。
その場合、65歳でいくらで売却できるかが結局は物件の相場次第になっちゃいますかね。
割り引けば現在価値は小さくなるかもですが。
あとはリスクをどう見るのか、つまり割引率をどう設定するのか、が重要な論点になりますね。
私はここのリスク認識がマンション勉強を通じてかなり低くなりました。
確かに、地震や水害などありますが、新耐震以降のマンションは過去に地震で倒壊した話は聞きません。
投資用マンションの収益性は入居率次第ですが、自宅ではそれが常に100%です。
以前の自分なら5%~6%くらいでは割り引きたくなる気持ちでしたが、今は、、2%くらいでも十分かと思えるようになりました。
ファイナンス的に考えると、この自分のリスク認識の変化が購入を後押ししたと言えるかもしれません。
あと、おっしゃる通りで、単年で損益計算するのは難しい面がありますよね。