持家推奨派の主張の一つにローン控除などの各種税制優遇、低金利などのマクロ経済環境があります。

政府が住宅購入を推進するためにこれだけの優遇を用意してくれているんだから、購入した方が得という論理です。金融緩和策もしばらく続きそうですし。

私はこの論理は誤りではないかと最近思っています。

ローン減税などの優遇策は住宅購入を支援しているどころか、むしろ住宅購入者の財務リスクを高めているとさえ感じます。

というのも、各種優遇政策があることを前提に不動産価格が形成されているからです。

都心部マンションの利回りは4%ほどです。3%台も珍しくはありません。よほど築古でなければ5%台の物件はほぼ見つかりません。私がスーモなどでサーチする限り。

コロナ禍で不動産価格が高騰しているのも一因ですが、コロナ前でも利回りは5%弱ほどです。決して高くはありません。

このような低い利回りで不動産が流通しているのは、低金利でかつローン減税などの優遇があるからです。これら購入を支援してくれる環境があるなら、利回り3~5%で買っても問題はないと多くの人が思っています。厳密に計算していなくとも、感覚で把握しています。

結局、政府がローン減税などを設けていても、それに連動して不動産価格も上がっているのが実情です。

物件価格の10%を支援する政策があったとて、その政策を受けて価格が10%上がっていたら意味ないですよね。そういうことが起こっている印象です。

マーケットが合理的である限り、ローン減税や低金利はさして住宅購入の支援になっていない気がします。それどころか、むしろリスクを高めているとさえ思います。

なぜなら、優遇策が終わったり金利が上がったりしたら、それに応じて物件の時価が下落する可能性が高いからです。金利はインフレと連動する傾向があるからまだマシ。政府の優遇策の方がリスクは高いです。

ローン減税を加味してこの価格でも採算が合うと踏んでいたのに、政府の意向で急に政策が打ち切りになったら物件価格が下がって長期的な収支計算が狂ってしまいます。であれば、鼻から減税はなしで、その分物件価格が安い方がいいなあと思ってしまいます。

まあ、支援策による高価格マーケットが成立するから分譲マンションのクオリティは高いと言えるのですけどね。が、経済的にはリスク要因になっていると思います。

株式ほどではないけれど、比較的流動性が高い都心部のマンション市場は合理的な値付けがなされています。その価格にローン減税も低金利もしっかり織り込み済みです。