ブログのタイトルに「シーゲル流~」なんて言葉を入れているくせに、「シーゲル流」がどんな投資法なのか自分の中で100%言語化できていないのが正直なところです。まあ、そんなに深く考えて付けたブログ名でもありませんがね(てか、まさか3年もブログが続くとは思ってなかったし・・)。

米国株投資に方針転換するきっかけになったのが、ジェレミー・シーゲル氏の『株式投資の未来』という本でした。赤い表紙が目印(赤本)。最近は大型書店の投資本コーナーでよく見かけるようになりました。私は2015年に読んだんですが、その頃は丸善や紀伊國屋に行っても置いてなかった記憶があります。アマゾンで買いました。

長期的な株式投資で市場平均を超えるにはどうすればいいのか、赤本はふんだんな統計データを用いて理論的に説明してくれました。その内容に感銘を受けて、翌年2016年に保有していたVTなどのインデックス商品を売却して、米国株(ETF、個別株)投資に切り替えました。そんなわけでブログの副題に「シーゲル流~」なんて付けちゃいました。

 

「衰退」銘柄へ積極的に投資すればいいと勘違いしていた

赤本の中で特に印象的だったのが、長期的な株主リターンと企業の時価総額とは比例しないという事実です。株価がガンガン上がることだけがすべてじゃない。株価ではなく見るべきは利益、配当。株主利益とは企業の利益(配当)なんだから、いかに投資額当たりの利益(配当)を最大化するかがすべて。

株価が低迷していて安い投資額を提供してくれる銘柄は、むしろ有望(ただし衰退せずに利益成長することが前提)。それをシーゲル氏は「投資家期待」という言葉を用いて説明してくれました。

投資家期待(端的にはPER)が実力(端的には予想EPS成長率)に比べて低くなっている銘柄を選ぶことで、長期で市場平均をアウトパフォームすることができます。

その説明に納得しました。
なるほど、そりゃそうやなって。

が、、ちょっと勘違いしていた自分がいました。

その勘違いとは、「衰退」(実際には衰退しない。あくまで衰退するかもと悲観されているだけで将来復活する)銘柄に投資すれば高リターンが得られるんだ、周りが悲観的になって売られまくっている銘柄を逆張りで果敢に掴みにいくことが重要なんだっていう勘違いです。

なぜ、「衰退」銘柄を探すことが「シーゲル流」の投資法だと勘違いしてしまったのか。それは『株式投資の未来』の中で取り上げられている以下2つの企業の例を読んだ影響が大きかったです。

・スタンダードオイル(現エクソンモービル)
・フィリップモリス

この2社は株価は他の銘柄に比べて低迷気味だったけど、株主リターンは高かった銘柄の例としてpick upされていました。

特に印象的だったのがフィリップモリス。タバコの健康被害を巡って数多くの訴訟が起こされ、実際に1000億ドル規模の賠償判決まで下った。タバコ会社は存続不能とまで囁かれた。言うまでもなくフィリップモリス株は叩き売られ、PERは市場平均を大きく下回っていました。

しかし、フィリップモリスは大方の予想に反して衰退することなく増配を続けました。マーケットはフィリップモリスがもう今後成長しないというレベルまでバリュエーションを引き下げたけど、実際のフィリップモリスのEPS成長率は横ばいどころかむしろS&P500平均すら超えました。

マーケットはフィリップモリス株の評価を誤っていました。そんな状況で果敢にフィリップモリス株を買い配当再投資を続けた一握りの投資家(実際にいるかは知りませんが)は、年率19.8%という破格の株主リターンをゲットして億万長者になりました。めでたしめでたし。

結局、大事なのは利益(配当)ということ。よほどの高値を掴まない限り、長期的に増益を続けられる企業に投資すれば投資家は報われます。株価は後から勝手に追いついてきます。フィリップモリスのようにマーケットからの期待が低いにもかかわらず、長期的に利益成長できる銘柄を選べるとリターンはさらに跳ね上がります。

シーゲル氏が伝えたかったメッセージの本質は、投資家期待と実際の利益成長力のバランスが崩れている銘柄に投資すればいいということだと今は理解しています。決してみんなが悲観的になっている「衰退」企業に投資せよとは言ってません。本当に衰退するリスクもあるのだから。

でも、僕は最初ちょっと勘違いしてました。衰退するかもと思われている銘柄(そういう銘柄は概して配当利回りが高くなる)に投資することが、高いリターンを得る上で重要なんだと誤った解釈をしていました。

いや100%勘違いでもない。衰退すると思われるくらい売られている銘柄(具体的なPERを言えば10倍台前半か)で、実際は復活して成長路線に戻れる銘柄に投資できればそりゃリターンは高くなります。でも、そんな銘柄を事前に発掘するのは難しい。将来はわかりません。不安の中、20年も30年も「衰退」企業の株を持ち続けるのは凡人の自分には難しいです。

 

シンプルに優良企業の株を買えばいいんだって今は思ってる。

わざわざ「衰退」企業に投資する必要なんてないんだって今は思ってます。年率19.8%なんていうバフェット並みのスーパー・パフォーマンスを狙うからいけないんだ。それは欲張り過ぎだ。市場平均を1%超えるだけでも複利で考えたら、リターンの絶対額は全然違ってきます。それくらいで十分だと思わないと。そもそも個別株投資でS&P500平均に追いつくだけでも難しいのに、S&P500平均を数ポイントも上回ろうと貪欲になる気持ちがダメなんだろう。

シーゲル氏が『株式投資の未来』の中で紹介されている高リターン銘柄を見ると、「衰退」企業はむしろ少数派です。それこそ上で挙げたフィリップモリスくらいでしょうか。

以下は『株式投資の未来』で紹介されていた、1957年~2003年の投資リターンが高かった上位10銘柄です。

会社名 年率リターン
フィリップ・モリス 19.8%
アボット・ラボラトリーズ 16.5%
ブリストル・マイヤーズ・スクイブ 16.4%
トゥーツィー・ロール 16.1%
ファイザー 16.0%
コカ・コーラ 16.0%
メルク 15.9%
ペプシコ 15.5%
コルゲート・パルモリーブ 15.2%
クレーン 15.1%

この中で落ち目だとマーケットから低評価されていた企業はフィリップモリスくらいではないでしょうか。他の企業は典型的な優良企業です。

注目すべきは、フィリップモリス以外の高リターン銘柄だと思います。コカ・コーラやペプシコ、ファイザー、ブリストルマイヤーズスクイブ、メルク、アボットラボラトリーズといった優良株はなぜ市場平均をここまでアウトパフォームできたのか?

投資家期待が低かった?

そうなんです。低かったんです。実際のEPS成長率の割に投資家期待が低かったから、こんなに高い株主リターンが実現したわけです

なぜ??
これらの銘柄に対して、マーケットの期待値が低くなる要因が何かあったか?

特にないように思います。当時のことは詳しくは知りませんが、衰退してしまうだろうと思われていた企業には見えません。長期的に存続すると期待されていた優良銘柄ばかりに見えます。

じゃあどうしてマーケットはこれら優良企業を低く評価してしまったのか?

マーケットはこれら優良株の長期的な増益力を正しく評価できていなかったわけです。

なぜだろう、、難しいところ。これは僕の根拠なき見解なのですが、マーケットが正しく評価できていなかった理由は、マーケットの大半を占める機関投資家が長期的な増益をゆっくり待てる立場ではないからだと思います。あと、個人投資家も普通はそんなに長期間じっくり待てないと思います。

コカ・コーラやペプシコ、メルクの今後30年の増益なんて待てない。だから、その増益を正しく株価に織り込むこともできない。そんな背景があったんじゃないかな~と推測しています。あくまで推測ですが。確証はありません。

機関投資家が長期的な増益を待てない事情は今も変わりません。むしろ、現代の方がマーケットに占める機関投資家の影響力は高まっているくらいです。なるべく早く儲けたいという個人投資家の感情も、昔とそんなに変わってないと思います。

私は21世紀もコカ・コーラ型、アボットラボラトリーズ型の優良株は市場平均をアウトパフォームすると思っています。マーケットはそれら優良企業の長期的なEPS成長力を過小評価している可能性が高いと思ってます。もちろん、真実は50年経たないとわかりませんが。言うだけなら好き放題ということで、考えていることをそのままブログにぶつけています。

「衰退」優良株(つまり、実際には成長する)を選別できればそれに越したことはない。でもそれは難しいです。あとリスクに見合ったリターンという観点で考えれば、「衰退」銘柄への投資が必ずしも効率的とは言えないとも思います。

シンプルに優良株に投資するという方針がいいんだろうな~と最近改めて思います。結局、いつものこのバフェットの言葉に回帰します。

素晴らしい価格でほどほどの企業を買うのではなく、素晴らしい企業をほどほどの価格で買う

ウォーレン・バフェット