突然ですが質問です。
以下の2つ、どっちが嬉しいですか?

①給料3%アップ
②給料1%アップ

え!?
そりゃ①の方が嬉しいですよね。

誰でもそうですよね。

では、一つ条件を付けます。インフレ率です。

①給料3%アップ(インフレ率2%)
②給料1%アップ(インフレ率0%)

これだと、どうでしょうか。
どっちの世界に住みたいですか?

①も②も実質賃上げ率は1%で共通です。

ですが、大抵の人は①を好みます。物価が上昇してたとえ購買力が上がらないとしても、名目上の賃金が上昇すると満足しがちです。

それはたかが2%程度のインフレ率だとそんなに実感がないからという理由もあります。「あ~、そう言えば牛丼の値段が10円上がったな~」くらいです。

でも給料は自分事ですから。月収が3%上がれば結構嬉しいですよね。月収30万円なら約1万円上がる計算です。1万円あれば2,3回は飲みに行けます。

こういう心理面から見ても、マイルドなインフレは大切です。

ちょっと悪い言い方をすれば国民を錯覚させて騙せるわけです。名目上の賃上げを企業に迫って給料をアップさせておきながら、陰では紙幣を刷って通貨価値を落とし、インフレを引き起こして帳尻を合わせることができます。

「騙す」という言うと悪いことをしているように聞こえるかもしれませんが、これは健全な政策です。やはり経済において、期待や心理ってすごく重要ですから。

実質リターンが同じなら、人は名目リターンが高い方に魅かれる傾向があります。

最近のベネズエラみたいに年率6万%で物価が上昇すると、さすがに名目だの実質だの言っている場合じゃなくなりますけどね。インフレ率どうこう言う以前の問題です。

日本やアメリカみたいに経済が安定した成熟国家では、意識してマネーの量をコントロールして2%程度のインフレ率に落ち着かせることが有益です。ある程度名目リターンという”エサ”を与えることで、消費が活発になるのであれば、それは経済運営にはプラスですから。

 

この名目、実質の話は投資家としても重要な論点です。

投資家もサラリーマンと一緒で、名目の株価上昇に一喜一憂する傾向があります。誰でもそうです。私も毎日保有銘柄の株価チェックしてますし。

別に名目上の株価変動に一喜一憂しても全然いいと思うんですよ。そうやって、株価が高い低いと色々考えるのも株式投資の醍醐味、楽しみの一つですし。

ただ、たまにでいいので意識して欲しいです。
長期投資では名目リターンを追求するのではなく、インフレを控除した実質リターン(購買力の向上)を追求しなくてはならないと。

このことを理解しておけば、これから先予想外に米株価が上がらないことがあっても不安感は小さくなると思います。逆に、株価が爆上げしても調子に乗らず冷静さを保てます。

実質リターンって抽象的な概念とも言えます。日本なんてインフレ率1%くらいで、名目リターン≒実質リターンですから、なかなか実感が湧かないです。それはすっごく理解できます。実質リターンとか言っても、なんか机上の空論っぽい感じがしますよね。

ただだからこそ、普段は意識できない環境だからこそ、たまにでいいので株のバリュエーションを考える時には、意識的に実質リターンを考える癖を付けれるといいのかな~と思います。

株価の妥当性を検討する時は企業のビジネスばかり見てしまいがちですが、外部経済(金融)環境も重要です。これからインフレ率がどう推移するのか、という点も株価を決定する重要な要素です。ファイナンス的に言えば、割引率をどう見積もるのかという話です。