企業が決算を発表して、その結果(売上高やEPS)が市場予想を超えると株価は上がります。大企業でも、1日で10%くらい上がることも珍しくありません。特に米国企業の株価は決算結果に素直に反応する傾向があります。
たとえば、先日ウォルマートが第2四半期決算を発表した後、株価は一日で10%近くも急伸しました。もちろん決算内容がよかったからです。EPS、売上高ともに予想を超えてきました。既存店売上高が伸びただけでなく、ネット通販も好調を維持しました。
(直近1カ月のウォルマートの株価推移)
ウォルマートは巨大企業で時価総額は約3000億ドルもあります。10%株価が上がるってことは、時価総額が300億ドルも大きくなることを意味します。
300億ドル、、3兆円。東京五輪の開催費用が最大で3兆円くらいと言われます。それだけのお金(価値)がたった一晩で創出されたわけです。
企業の価値って一体何なのでしょうか?
株式時価総額って何?
株価って何?
決算発表日を過ぎたからって企業の実態が何か変わったでしょうか?
いや、変わってないですよね。決算発表を行った8月15日以降も、ウォルマートの従業員はいつも通り出勤して仕事をしていたはずです。お客もいつも通り買い物していたはずです。決算発表を過ぎた途端、急に従業員のやる気がアップして仕事の能率が上がるわけでもないし、買い物客が増えるわけでもありません。
良い決算を発表をしたら、株価は上がります。
企業の「価値」は上がります。
でも、企業の実態は何も変わりません。
そもそも会計とは忠実に過去の取引を記録しているだけです。過去目線です。所詮ただの帳簿です。その帳簿がどーであろうと、企業の実態は何ら変わりません。
でも、繰り返しですが、決算内容が良いと企業の「価値」は上がるのです。それは間違いない事実です。
企業のビジネスは決算発表前後で何も変わってないとしても、企業の「価値」は大きく上下します。
価値とは何でしょうか?
企業価値ってよく聞く言葉ですが、これは何を意味しているのでしょうか?
価値とは顧客が決める主観的なものです。
株式の顧客とは投資家です。投資家が「ウォルマート株にはもっと高い価値がある」と判断して、従来よりも高値で買い注文を出せば、ウォルマート株の価値は上がります。
株価は大勢の投資家の買い注文と売り注文が均衡した価格であり、客観性があると言われる時がありますが、株価に客観性なんてありません。ただ大勢の主観が集まっているだけです。
価値とは顧客が決めるものですから、あなた1人が「この株は今の株価の10倍の価値があるんだ!!」と叫んでも、周りが同調してくれなければ価値はないことになります。
たとえば、こんなバランスシートの会社を想像して下さい。
↑
現預金しか資産を持ってない会社です。事実上の休眠状態だと思ってください。借入金30億円をすべて返済しても、現預金は70億円残ります。
もし、、この会社の株式時価総額が10億円だったらどう思いますか?
明らかに割安だと思いませんか?
だって、今すぐ会社清算して全部借金返せば70億円のキャッシュが残る会社ですよ。こんな会社10億円で買収できたらボロ儲けですよね。
ただ、あなたは全部買収するお金はなく、あくまで個人投資家として株式の一部しか保有できないとします。
いずれ、株価(株式時価総額)が70億円まで上がると信じて投資しますか?
どうでしょうか、本当にこの会社の時価総額が70億円になるまで株価が上がるかはわかりません。それは周りの投資家次第です。あなたの投資利益は、あなた以外の投資家の主観的評価に左右されます。
つまり、あなた以外の大勢の投資家が「この休眠状態の会社には70億円の価値がある!」と評価して、実際に買い注文を出さない限り、この会社の価値は70億円にはならないのです。たとえネットキャッシュが70億円だったとしても、その株式の顧客(=投資家)が価値があると認めない限り(気付かない限り)、価値はないことになります。
理不尽かもしれませんが、そういうもんです。価値とはそれくらいフワッとして曖昧なものです。絶対に正しい数字なんてありません。価値に正しいもクソもありません。
株価、株式時価総額なんてとても客観的な数字とは言えません。大勢の投資家の主観的評価額の集まりです。多数の意見は合理的な可能性は高いですが、あくまで主観的な観測に基づく数字です。
長期投資家のリターンは主観的な「価値」に依存しない。
私たち長期投資家の投資リターンは、株式の「価値」には依存しません。
そんなフワフワした主観的で曖昧な数字によって、私たちの投資利益が決まるわけではありません。
私たちの投資リターンを決めるものは、もっと客観的な数字です。つまりそれは企業が稼いだキャッシュであり、最終的に株主に還元された配当です。配当以上に客観性のあるリターンはありません。
あなたが長期投資家ならば、より重視すべきは右側です。
配当を重視すべき=高配当株投資、有配株投資
という意味ではありません。
無配株でっても、有配株であっても、低配当の成長株であっても、高配当の成熟株であっても、長期的な投資リターンを狙いたいなら、右側を意識した方がいいです。
短期的な利益は投資家の主観に左右されます。しかし、それはあくまで短期の話です。長期的な利益に投資家の主観は影響しません。大事なのは客観的な数字です。会計上の利益、営業キャッシュフロー、配当をしっかり見て、どっしり構えておきましょう。
>私たちの投資リターンを決めるものは、もっと客観的な数字です。つまりそれは企業が稼いだキャッシュであり、最終的に株主に還元された配当です。配当以上に客観性のあるリターンはありません。
これ、終始無配を貫いているバークシャー株に投資していた人のリターンを説明できますか?
恐らく、将来も無配ですので、将来の配当期待を先取りしていることにはなりません。
バークシャーの無配なのは、他の企業(アマゾンなど)と違うのか。。
一度ブログの記事にしようかなと思って、自分なりに考えてみたことがあります。
私の結論としては「同じ」です。
バークシャーは無配を貫いていますが、その理由はいたって普通でアマゾンやネットフリックスが無配なのと同じ理由に基づくものです。
無配企業が無配である理由は、資本コストを上回る投資機会があると経営者が考えているからです。
バフェットは株主利益を第一に考えています。
本当に全く投資案件がなければ、株主に資金を返還することも厭わないと思います。
ただバフェットは銘柄の目利きが優れていて、今のところは自分が株主に代わって資本再投資した方が株主利益に貢献すると判断してきています。
この判断は株式社会の経営者として当然の判断と言え、バークシャーが特別とは言えないかな~と思います。
>将来も無配ですので
永遠に無配だと、確かに将来の配当期待の先取りとは言えませんよね。
ただ、バークシャーは年次報告書で再投資できなくなれば配当を出すと言っています。
永遠に無配ということはないかなと思います。
仮に永遠に無配を前提に考えるなら、投資家としても永遠に株を保有するという前提で考えないと理論は破綻しますかね。
私は、株式の価値は配当での利益分配だけじゃなく、議決権にあると考えています。
株式を買い占めれば、会社を支配できますし、連結子会社や持分法適用会社にすれば、自社の決算に当該企業の収支を組み入れることができます。
世の中には議決権の無い株式なんて物もありますが、議決権の無い株式なんて株式じゃありません。債券と同じです。
そこ難しい問題だなと思います。
議決権の有無って株価にどう反映されるのだろうかって以前考えようとしたことありますが、結論が出ず記事にもできませんでした。
議決権を有して会社の意志決定に参画できることは株式の基本的権利です。
ですが、末端個人株主にとって議決権があろうがなかろうがどうせ会社の経営には影響を及ぼせないです。
日本人米国株投資家は、基本的にはどのネット証券でも議決権は行使できませんし。
制度的には可能な証券会社もありますが、実際に行使する人は少ないかと。
>株式を買い占めれば、会社を支配できますし、連結子会社や持分法適用会社にすれば、自社の決算に当該企業の収支を組み入れること
そうですね。
そこまで買い占めて、初めて議決権の価値を感じることができます。
0.0001%の少数株主でしかいれない個人株主にとって、議決権はどうでもいいと思ってしまいがちです。
現に私は議決権がなくても構わないです。
会社の業績に応じてきちんと恩恵を受けることができれば、リスク相応のリターンを得ることができれば、それでOKです。
私は無配か、配当性向の低い会社が好きなのですが、それは税制上有利、高い成長が望める。自分で配当再投資など面倒という理由です。
さて
訳がこなれて読みやすい『バフェットからの手紙』第4版には、次のようなことが書いてあります。
A株の30分の一単位のB株を発行したのは、株主が非課税枠内贈与のための一部売却を可能にするため(A株からB株への転換は可能、逆は不可)。
またクローンファンドが乱立して適正価格形成を歪めることを阻止するため。
既存株主と新規株主との間の平等のため、バークシャー株が高くも安くもない妥当価格で取引されることを望む。
頻繁な売買は取引・管理コストの上昇を招く。バークシャー株の上場は、取引所取引によるコスト低減に役立っている
参考までにこんなことも書いてあります。
20%以下の部分所有子会社が無配当の場合、その子会社の利益はバークシャーの連結利益として計上されないので、見かけ上見えない利益(ルックスルー利益)がバークシャーに内包される。(←PE押し上げの要因か?)また子会社の配当を受けるより、子会社の有能な経営者が自社の事業に再投資する方がよい。また配当を受けないことによる税制上のメリットがある。
私が思うに、
配当を出さずに株価を上げる。自社株買いで株価を上げるのは株主にとっては合理的です。ただ年を取ったら、自分で売却しなくても高配当がもらえるものに振替られたらよいのにとは思います。
>配当を出さずに株価を上げる。自社株買いで株価を上げるのは株主にとっては合理的です。
私も全く同じ発想で、かつては配当が嫌いで、内部留保・事業再投資してくれる会社が好きでした。
それが税引き後の株主利益を最大化するはずだと信じて疑っていませんでした。
その発想を180度変えてくれたのが『株式投資の未来』でした。
確かに理論的には、資本コストを超える投資案件を見極めて再投資して、企業の純資産価値を増やしてくれた方が株主に税務メリットがあります。
配当を出す事務コストもかかりません。
ただ、現実は理論とは違います。
理論通り、経営者が常にうまく資本を再投資できることは少なく、余裕資金があればあるほど高値のM&Aなどに資金を投じて、結局株主利益は棄損される可能性があります。後から振り返れば、素直に株主に資金を返していたほうが価値あるお金の使い方だったケースは山ほどあると思います。
バークシャーの凄いところは、理論と実務が一致している点です。
それはひとえにバフェットの采配、バークシャーの企業文化によるところだと思います。
なので、バークシャーについては配当を出さずに再投資してもらった方が株主利益にもプラスですかね。
自社株買いは、配当の繰延べという性質があり、結果として課税も繰延べされます。
なので税務的にはお得ですよね。
懸念は高値で自社株買いすると既存株主には損ということです。
バフェットが株主だった時代のIBMなんて、今振り返れば明らかに高値で自社株買いしてます。
いつもコメントありがとうございます。
>読みやすい『バフェットからの手紙』第4版
バフェットからの手紙が読みやすいって、凄いですw。Neoさんが頭いいからだと思います。
私的には『バフェットからの手紙』は投資本の中で一番難解です。
きちんと理解するには何度も読み返すだけでなく、背景として一定の知識が必要だと感じています。
たまに本棚から取り出して読み返すようにしています。
名著ですよね。永久保有です。
個人レベルでは議決権なんて合っても無くても会社に影響を与えることは出来ないですが、無駄ではありませんよ?
買い集めれば議決権を行使できる権利のある物の一部を持っていることに価値があるのでは?
個人が議決権なんけ行使しても無駄だから議決権なんて要らない??
株式に議決権がないなら、企業が株主に還元する意味が無くなりますよ?
無配の企業でも、株式を買い占めて支配すれば、配当を出させることも出来ます。
これが株式の価値です。
議決権の無い株式なんて債券と同じです。
会計士さんに対して恐れ多いですが、議決権なんて要らないってコメントは少しレベルが低いと思います。
優先株式にでも投資しておけばいいのでは?
私の理解不足で失礼いたしました。