株式のリスクプレミアムとは、株式というリスクの高い資産に対して投資家が要求する追加の報酬です。もっとも安全な資産である米国債の利回りに対する追加利回りとして計算されます。つまり「株式リスクプレミアム=株式期待リターン-長期債利回り」です。
株の期待リターンは債券利回りのように市場で観察できませんが、少なくとも株式益回りは上回ると考えてよいでしょう。株式益回りとは現在のEPS(一株当たり利益)と株価の関係を利回りで示したものです。たとえば、EPS10円で株価100円なら益回りは10%。企業全体のEPSは長期的には増加していくと考えるのが自然です。つまり、投資額(株価)100円に対する利回りは10%は超えると言えます。あくまで長期的な理論上の話ですけどね。短中期では株価変動の影響が大きく10%のリターンが保証されるなんてことは当然ありません。
さて、現在米株は最高値付近にありますが、実はリスクプレミアムは高水準です。株式に投資することで得られる報酬は相対的に多いということです。S&P500指数の2020年予想EPSに基づく益回りは6.3%。米10年債利回りは1.5%です。リスクプレミアム=6.3%-1.5%=4.8%となります。
この4.8%というリスクプレミアムは高いです。米株のリスクプレミアムの平均は3%程度ですから。
株価は高い高いと言われますが、実は株式の利回りは「魅力的」なんです。
じゃあ、今は貯金を切り崩してガンガン株に投資すべきということ?
いや、そうとは思えません。
株式リスクプレミアムが高いってことは、投資家が株式のリスクにビビってプレミアムが拡大しているということを一般的には意味します。しかし、現状はそうとは言い難いです。
「リスクプレミアム=株式期待リターン-債券利回り」なわけですが、リスクプレミアムを高めるのは株式期待リターンの上昇だけでなく、債券利回りの低下もあります。今、株式リスクプレミアムを高めている主な要因は明らかに後者、つまり債券利回りの低下です。
中央銀行の過剰な金融緩和によるマネーサプライの拡大か、高齢化による安全資産への需要増なのか、真実はわかりませんが債券利回りは公正価値を大きく上回っているように見えます。流動性が高い商品はマーケット価格=公正価値と考えるのが普通ですが、現在の債券市場にその原則は適用できないと思います。
投資家が株式に抱いているリスク認識は特段上がっていないと感じます。むしろ、10年続く緩やかな景気拡大、FRBの支援的な金融政策、低いインフレ率などを好感してリスク認識はやや下がっているように感じます。
変わったのは債券に対する投資家の認識です。債券はモテモテ状態です。モテすぎて困惑しています。そこそこの利回りを保つ株式は無視して低利回りの債券にみんな群がっています。債券は人生に一度あるかないかの「モテ期」を味わっているようです。羨ましい。でもなぜモテるのかな。不思議。そんなにスペック高いとは思えないけど。ケインズの美人投票的な発想かもしれません。みんなが美人美人ともてはやす債券を持っておけば安心だなと。
債券があまりにモテモテで買われ過ぎているため、ライバルである株式が売られ過ぎているように見えます。4.8%という高いリスクプレミアムがその証拠。ただ、実際には株式の値段は安くありません。債券の値段が高過ぎるから、株式が安く見えているだけです。現在の高い株式リスクプレミアムはまぼろしだと思った方がいいです。いずれ金利が上昇してリスクプレミアムは縮小するでしょう。
低金利だから高い株価も正当化される。
低金利は株式市場の支援材料。株価はもっと上がる。
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このように言われることがあります。確かに一般論としては正しい理屈です。株式リスクプレミアムが一定だとしたら債券利回りが下がれば株式期待リターンも下がる、つまり株価は上昇するという理屈です。
しかし、現在のマーケットでは、これ以上の金利低下を株価上昇を正当化する根拠と捉えるのは危険だと思っています。なぜなら、債券はバブルだと思うからです。
ただ一方で、現在の株式リスクプレミアムの拡大を見て私は安心しています。債券価格が上がりまくっている割に、株価の上昇は限定です。だからリスクプレミアムが(勝手に)拡大するわけです。株式投資家は比較的冷静です。債券投資家が酒に酔ってダンスに興じているからって、そのノリに乗って一緒に踊ってはいません。少しお酒をたしなみつつ、横目で狂乱している債券を眺めて微笑んでいる程度です。
株式か債券かと言われれば、長期投資なら株式一択です。しかし、それは株式が魅力的だからではなく、債券にあまりに魅力がないからです。消極的株式選択と言えます。来たる2020年代は株も債券もリターンが低迷する暗黒の10年になる。そんな気がしてなりません。インフレ率が急上昇したら、それこそ悲惨な時代になるでしょうね。
でもそんな相場も乗り越えて30年、40年と優良株を握り締め続けることができれば、平均への回帰もあって相応のリターンを手にすることができると信じています。これからの10年は地道に配当を再投資して株数を増やし、次の10年に備えます。そりゃ今後10年で爆益をゲットしてさっさと億万長者になりたいけど、マーケットは私がコントロールできることではないので諦めるしかない。
こんばんわ
いつも読ませてもらってます。
債券の人気があるのは今後景気が悪化して金利が下がると思っている人が多いからだと思いますよ。
僕もEDVに大量に投資してます。
こんばんは。
いつもありがとうございます。
市場が景気後退を警戒しているのはおっしゃる通りだと思うのですが、にしても金利は低すぎると思います。
米国外に目をやればマイナス利回りの債券まであります。
景気後退が訪れれば、債券価格はさらに上昇すると思います。
しかしそれでも、長期インフレ調整後で相応のリターンを得るのは難しい状況に見えます。
リーマンショック以降、10年半で米国は株価が4.5倍になった一方で、新興国は株価が2倍にしかなっていない。
そのため、VWOを買いたいという欲求に駆られます。
Hiroさんはどうですか?
新興国はあまりウォッチ、勉強しておらず、何とも言えないですね。。以前は興味あったのですが。
バリュエーションは大事ですが、長期保有なら米国外に目をやる必要性は薄いかなと思い、新興国の企業情報はほとんど把握していません。
表面的なバリュエーションとしては米株の方が割高ですし、短期的な利ザヤを狙うには新興国の方にチャンスがあるとは感じています。
曖昧な回答ですみません!