多くの銀行銘柄の株価収益率(PER)が12倍未満で推移しているが、このバリュエーションでの自社株買いは1株当たり利益を「増加させる傾向がある」が、「25倍のPERにおける自社株買いは通常、長期的にはそれほど好影響を与えない」。

バロンズ

バロンズはこんなこと言ってますが、PER12倍での自社株買いは株主利益にプラスでPER25倍での自社株買いは株主利益にマイナスなのでしょうか?

自社株買いとは何なのか?

そのままですが、企業が自社の株を市場で購入することです。コカ・コーラがコカ・コーラ株(KO)を購入することを自社株買いと呼びます。あなたがコカ・コーラ株を買っても、それは自社株買いとは言いません。ただの株式投資です。買い手が自社の場合に自社株買いと呼んでいるだけです。要は自社株買いとはただの株式投資です。

現在、コカ・コーラ株のPERは25倍ほどありますが、あなたは今コカ・コーラ株を買って長期で報われると思いますか? PER25倍ってことは益回りは4%しかありません。米10年債の1.5%という利回りよりは全然高いですが、4%という利回りは少し心もとない気持ちになります。

しかし、私は20年30年という長期で保有する意思があるなら、現在の株価でコカ・コーラに投資しても報われると思っています。『株式投資の未来』によれば、1957年~2003年までのコカ・コーラの平均PERは今と同じ25倍でしたが、リターンは年率16.0%とS&P500指数を大きくアウトパフォームしました。

当時のコカ・コーラのEPS成長率は11.2%もありました。それを現在のコカ・コーラに求めるのは酷かもしれません。さすがに16%の投資リターンは厳しそうですが、昔と違ってインフレ率は長期低迷しそうな予感がしますし、PER25倍でもそれなりのリターンは確保できそうな気がします。だからこそ私はコカ・コーラ株を保有しています。直感ですけどね。確信はありませんよ。

もしPER25倍のコカ・コーラ株への投資が報われるとするなら、コカ・コーラ社の自社株買いも報われることになります。同じ銘柄への長期投資なのに私が買ったら儲かって、コカ・コーラ社が買ったら儲からないなんて理屈はありません。

PERだけでバリュエーションを判断できないことくらい、このブログを見ているあなたは当然理解していると思います。それは企業の自社株買いでも当てはまります。高値での自社株買いは避けるべきですが、PERが高いから即ダメということにはなりません。高いEPS成長が期待できる、事業が安定している等の要因があれば高PERも正当化されます。

コカ・コーラは長期保有に向いている銘柄の一つです。炭酸飲料の市場縮小という逆風はあるもののビジネスは安定しており、毎年多額の株主還元を続けています。

FY18こそ自社株買いの減少が目立ちますが、業績も好調ですしまた増加傾向に戻ると期待しています。

バリュエーションには気を付けて欲しいですが、継続的な自社株買いは確実にコカ・コーラ株主の利益に貢献します(もちろん増え続ける配当も)。

株価は将来のEPS(一株当たり利益)推移見通しに左右されます。

EPS=純利益÷発行済み株式数
ですね。

純利益は毎年の業績に左右されます。コカ・コーラと言えども景気後退時には多少は販売数量が落ちるかもしれません。減損で一時的に利益が悪化することがあるかもしれません。分子の純利益は不安定です。

一方で分母の発行済み株式数は緩やかに安定して減少していきます。増資をしない限り発行済み株式数が大きく増えることはありません。コカ・コーラのような成熟企業が新たに新株を発行する可能性は限りなくゼロに近いです。もし金が必要なら起債すればいいだけですし。自社株買いは発行済み株式数を減らします。増資はしないけど自社株買いは毎年行う。そりゃ株数は減るに決まってます。

利益が100から120に増えても翌年70に落ちる可能性はあります。しかし、発行済み株式数が100から80に減ったら、また100に戻ることはほぼありません。優良企業の株数は継続的な自社株買いを通じて減る一方です。

それがEPSを(株価を)影で支えてくれます。純利益のボラティリティは高いけど、発行済み株式数は毎年着実に減少するので長期で見ればEPSは上昇していきます。もちろん、コカ・コーラであれば利益総額の成長も期待できます。

キャッシュフローが安定している経済的な壕の広い企業の場合、PER20倍台であれば許容範囲内だと思います。ましてや今は低インフレ時代。逆に衰退するダメ企業は、いくら安値で、たとえばPER10倍で自社株買いをしても株主利益には貢献しません。「安物買いの銭失い」になるだけです。自社株買いは永続するワイド・モート企業に適した還元方法です。

PER20倍台ならコカ・コーラには今後も自社株買いを続けてもらいたいです。PERが30倍に差し掛かるような事態になれば、その時はちょっと待って欲しいですが。