クリスマスだ!って感じはしません。それを通り越して、もう年末やなあという感じです。各メディアで年末特集を見かけることが多くなりました。WSJ日本語版は2019年で10周年だそうで、これまでの記事の中からWSJ編集部が厳選した記事が再掲されていました。NewsPicksも2019年のベスト記事を掲載していました。は~、全部読みたいけど時間がないわ。年末にゆっくり読もうかな。

年末になると、投資関連も今年の振り返りと来年の予想記事が必ず出てきますね。バロンズが「2020年の投資戦略を考える」という記事を上げています。その中で、10人のアナリストが2020年のS&P500指数の予想EPS(一株当たり利益)と予想PER、そして予想株価を提示していました。それぞれの数字を見てみましょう。

EPS① PER② 株価①×②
174.0 19.3 3,350
165.8 19.6 3,249
180.0 18.9 3,400
174.0 17.8 3,100
172.0 20.3 3,500
174.3 19.4 3,375
177.0 18.6 3,300
170.0 19.1 3,250
177.0 16.9 3,000
174.0 20.0 3,480

2019年のS&P500指数のEPSが165前後なはずだから、2020年は2%~9%の増益が予想されているみたいです。減益予想は一人もいません。誰もリセッションは想定していないようです。そうなればいいですけど。。なんか最近「リセッションは遠のいた」という強気の報道をよく見るようになった気がします。逆に警戒すべきか・・。

とまあEPSを予想するのはわかります。企業の利益がどれくらい成長するか予想するのは投資家として当然ですから。

しかし、PERを予想するのは無理でしょ。つまりEPS×PERとして算定される株価を予想するのも同じく無理ゲーということです。PERとは株価とEPSの逆算によって後追いで算定される性質のもので、それ自体を予想するのは困難です。

PERはマーケットの感情に左右されます。投資家が強気で将来に楽観的ならPERは高くなります。投資家が弱気で将来に悲観的ならPERは低くなります。2020年末のPERを予想するというのは、1年後の投資家心理を読むことに等しいです。1年後の企業のビジネスを見通すのはそこそこ合理的に可能ですが、1年後のマーケットの雰囲気を言い当てるのは無理です。

PERなんて予想できる代物じゃありません。つまり株価予想なんて眉唾ということです。エンターテインメントとして楽しむものと割り切った方が健全だと思います。

あなたが長期保有を志す投資家なら、まじまじと見るべきはEPS(企業利益)であってPER(投資家心理)ではありません。1年後、5年後のPERがどうなるかなんて、あなたのポートフォリオの長期リターンには何ら影響を与えません。あなたの投資成果を左右するのはひとえに投資先企業のEPS推移です(および配当)。長期的にEPSが成長するかどうかがすべて。大きなボラティリティなく、安定して成長できるとベターです。

EPSよりもPERの変化の方が目前の投資リターンに大きな影響を与えます。上の2020年予想PERを見ても、下は16.9倍から上は20.3倍まで振れ幅が大きいですね。EPSが同じでも、PERが16.9倍か20.3倍かで株価は20%も変動します。

短期的なリターンはPER変化が支配します。しかし、それは実質的な投資利益とは言えません。いや、お金に色はないしPERが上がって(株価が上がって)売却益を手に入れることができれば、それは立派なリターンですよ。誰にも文句は言われません。ただ、それは投機的な利益であって「投資」の利益とは言えません。

株式を10年、20年と長期保有する場合、投資リターンを左右するのはPER変化ではなくEPS推移です。どれだけEPSが増えて、それに伴って配当や自社株買いが増えるのか。もちろん、無配でもEPSが増えれば株価が上がることで投資家は報われます。その株価上昇は投機的ではありません。

というわけで、あなたがS&P500指数に「投資」しているなら、こういう予想記事を見かけても、株価やPERの予想は無視しましょう。見るとしても娯楽として楽しむ程度で。見るべきはEPSです。S&P500指数のEPSがこれから伸びるのか、衰退するのか。S&P500指数への長期投資リターンはすべてそこに掛かっています。もっと言うなら、インフレ率を超えてどれくらい伸びるかです。リターンは実質で見ないといけませんから。まあ、最近は日米ともにインフレ率が低すぎて、名目も実質も違いがあまりわかりませんけどね。