NISAでの投資枠が拡大され、非課税期間の恒久化も検討されていると聞きます。まだ確定ではありませんが、何らか制度が拡充されるのは間違いなさそうです。

仮にNISAの最大投資枠が2000万円になったとしたら、利回り7%で140万円、10%で200万円の年間投資収益が非課税で得られることがあります(あくまで長期平均利回りですが)。

「そんなに投資できんわ!」って突っ込みはありそうですが、最近増えている夫婦共働きの高収入世帯は、頑張れば10年くらいかけて二人で2000万円を投資することはさほど非現実的でもない気がします。ペアローンで高額タワマンがバンバン売れていることからわかる通り、お金はあるところにはあります。

このNISAに加えてiDeCoも活用すれば、非課税で得られる投資収益はさらに拡大します。

政府はなぜこれほどまでに国民に投資を推奨するのか?

これは私の意見ですが、だんだんとお金の価値がなくなってきているからだと思います。タイパという言葉が出てくることからもわかる通り、お金の価値は薄まり時間の相対的価値が高まっています。

お金の価値が薄まっているというのは労働の価値が薄まっているという意味だと解釈しています。お金で人の労働を買うことができるからです。世の中のあらゆる商品、サービスは労働力の塊です。

毎週5日、1日8時間も働く必要が本当にあるのでしょうか?

『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』という本をご存知でしょうか。本人がやりがいを感じられない、無意味な労働があまりに増えていることを指摘した書籍です。

紹介しておいてすみませんが、長すぎて私は読み切らずに積読状態なので詳しいことは語れません。ただ、筆者が言いたいことはだいたい伝わりました。こういった本が出版されて売れること自体、労働の価値低下を示唆していると感じます。

企業の経理や監査法人でいうと、決算繁忙期以外って大してやることなくないですか?

3月決算の場合4月5月は忙しいけど、6月は結構時間余りますよね。絶好の有給消化期間ですが、あまりに休み過ぎると上司の視線が気になるものです。で、やることないけどとりあえず勤務して、決算効率化など改善活動を行うわけです。

そういう改善活動が全く無意味だと言うつもりはないです。重要だけど緊急ではないことに取り組むことは大切ですし。

が、貴重な人生の時間を充ててやるべきことなのか疑問に思うことは多々あります。誰かの役に立っている気がしないです。でも、会社からお給料をもらっているわけだし、何か仕事はしないと後ろめたい気持ちになります。

そういう「どうでもいい仕事」がドンドン増えていると感じます。何をもって「どうでもいい」と言うかは難しいところではありますけどね。本人がやりがいを感じてなくても、巡り巡って社会にインパクトを与えている仕事はたくさんあるので。

特にホワイトカラーはもっと労働時間を減らしても社会は変わらず回っていくと思います。労働時間を減らして給料が減る分、国家が全国民にベーシックインカムを支給するというのは理論的にはおかしくはないと個人的には思います。

でも、ベーシックインカムは現実的には導入は難しいでしょう。

仕事をせずにお金を頂くことを私たちが受け入れることができないからです。「働かざる者食うべからず」という考えは普遍的です。

であれば、あくまで一人一人の自助努力でベーシックインカムを作ってもらおう。それなら納得感あるはずだ。こういう考えがNISAやiDeCoの根本にあるのではないでしょうか。

労働が不要になってくると言っても生活にお金は必要なわけで(お金というか本当に必要なのは商品、サービス)、それを生み出すのは企業です。ベーシックインカムだって基本的には企業に課税しないと財源がないです。

ベーシックインカムは現実的ではないから、各個人に企業の株や債券を保有してもらって実質的に「ベーシックインカム」を受け取ってもらい、生活水準を改善ないし維持して欲しい。して欲しいというかそうするしかない。

労働が全く必要なくなるとかそういう極論を言うつもりはなく、あくまで相対的な話ではあります。が、基本的に税収を上げたいはずの政府が、投資に関してはここまで税制優遇措置を講じてくれる意味、社会的背景を理解することは重要だと思います。