専門家でも何でもない私がマクロ経済、相場見通しを語ることに何の価値があるのかと言われれば、何の価値もないわけです。まあ独り言みたいなものです。何となく思っていることを書いてみようと思った次第です。

紙幣を刷れるのに刷ってこなかったツケを払わされているのでは。金利は簡単には上がらない

以下は米10年債利回りの長期推移です。

(Source: CNBC)

最近、米長期金利が上がって市場がざわついていますが、40年間の長期推移を見るとこの通りです。まだ歴史的低金利であることに変わりはありません。

なぜ、これほどまでに金利が下がってきたのか?

諸説ありますが、もっとも強い影響を及ぼしたのはテクノロジーの進化による製造・サービスの自動化、資源配分の効率化、ビジネスのスケール化コストの低下だと思います。一言で言うと、生産性の向上。

金利とは資本を調達するコストなわけですが、資本とは突き詰めると労働力です。一部の優秀な人以外の労働は急速に不要になりつつあり、低金利でも事業のために多額の借金する人は少ないです。自社株買いのための借金が増える一方です。

数十年に及ぶ技術革新が金利に大きな下落圧力を加えているわけで、コロナ禍での救済という名目で一時的に紙幣を刷ったところで、その圧力を簡単に跳ね返せるとは思えません。

紙幣を刷ったら、必ずそのツケを払わなくてはならないと言われます。具体的には増税による財政健全化、あるいはインフレによる実質債務負担の軽減。

本当にそうなんだろうか?ってよく思います。

際限なく紙幣を刷ったら、そのツケを払うことになるのは当然です。国民全員に毎月1万ドル支給とかしたら、ハイパーインフレで経済が崩壊するかもしれません。でも、今はそんな規模じゃない。アメリカでは国民全員に追加で1400ドルを支給します。

僕は逆なんじゃないかって思うんです。テクノロジーの発達がこれだけ金利を下げてくれたにもかかわらず、政府が債務を嫌って紙幣を刷ってこなかったツケを今払わされているのではと感じます

「ツケ」というのは具体的には、貧富の格差拡大、アメリカ国家の分断、ポピュリズム、トランプ大統領の誕生、オピオイド問題、白人の自殺率上昇などです。

日本で言えば、不安定な雇用の増大、労働者給料の低迷、あと同じく貧富の格差拡大(アメリカほどではないにせよ)。

テクノロジーが特定の労働者の仕事を奪って、その労働者が貧困に陥ることはミクロの問題としてはあることです。それは仕方ないことかもしれない。

でも、マクロで見ればテクノロジーの発達が国民を貧しくするはずがありません。人々の生活を便利に豊かにするために新たな技術が開発されたはずなので。

実態はマクロで見ても一般人の生活は豊かになっていないのではと思います。なぜなら、富の大半を超富裕層が独占しているから。

リスクを取って起業して成功した人、リスク資本を提供した投資家が富を独占するのは資本主義のルールに則った結果であって、不正でも何でもありません。

ジェフベゾス、イーロン・マスク、ウォーレン・バフェットの資産に50%の資産税をかけて、富を奪うことが社会的に正しいと思う人はマジョリティではないでしょう。私も正しいとは思いません。

そこで財政政策による紙幣増刷によって、少しでも超富裕層の富を(こっそり)中流以下の層に回す必要があるのではと思います。債券市場はそうしてもいいとメッセージを送り続けてきたけど、それを無視してきた結果が今。

まあ、紙幣を刷れば刷るほど資本家が儲かる傾向があるので、言うは易く行うは難しなのですがね。富の配分を是正するのは1,2世代では無理筋に感じます。

何が社会的に正義かなんて語るつもりはなく、言いたいことは金利低下圧力は想像以上に強く、その圧力をはねのけるほどの政策は現状では考えづらいということです。

財政支援による経済成長は一時的か

米政府の積極的な財政支援によって、経済活動は大きく回復するという見方がコンセンサスになりつつあります。確かに、2021年~2022年は強いGDP成長が見られるかもしれません。

しかし、この経済成長は持続的ではないかなと思います。

今まで我慢していた鬱憤を晴らすために、レジャー等の消費が伸びるのは理解できます。貯金も増えているし。

ただ、政府の支援が一時的ある以上、消費の回復も一時的の可能性が高いかなと予想します。

もし、毎年毎年、政府が紙幣をばら撒くなら話は変わりますけどね。それやると実質的にベーシックインカムになりますが、さすがにそこまでは実現しないでしょう。

それくらいドラスティックにやって、ようやく長期金利は上に突き抜けるのではと感じますけどね。

財政健全を求める共和党保守派の牽制も十分働く環境ですし、そこまでガンガン債務を積み上げることは恐らくできない。

んで結局、インフレ率は上がらないし、経済成長率も大きくは改善しない。よって金利も上がらない。経済成長はこの1、2年の期間限定かなと。

一時的には景気回復銘柄もありだか、結局はハイテクなどグロース株が強いと見る

以上の個人的見通しを前提として、今後5年~10年くらいの有望セクターを考えてみます。

ビフォアコロナ2010年代に高パフォーマンスだった銘柄が、引き続き強いだろうと予想します。GAFAMを始めとしたハイテクが有望かな。

ただし、コロナでいくらかゲームチェンジが起こっているので、アフターコロナの世界で負け組になっている銘柄は要注意。コロナ前の高値を更新している銘柄が安心です。

景気回復の波に乗れる旅行、レジャー関連などは1,2年はアウトパフォームするかもですが、5年10年というより長期で考えた場合、上記の優良グロース株にはかなわないと予想。

景気回復銘柄が長くアウトパフォームできるくらい景気刺激があっても良いと個人的には思うのですが(金利低下圧力が大きいので)、現実はそこまで紙幣を刷ることは難しいと思います。

債券のパフォーマンスは意外に悪くないかも。とは言え、歴史的に見て利回りが低いことは間違いないし、あまり持ちたいとは思いませんが。

ざっくりまとめると、一時的にはインフレ率、金利、経済成長率も上向くけど、結局は低金利低成長に戻っちゃうというのが私の見立てということです。

最近ナスダック銘柄が軟調ですが、押し目買いの価値はあるのではないでしょうか。10年保有できるなら。